1966年05月27日

大空を追われ コウノトリ、トキ 緊急事態を宣言【毎日新聞1966年5月27日】

<1966(昭和41)年5月27日朝刊社会面>

 特別天然記念物のコウノトリと、国際保護鳥にも指定されているトキがこの一年でバタバタと死に、絶滅のピンチにあるので、文化財保護委員会は二十六日、中西悟堂日本野鳥の会会長、山階芳麿日本鳥類保護連盟理事長、内田清之助、黒田長礼両文化財専門委員ら鳥学会の権威を集めて緊急対策会議を開いた。日本でトキが絶滅すると、トキ属が世界から姿を消すうえ、国際保護鳥の絶滅第一号という不名誉なことになる。中西さんたちは口をそろえて「コウノトリもトキもほっておいては農薬による水銀中毒のため絶滅してしまう。コウノトリは一日も早く捕獲して人工飼育にきりかえ、トキもできるだけ人工飼料によるエづけなどを行い“人間の手による保護”をはかる段階にきている」と訴えた。文化財保護委もこの“緊急事態宣言”にこたえて林野庁とも協力、早急に保護の具体策を打ち出す。

捕らえて人工飼育を 学者訴え 急ぎ保護対策
 数年前の調査で福井県と兵庫県の日本海側で二十数羽の生息が確認されたコウノトリは、一昨年福井県武生市に二羽、同県小浜市に四羽、兵庫県豊岡市に十羽を数えるだけになった。その後の減り方はいちだんと激しく、福井県下でコウノトリはついに見られなくなった。同県は昭和三十二年にコウノトリを県鳥に指定したが、わずか九年で絶滅し“まぼろしの県鳥”となった。

 豊岡市では十羽のうち二羽(ひとつがい)の捕獲に成功、大きなフライング・ケージを作って人工飼育をしていたが、二羽とも昨年暮れまでに死んだ。このほか野生の一羽の死体が見つかり、いまは七羽が残るだけ。

 小浜と豊岡で死んだコウノトリの死体を東京教育大農学部の武藤聡雄教授が調べたところ、死因は田んぼのドジョウやタニシが農薬に汚染され、中毒死したものとわかった。そのうえ、新しいヒナの巣立ちが三十六年以来全然見られない。生殖能力もおとろえてきたのではないかと関係者は憂慮している。

 トキは三十四年に生息確認数わずか四羽まで減ったが、昨年四月には佐渡島に十一羽(うち人工飼育二羽)能登半島に一羽が確認された。ところがことしの三月までに佐渡の新穂村行谷小学校で飼育していたひとつがいのうち一羽が死に、両津市で二羽の死体が発見されて残るは九羽。

 「ニッポンニア(属)ニッポン(種)」の学名が示すようにトキは日本だけに生息、トキ属の鳥もこれ一種だけで亜種がない。世界的な“珍鳥”を絶滅させたとなったら文化国家として大変な不名誉という。文化財保護委と新潟県は、ことし六百万円の予算で新穂村清水平に幅十メートル、長さ八メートル、高さ六メートルのオープンケージを作り、行谷小の一羽を移し、将来は野生のものもここでエづけをしようという計画だ。

 二十六日の打合会に集まった中西、内田、山階、黒田氏ら鳥博士たちは「このままでは一年か二年でコウノトリは滅んでしまう。トキも楽観を許さなくなった。ぜひ国の抜本的な保護対策を」と“緊急事態”を訴えた。

 対策としては@豊岡のコウノトリはロケット網などでぜんぶを捕獲して人工飼育と人工ふ化にきりかえる。佐渡のトキも清水平にできるオープンケージで人工飼料によるエづけを行い、北海道のタンチョウヅルで成功したようなやり方をとり入れていくA保護対策として、国が専門家を少なくとも一人ずつ現地に常駐させるB人工飼料はスイスのバーゼル動物園で考案した配合飼料を東京上野動物園で作り定期的に現地に送る――ことなどで意見が一致した。
http://mainichi.jp/articles/20160713/org/00m/040/009000d

http://archive.is/13Wnh
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posted by BNJ at 23:00 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする