2010年12月24日

【より道 わき道 COP10 関口威人】《金沢レポート2》古都の自然と技の結晶「加賀毛針」 持続可能型社会をめざして エコらむ【中日新聞 中日環境net 2010年12月24日】

 生物多様性年のクロージングイベントが開かれた北陸・金沢は伝統工芸の宝庫です。豊かな自然の恵みを巧みな技で生活に取り入れる−。そう、ご存じでいてくれる読者がいるとうれしいのですが、筆者が追い掛けてきた「モノづくりと生物多様性」というテーマです。その“金沢版”のネタを探してみようと、古都の路地に足を踏み入れてみました。


 旬の海産物を求める観光客であふれる近江町市場から少し北へ。

 「安江町」という落ち着いた街並みの一角に、こぢんまりとした店がありました。「目細八郎兵衛商店」。控えめに掲げられた看板には1575(天正3)年の創業と記されています。なんと戦国時代末期!

 「もともと初代は縫い針をつくる職人でした。その針が江戸時代に加賀藩主に気に入られて『めぼそ針』と名付けられ、それが名字になったんですね。こんな珍しい名前は他では聞いたことありません」

 と、にこやかに話すのは店の19代目の主人、目細伸一さん(76)。いかにも北陸の人という、おっとりとして実直な雰囲気をかもし出します。

 そのまっすぐな縫い針が江戸時代、くいっと曲げられて新しい道具となりました。それが知る人ぞ知るこの地域の伝統工芸、「加賀毛針」なのです。

 江戸時代から金沢でつくられている「加賀毛針」。指先に収まる小ささに匠の技が詰まる

 釣りが趣味でない筆者にとって、毛針をまじまじとながめる機会なんてほとんどありません。しかし、この加賀毛針は道具というよりまさに芸術品。

 全体の大きさは指先に収まるほど。鋭くとがった針の先端を除いて、色とりどりの「毛」が巻き付けられています。根元には金色に輝く玉。これは金箔が張りつけられているそうです。その玉の部分から下に5本、6本と「ひげ」のような「羽」のようなものがすっと伸びています。全体の印象はまさしく「虫」。しかし、巻き付けられている材料はすべて鳥の羽根だというのです。

 「15種類ぐらいの羽根を使いわけて、1本の毛針をつくります。クジャクやキジ、ヤマドリ、カラス…昔はトキの羽根も使っていました。今は人工的に色を染める場合もありますが、本物のトキのあの美しい色合いを出すのはどんな染色技術でもできません」

 目細さんはそう言いながら、手に持っていた朱色のケースのふたを開けました。

 目細さんの「毛針箱」の中は、あふれんばかりの加賀毛針。色や形、羽根の巻き付け方はどれも違う

 目の前に現れたのは、あふれんばかりの加賀毛針のコレクション。本当に虫が身を寄せ集めて、今にもぶわんっと飛び出してきそうな迫力です。そして一つ一つはどれも色や形、羽根の巻き付け方が微妙に違います。

 「すべて名前が付いています。例えばこれは『平六』。金沢弁で滑稽(こっけい)なことを『へいろく』と言うので、面白いほど釣れるという意味でこう名付けられました。毎年3種類ぐらいの“新作”を出して、今は常に600種類以上を店に置いています。釣れない針はつくらなくなるので、昔から数えると4000種類ぐらいになるんじゃないでしょうか」

 4000種類! まさに自然界の一つの「種」を創造しているような、神がかりな仕事ではありませんか。

 なぜこれだけの種類をそろえるのかというと、どの毛針が釣れるかはその日の天候や川の条件によってまったく違ってくるから。なかには「ヘビ皮」の透明なうろこ状の部分を巻き付けた毛針もありますが、それが陽を受けてキラリと光ることで、アユが反応してよく食いつくらしいのです。まさに人間とアユの知恵比べでもあります。

 「江戸時代、川釣りは武士だけに許された特権でした。金沢では犀(さい)川や浅野川で、武士が朝から晩まで釣りをすることが奨励されました。武士の集中力や足腰を鍛えると同時に、江戸幕府にとっては加賀藩の武士が釣りに没頭することで中央に攻め込んでこないようにする、まことに巧妙な政策だったのでしょうね。これと金沢の職人技が結びついて、毛針づくりは繊細な工芸品のように発達したのです」

 歴史と美、そして豊かな自然の結晶である加賀毛針ですが、近代になって川が汚れ、釣り人口も減ってくるとともに需要も減少。金沢の職人もいなくなり、今では6、7人が細々と伝統を守っているそうです。


 毛針の伝統技術を生かして新しいアクセサリーづくりなどを手掛ける目細さん

 しかし、目細さんは「伝統を守ることは、常に新しいことに挑戦すること」と言います。それを実践するように毛針の技術を生かしたアクセサリーを売り出し、一般向けの「体験教室」も開催。店は次男の勇治さんが引き継ぎ、インターネット通販などにも取り組んでいます。

 自然と人、古いものと新しいものが調和した街。新たな発見をして、金沢がまた魅力的な「古里」になりました。




プロフィール
関口威人(せきぐち・たけと):ジャーナリスト
1973年横浜市生まれ。97年、中日新聞社入社。北陸本社(金沢)整理部、四日市支局、名古屋本社社会部、文化部を経て2008年9月からフリー。防災、災害救援、環境、建築、自衛隊、育児などをテーマに名古屋を中心とした東海地方を走り回る。
著書『ぼくたちは何を失おうとしているのか−ホンネの生物多様性』<樹林舎叢書>発売中。
E-mail:sekiguchitaketo@gmail.com

http://eco.chunichi.co.jp/column/column12/2010/12/post-14.html

http://archive.is/AceEy

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2010年12月04日

トキ放鳥:4回目は3月上旬 8日から20羽の訓練開始−−環境省 /新潟【毎日新聞2010年12月4日】

環境省は3日、トキの4回目の放鳥を来年3月上旬に行うとの方針を示し、佐渡市の佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションの順化ケージで、8日から20羽の野生復帰に向けた訓練を開始すると発表した。トキが本格的に巣作りを始める時期より前に放鳥し、来秋予定している5回目の放鳥の準備期間の確保も図る。

同省によると、訓練期間は約3カ月間。内訳は雄が0歳2羽、1歳6羽、2〜4歳各1羽の計11羽、雌が0歳4羽、1歳4羽、5歳1羽の計9羽。
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