2008年01月07日

朱鷺色の空に 2008初放鳥 放鳥を前に/4 順化訓練の成果 環境適応に手探り /新潟【毎日新聞2008年1月7日】

 「好〓(いいぞ)!」

 昨年5月31日、中国・陝西省寧陝(ねいせい)県で新たに設置されたトキ順化施設で、人工繁殖のトキ26羽を放鳥した瞬間、歓声が沸き起こった。同県は佐渡島同様、かつて野生のトキが生息し、絶滅した場所だ。今秋、自然放鳥が行われる佐渡の関係者にとって、寧陝県の事例は何かと参考になる。

 放鳥に立ち会った陝西省高官は「人類が絶滅危惧(きぐ)種を救うという、歴史的な意味を持った一つの業績だ」と興奮気味に語った。

 しかし、日中で長くトキ人工飼育に携わった、九州大特別研究員、席咏梅(せきえいばい)さん(41)によると、放鳥3カ月後に生息が確認されたのは、半数以下の11羽。洪水で流された個体もあったといい、席さんは「えさが不足していたのか、えさを探す訓練が不十分だったのか」と首をかしげる。

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 佐渡市新穂正明寺の野生復帰ステーション。昨年7月から、人工飼育したトキ5羽(12月からは17羽)が自然下で暮らしていくための「順化訓練」が行われている。

 訓練の主な舞台となる「順化ケージ」は面積4000平方メートル、高さは最大15メートル。放鳥候補となるトキはここで連日、飛行訓練や、ケージ内を人が歩き回る「人なれ訓練」を重ねている。放鳥後を想定して群れ(約10羽)単位の集団生活だ。近くの「繁殖ケージ」では、つがいをつくり、営巣からふ化までを自分たちで行えるよう、練習を繰り返す。

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 しかし、順化訓練がどの程度必要なのか、確たる定説はない。「1年程度」という目安で昨年から訓練に入ったが、訓練通りに人造のえさ場に降りるのか、誰にも分からない。

 放鳥に最適な時期についても、専門家の意見はバラバラだ。環境省は「繁殖期の春先は避けたい」といい、中国国家林業局の王偉・保護司副司長は「暖かくなる季節のほうが、環境に適応しやすい」と話す。佐渡とき保護会顧問の佐藤春雄さん(88)は、ペアリングを優先して「2月下旬がいい」と薦める。

 県は「えさ不足の問題は冬も春も同じ」(県環境企画課)とこだわらず、先月から分散飼育を始めた多摩動物公園の担当者は「野生復帰は一朝一夕にできるわけではない。多少の犠牲は仕方ない」と冷徹にみる。

 佐渡のトキは、寧陝県のような大量死を免れて生きていけるのか。成功すれば、歴史的快挙。もし失敗したら……。トキを愛する人たちの手探りが続いている。(つづく)

ことば「中国のトキ保護」
 60年代に絶滅したとみられていたが、81年に陝西省洋県で7羽の生息を確認。生息地の農薬散布などを厳しく制限し、野生種の保護と人工繁殖を同時並行で進めた。結果的に、野生種を含め1000羽以上にまで増殖できた。04年から洋県で繁殖した個体の自然放鳥を行い、放鳥後の自然繁殖も確認している。
http://mainichi.jp/articles/20080107/org/00m/040/999000c

http://archive.is/gRYGE
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