2014年09月22日

高温に積雪、鳥の糞害、幾多のトラブルを乗り越えた甲府の太陽光発電所 年商4億円の「国内最小規模のメガソーラー事業者」が建設【メガソーラービジネス2014年9月22日】

 「甲斐の国メガソーラーステーション」は、山梨県甲府市の倉庫の屋根の上にある出力約1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)である(図1)。この倉庫を運営する斉藤倉庫(東京都調布市)が設置した。


図1●甲斐の国メガソーラーステーションの上空からの画像
(出所:斉藤倉庫)
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 斉藤倉庫は、東京都調布市に3カ所、立川市と甲府市に1カ所ずつ、合計5カ所の倉庫を運用している。年間売上高は4億5000万〜5億円で、同社の齊藤亀三社長は、「メガソーラーを開発した企業の中では、国内最小の規模かもしれない」と強調する。

 施工には、屋根の補強や塗装を含めて約3億円を要した。年商の半分以上に相当する額だが、メガバンクや地方銀行から好条件で融資を受けられという。

 屋根の上にメガソーラーを設置したきっかけは、甲府市の倉庫(以下、甲府倉庫)を貸している物流企業からの助言だった(図2)。再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度(FIT)が施行される直前の、2012年初夏の頃だった。


図2●甲府倉庫を借りている物流企業の勧めで設置
(出所:日経BP)
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 その物流企業は、自社で所有する拠点の屋根を使った太陽光発電の経験から、新築する倉庫の屋根上にも太陽光発電システムを設置し、FITを活用した発電事業に取り組むことを決め、斉藤倉庫にも勧めた。

 斉藤倉庫にとって、太陽光発電は取り組みやすい新規事業だったという。倉庫のビジネスは、土地を探し、倉庫を建てた後、約10年間かけて建設費を回収する。

 太陽光発電も、倉庫を建てる代わりに発電システムを設置する以外は、長期間で資金回収するストック型ビジネスモデルとして親和性がある。その上、FITを活用すれば、20年間、買取価格が値下げされないという、倉庫ビジネスにはない魅力があった。

 また、甲府倉庫の立地が、発電事業に向くと考えた。山梨県は日本で最も日照時間が長い上、甲府倉庫の近辺には、日光を妨げる高層建築物などがない。

 さらに、甲府南インターから石和方面に抜ける国道140号(笛吹ライン)に近接しており、電力消費地が近くにある。高圧送電線は目の前にあり、連系しやすい。

 こうした理由から、「しっかりとした発電システムを設置すれば、FITによる買取期間が終わった後も、地域の低コストな電源として、売電事業を継続できる可能性もある」と、齊藤社長は考えた。

必要額の3倍以上を投じて屋根を補強

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、甲府倉庫の貸出先の物流企業から紹介された、テス・エンジニアリング(大阪市)に委託した。

 太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。太陽光発電システムは、収益性を確保できるのであれば、長期的な信頼性を優先して国産品を選ぶ方針だった。

 設計時に問題となったのは、屋根の耐荷重性だった。甲府倉庫の二つの棟の屋根を使って、約1MWの出力を得るためには、両棟のほぼ全面に太陽光パネルを並べる必要がある。

 ところが、予定する枚数の太陽光パネルを設置すると、屋根の一部に、必要な耐荷重性である約14kg/m2を満たせない部分があることがわかった。そこで、そうした場所では、屋根を補強して耐荷重性を確保することにした。

 必要な耐荷重性を得るための補強は、約150万円を投じれば実現できたという。

 しかし、「せっかく補強するのならば、想定外の事態にも対応できるように、より安全性を確保しようと考え、その3倍以上の約500万円を投じて補強した」(齊藤社長)。この耐荷重性の余裕が、後々、生きることになる。

 さらに、太陽光パネルを設置する前に、屋根を塗装し直すことにした。屋根のメンテナンスの一つには、定期的な塗装などがある。例えば、斉藤倉庫では、約20年間隔でサビ止めを塗り直す。太陽光パネルを設置した後では、塗装作業の効率が下がるために、前倒しした。

予定していなかった塗装を追加

 補強と塗装を施したのは、二つの棟のうち、約20年前に建てた古い棟「ふじざくら棟」のみとした。古い棟の上から見た屋根の形は、一般的な長方形ではなく、長方形の南側から東側に直角に曲がり、直角定規のような形をしている。

 この直角に曲がる部分などが、太陽光パネルを載せた際に、最も耐荷重性が不足する部分だった(図3)。


図3●直角に曲がる部分を中心に補強
(出所:日経BP)
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 もう一方の、約10年前に建てた新しい棟「いちい棟」は、補強も塗装も必要なかった。塗装する必要がなかったのは、屋根の材料に、ガルバリウム鋼板と呼ばれる、腐食やサビなどに強いアルミ亜鉛合金めっき鋼板を採用しており、元々、サビ止めなどが不要なためである。

 当初、予定していなかった塗装作業が加わったことから、発電システムの施工の手順を変えながら進めた。例えば、古い棟の屋根への設置は、屋根の塗装が終わるまで待つことになった。

