2015年03月09日

ツルの一極集中 絶滅回避へ分散化を急ぎたい【愛媛新聞ONLINE2015年3月9日】

 世界に生息するナベヅル、マナヅルの越冬地として知られる鹿児島県の出水平野で、今年も高病原性鳥インフルエンザの感染が確認された。ツルの大半が出水平野に集まるだけに、集団感染すれば大量死につながり、種の存続自体が危ぶまれる。
 危険を減らすには越冬地を分散させ、リスクを低減させる必要がある。国や一部の地方自治体などは出水平野以外の越冬地確保に向けた取り組みを進めており、一刻も早い分散化の実現を望みたい。
 ツルはかつて、日本各地の水田や湿地で越冬していた。しかし湿地の埋め立てや水田の減少、里山の消失で越冬適地が減り、出水市など一部の地域に偏って飛来するようになった歴史がある。
 1952年、国は「鹿児島県のツルおよびその渡来地」を特別天然記念物に指定。それ以降、市がねぐらの確保や餌やりなど越冬環境を整備。当時は数百羽だった飛来数は増え続け、97年以降は1万羽を超えるようになった。
 いまでは同市で越冬するナベヅルは世界の個体数のうち9割、マナヅルが5割を占めるほどに増加した。ツルとの共存を選択した同市の知名度は上がり、観光客の増加にもつながった。半面、伝染病による大量死というリスクを背負うことになったのだ。
 実際ここ数年は、毎年のように高病原性鳥インフルエンザの感染が確認されている。種の生活史への介入が危機を招く実例であり、重い教訓として解決に生かしたい。
 環境省などは2003年から、是正のためのプロジェクトを推進中だ。過去の飛来実績などから、山口県周南市、高知県四万十市、佐賀県伊万里市、長崎県新上五島町の4カ所を候補地に選定。越冬地の整備などを推進し、計千羽を分散させる目標を立てた。
 しかしプロジェクトは難航している。各候補地では数羽から数十羽程度の越冬にとどまっているのが現状だ。狩猟の影響や人の接近などが阻害しているとの報告もある。いったん越冬地を選択したツルの行動を、人間の手で再び元に戻すのは容易ではない。
 浮かび上がるのは「人と野生生物の共存」の難しさだ。かれらは農作物に被害を与えるなど、人との摩擦を繰り返してきた経緯もある。ツルを受け入れるにはまず住民の理解が前提だ。分散化には、そうしたデメリットの視点も加えた上で、観光客誘致や地域の魅力アップといったメリットを前面に出したい。
 かつて人と野生動物の距離は近かった。県内でも西予市をはじめ各地に飛来し、誘致への機運も高まりつつある。豊かな里山があった時代に学び、自然の大切さにあらためて目を向ければ、ツルとの共存は十分に可能なはずだ。
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201503093815.html

https://archive.today/4CqaD

posted by BNJ at 19:28 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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