2015年01月31日

地上で目立ちはじめるツグミ 春の足音告げる使者【日本経済新聞2015年1月31日】

 これから寒さの本番という地域でも、季節は春に向かっている。暗くなるのが遅くなっていないだろうか。朝は早くなっていないだろうか。ツグミが地上で目立つようになっていないだろうか。

■遠めにも分かる45度の角度で胸を反らすポーズ

 繁殖地のロシアから渡ってくるツグミは、飛来当初の10月には山や林に多い。庭のカキが熟す11月ごろからは身近でもよく見かけるようになり、しばらくは枝先で木の実を食べているようだ。年明け以降、しばしば地面に降りるようになるのは、樹上の実がなくなってくることが一因だと思われる。

 スズメより大きく、ハトより小さいムクドリサイズで、尾が短いムクドリと比べると、スマートに見える。胸の斑紋、白っぽい眉、茶色の翼も特徴だが、遠目にも動き方でわかる。足を交互にトコトコ歩きながら地面をつつくムクドリと違い、45度の角度で胸を反らしてポーズをとっているように見える。

 食物を見つけると、小走りに向かっていくが、摘んで食べると、再び45度でじっとしている。落ちた木の実のこともあるが、春が近づくほど、ミミズや虫を食べるようになる。やがて日本海を渡らなくてはならないし、ロシアでの子育てでは、虫がとれなければひなは育たない。

 動かないでいるツグミを見て、「ぼーっとしているようだ」と言われる方がいるが、それはちょっと失礼ではないだろうか。野鳥たちにはすみかも食物も保障はないし、天敵に囲まれ、毎日がサバイバル。ぼーっとしていたら命はない。空の猛禽(もうきん)、地上の獣にも注意しながら、必死で食物を探しているはずだ。

胸から脇腹が赤っぽいのはアカハラ。茂みを好み、チーとかコッコッコという声で存在がわかる=写真 石田光史

 落ち葉が積もっていると、それをどけなくてはならない。ツグミの仲間やキジバトは豪快で、くちばしを顔ごと振って、左右に落ち葉を飛ばす。ムクドリやシジュウカラは1枚ずつくちばしで挟んで退けるので、おしとやかに見える。スズメはツグミ的だが、時に頭も使う。積もった落ち葉に頭を突っ込んだまま前進するのを、何度か観察している。

 ツグミと同様のサイズと体形で、胸から腹が赤褐色ならアカハラ、はっきりした色や模様がないのがシロハラだ。アカハラは北日本や山地では春夏に繁殖する夏鳥で、本州以南の低地では秋冬を過ごす冬鳥になる。シロハラは多くが冬鳥だが、対馬や広島では繁殖するものがいる。

■ツグミ科でなくなったツグミ 図鑑の改訂に追われる。

 2種とも冬は身近にもいるのに、ツグミほどなじみがないのは、茂みの中にいることが多く、春が近づいてもツグミのように開けたところに出てくることが少ないためだろう。気づかれないでいることの方が多いはずだ。

 近年、里山の放置が問題となって、環境管理の必要性が認識されてきたのはよいと思うが、すべてに手を入れなくてはならないわけではない。例えば公園管理では、下草を刈りすぎると、アカハラやシロハラ、ルリビタキ、ウグイスなどの茂みを好む種はすめなくなってしまう。刈るにしても、下草を必要とする命のために、刈り残す範囲があるとよい。落ち葉にしても、その下で冬を耐えているたくさんの虫のことを知れば、すべてきれいに掃くべきだとは思えないだろう。

シロハラは胸から脇に目立つ色や模様がない。アカハラに似た声は驚いたときに発することが多い=写真 石田光史
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シロハラは胸から脇に目立つ色や模様がない。アカハラに似た声は驚いたときに発することが多い=写真 石田光史
 現在、図鑑の改訂に追われている。それはツグミがツグミ科でなくなったためだ。アカハラ、シロハラを含むツグミ科は、新たな分類ではヒタキ科に統合された。ほかにもスズメ科がハタオリドリ科から独立し、ハヤブサ科がタカ目でなくなり、サギ科やトキ科がペリカン目になった。分類の変更は図鑑を書く側にとっては辛いが、今も研究は続いているし、今後も必要であることを思って書き直しを続けている。

(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)

 安西英明(あんざい・ひであき) 1956年生まれ。日本野鳥の会が81年、日本初のバードサンクチュアリに指定したウトナイ湖(北海道苫小牧市)にチーフレンジャーとして赴任。野鳥や環境教育をテーマとした講演で全国各地を巡る。著書に「スズメの少子化 カラスのいじめ」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82155380Q5A120C1000000/

ttps://archive.today/vdfH0

posted by BNJ at 23:00 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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