 しかし、その間にも、太陽光パネルはどんどん納入されてくる。太陽光パネルの置き場に困った末、貸出先の企業に頼んで、借り賃を払って甲府倉庫に置かせてもらい、スペースを確保したという。

 こうした苦労を重ねながら、2013年5月に太陽光パネルの設置を完了し、同6月に発電を開始した。終わってみれば、当初の予定通りの日程だった。

接続箱内が70℃以上になり、警告が連日届く

 発電開始後、1年間の発電量は、予想に比べて約1割も上回った。数値だけみると順調に見えるが、大きなものだけで三つものトラブルを乗り越えながら達成した成果だった。このため、2年目以降は、さらに上回る可能性がある。

 トラブルの一つ目は、夏の高温だった。甲府はしばしば国内の最高気温を記録する土地柄。まさに甲府にある倉庫ならではのトラブルとも言える。

 接続箱内の温度が高くなりすぎて、安全装置が働いてしまい、頻繁に警告が通知されたのである。「2013年7月〜8月は、ほぼ毎日のように警告が表示された」(齊藤定之専務)。

 接続箱は、内部の温度が70℃以上になると、高温による傷害を防ぐための安全装置が働いて、警告を通知する設定になっている。

 安全装置が働いた接続箱は、新しい棟に設置したものだった。二つの棟ともに、接続箱は屋根の上ではなく、敷地の内側の側壁にある、ひさしの上に設置している(図4)。


図4●ひさしの上に接続箱を設置
新しい棟(右)では、高温と西日で接続箱内の温度が過度に上昇(出所:日経BP)
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 新しい棟のひさしは、西側を向いているため、正午以降、西日が当たり続ける。ひさしの上は、屋根の上のように風が通り抜けず、空気が滞留しがちだ。

 夏の日中の高温に加え、直射日光が当たり続けるために、接続箱内の温度が70℃以上に上がり、警告の通知が頻発した。

 古い棟のひさしは、東側を向いており、気温が高くなる時間帯には日陰になるために、このトラブルは生じなかった。

 斉藤倉庫では、この対策として、新しい棟の接続箱の筐体の外に、遮熱用のカバーを追加した(図5)。カバーには、通気口を確保し、熱い空気が溜まりにくい構造にした。この工夫によって、2014年夏には、同じトラブルは起きなくなった。


図5●遮熱用のカバーを追加し、接続箱の温度の上昇を抑制
(出所:日経BP)
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 カバーのほかに、倉庫で効果を確認済みの「遮熱塗装」を、接続箱の筐体に施すことも検討した。しかし、保証などに影響することがわかり、断念した。

発電量を下げる渡り鳥のフン

 二つ目は、鳥のフンによって、出力が一定以下に下がる太陽光パネルが、冬になって急に増えたことだった。

 斉藤倉庫では、14枚のパネルを直列に接続した「ストリング」単位の出力が、他のストリングの出力に比べて1割以上下がった場合、エラーを通知する設定にしている。

 このエラーが冬になって増えたため、太陽光パネルに異常が生じていないか調べたところ、カバーガラス上の広い範囲に、鳥のフンが残っているパネルが多くなっていた。

 鳥のフンは、雨によってある程度、洗い流されることが知られているが、冬は乾燥する日が多く、雨も少ないために、残りやすくなっていた。

 しかも、甲府倉庫は川や木々に近い場所にあり、アオサギなどの水鳥や渡り鳥が、頻繁に太陽光パネルに止まりに来ていた(図6)。発熱しているパネルの上で暖を得ている様子だった。そのフンは、ハトカラスなどに比べて、広い範囲を覆う(図7)。


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図6●太陽光パネルの上に止まる水鳥
取材中にも、このようにパネルの上に飛んできた(出所:日経BP)

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図7●広い範囲を覆う鳥のフン
隣の川からザリガニやカニ、魚などを採ってきて食べるため、パネルの上には甲殻系の残骸も多い(出所:日経BP)
 鳥のフンが多く残っている場所は、古い棟の北側に限られていた。そこで、その場所に、防鳥用の網を置いて、追い払う効果に期待した(図8)。

 すると、網を置いた場所を避けて、別のパネルの上に止まるようになった。網の効果には限界があった。


図8●防鳥用の網を張って追い払う効果に期待
(出所:斉藤倉庫)
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 こうした状況は今も続いている。「鳥のフンの影響によって、例えば売電額が減ってしまったとしても、その対策に要する費用の方が高くなってしまうことが多く、対応に悩んでいる」と、齊藤直也常務・太陽光発電部長は言う。

