2015年02月26日

難航するツル分散計画 鹿児島【産経ニュース2015年2月26日】

鹿児島県・出水平野に飛来したナベヅル=平成26年10月(同県ツル保護会提供)

 世界のナベヅル、マナヅルの大半が越冬する鹿児島県・出水平野では、今季も高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が相次いだ。集団感染で大量死すれば種の存続が脅かされかねない。国は、出水一極集中の越冬地を列島各地に分散する計画を進めているが、野生の鳥が相手だけに成果があがっておらず、手探りが続く。

 ナベヅルやマナヅルは、中国北部などで繁殖し、冬になると南下して日本に飛来する。かつては日本各地の湿地・水田地帯にやってきていたが、宅地開発の影響で越冬地が激減した。

 ツルは農業被害をもたらす存在でもあるが、出水市は共生の道を選んだ。ねぐらを設置し、餌をまくようになった。こうした取り組みの結果、昭和27年に約260羽だった出水平野への飛来数は、年々増加した。飛来数が1万羽を超える「万羽鶴」が常態化し、昨年11月に過去最高の約1万4千羽を記録した。全世界のナベヅル生息数の9割、マナヅルの5割にあたる。

 出水平野はツル越冬地として有名になり、観光客集客にも寄与するようになった。

 だが、一極集中は、ひとたび感染症が発生すれば一気に拡大し、種の存続が危うくなるような事態になりかねない。実際、平成22年から23年にかけての冬には、ナベヅル7羽が高病原性鳥インフル感染した。今季もナベヅルとマナヅル計5羽の感染が確認された。

 世界最大のトモエガモ越冬地の韓国・浅水湾では、12年10月に発生した鳥コレラで1万羽以上が死んだ例もある。

 環境、農林水産両省と文化庁は13〜14年度、出水平野への一極集中を解消する方策として、分散越冬を検討した。山口県周南市、佐賀県伊万里市など国内の他の地域で1千羽程度を越冬させることを初期目標に掲げた。

 しかし、人為的に分散させるのは世界でも前例がなく、10年以上たった今も成果に結びついていない。出水平野以外での越冬は、毎年80〜180羽程度にとどまる。

 周南市の八代盆地では、18年以降、けがをしたツル計17羽を出水市から譲り受け、越冬させたが、翌年に戻ったツルはいない。今季の越冬数は6羽だった。「ツルは頭がよいので、出水平野が一番安心できる環境だと覚えており、他の地域に飛来しない」(環境省担当者)のだという。

 さらに、鳥インフルが分散候補地に衝撃を与えた。地域の養鶏業に大きな影響を与えかねず、伊万里市は、出水市での鳥インフル感染を受けて誘致活動を停止した。伊万里鶴の会の一ノ瀬秀春代表は「今季は7羽が越冬したが、現在は監視しているだけ」と語った。

 また、ツルが飛来すれば、農業被害が生じる。イノシシなど鳥獣駆除のための発砲や、自動車の往来などもツルを驚かせ、遠ざけることにつながる。

 高知県四万十市では市民がねぐら作りに取り組み、今季は計30羽以上が一時休息した。ただ、イノシシやシカによる農業被害が深刻で、市は「ツルが逃げるから鉄砲を撃たないでとは言いづらい。ツル優先は難しい」と語る。

 分散化計画を話し合う検討会の委員で山階鳥類研究所の尾崎清明副所長は、荒療治として出水市での餌やり制限を挙げる。ただ「餌を求めて他の地域に分散するだろうが、農業被害が顕在化しかねない」と頭を抱える。

 今年5月、改正鳥獣保護法が施行され、希少鳥獣のうち必要と認められるものについて、国が主体的に保護計画を立てられるようになった。環境省鳥獣保護業務室の担当者は「専門家や出水市、他の飛来地の意見を聞き、知恵を集めたい。時間をかけて、地道に働きかけるしかないが、かなり難しい取り組みとなる」という。

                   ◇

【用語解説】鳥インフルエンザ

 A型インフルエンザウイルスによる鳥類特有の疾患。毒性が強い「高病原性」と、毒性があまりない「低病原性」がある。高病原性インフルエンザは、致死率の高さから養鶏業に大きな影響を与える。ヒトに感染することはめったにないが、ウイルスが突然変異し、ヒトへの感染力を獲得する可能性がある。

http://www.sankei.com/region/news/150226/rgn1502260026-n1.html

https://archive.today/1CSkV

posted by BNJ at 11:14 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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