2月の大雪でも屋根は無事、発電は約3週間停止

 三つ目は、2014年2月に、2週間連続で関東甲信地方に降った、記録的な大雪によって、発電が停止したことだった(関連記事)。

 甲府市内の積雪は、平均で1m40cmに達した。甲府倉庫の屋根には、一度目の雪が溶けきる前に、二度目の雪が積もった。

 積雪後はまず、貸出先企業が、倉庫を通常通りに使えるように復旧させることに注力した。ここで生きたのが、屋根の耐荷重性を、余裕を持たせて補強していたことだった。

 太陽光パネルを載せるために必要な耐荷重は、約14kg/m2だった。この数値は、「ちょうど、水を屋根の上に高さ1.4cm分のせた時の重さに相当するが、実際の雪による荷重は、さらに重くなることが知られている。必要最小限の補強にとどめていたら、補強した場所に何らかの損傷が生じていたかもしれない。結果的に、屋根の折板(V字形状が横に連なる構造)の一部が曲がったものの、躯体そのものに問題は生じなかった」(齊藤社長)という。

 二度目の積雪の約3週間後、ようやく太陽光パネルの表面が見えるまでに除雪できた(図9)。それまで、除雪を控えていたのは、屋根の面積が約1万m2と広く、その上に積もった雪を降ろすためのスペースを確保できないからである。


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図9●積雪の2週間後、ようやく除雪できるように
(出所:斉藤倉庫)
 こうした結果、2月は一度目の積雪までの約1週間以外、ほぼ発電できなかった。

断熱効果で空調費を削減

 倉庫の屋根の上に、太陽光パネルを設置することによって、発電以外の利点も生じた。パネルが、屋根の断熱性を高める効果だ。

 屋根から倉庫内に、屋外の高温が伝わることを抑えるため、夏の暑い時期に、冷房の費用が減る効果がある。冬になると、逆に太陽の熱を妨げる効果が生じるが、倉庫内の室温を外に逃がさない保温効果の方が高く、暖房の効きは良くなるという。

 こうした効果は、閉じきった建物ならば、より高い効果を得られる可能性がある。倉庫の場合、側壁のシャッターを開放して使うために、効果の度合いを数値化することは難しい。

 それでも、効果は実感できるという。例えば、冷房の温度を28℃に設定する夏の高温時には、これまで冷房時にも設定以上の温度になっていたが、太陽光パネルの設置後は、28℃を維持できるようになった。さらに、古い棟の貸出先企業の電気料金が、ぐんと下がった(図10)。


図10●古い棟の貸出先企業の空調費が低減
(出所:斉藤倉庫)
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●発電所の概要
名称 甲斐の国メガソーラーステーション
発電事業者 斉藤倉庫(東京都調布市)
住所 山梨県甲府市白井町1410番地(斉藤倉庫 甲府倉庫)
敷地面積 1万6300m2
出力 0.99MW(太陽光パネル出力:1.053668MW)
EPC(設計・調達・建設)サービス テス・エンジニアリング(大阪府大阪市)
太陽光パネル 京セラ製(242W品、4354枚)
パワーコンディショナー(PCS) 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
売電開始日 2013年6月27日
年間予想発電量 約119万kWh
■変更履歴
公開当初、6ページ目に記載した、太陽光パネルを載せるために必要な約14kg/m2の耐荷重について、「水を屋根の上に高さ1.4m分のせた時の重さに相当する」としていましたが、高さの数値は「1.4cm分」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/9/22 19:22]
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2014年09月21日

生き物 北の海 自由に行き来 北海道・根室沖のエトピリカ【産経フォト2014年9月21日】

エトピリカはアイヌ語で「美しいクチバシ」の意。1年のほとんどを海上で過ごす =北海道根室市のユルリ島
 北海道根室市の南約3キロに浮かぶユルリ島とモユルリ島。北海道の天然記念物でもある自然豊かなふたつの無人島には、北方領土を除く国内で唯一、エトピリカの営巣地がある。

早朝、営巣地がある入江をバタバタと慌ただしく飛び回るエトピリカ =北海道根室市のユルリ島
 アイヌ語で「美しいくちばし」を意味する海鳥で体長40センチほど。1年の大半を外洋で過ごし、繁殖のため5月ごろ島に飛来、断崖に営巣する。産卵、孵化(ふか)を経てヒナが巣立つのは8月末。北方領土では数多く繁殖するが、ユルリ・モユルリ両島で確認される個体は20羽ほど。島にはラッコやアザラシなど珍しい動物も生息するが、上陸は厳しく制限され、目の当たりにするのは難しい。

 環境省の繁殖調査に同行してユルリ島に入った。早朝、草をかき分け観測地点に着くと慌ただしく飛び回るエトピリカが遠くに見えた。調査チームは、餌の小魚をくわえた親鳥が同じ巣穴を2度訪れるとヒナがいると判断する。

ユルリ島は北海道指定天然記念物の無人島。さまざまな野生動植物が生息する =北海道根室市のユルリ島
 調査は今年で17回目。初回から参加している北海道立総合研究機構の長雄一(おさ・ゆういち)道東地区野生動物室長(51)は「毎年、少しずつ減っている印象。海に20メートルも潜ってエサを捕るため、底刺し網に引っかかることもある」と危ぐする。定期的な上陸は生物の現状把握だけでなく、国境周辺の無人島を守るうえでも意義がありそうだ。(写真報道局 鈴木健児)
http://www.sankei.com/photo/story/news/140921/sty1409210004-n1.html

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