2015年03月27日

動物園の物語 姿消したラクダ【YOMIURI ONLINE2015年3月27日】(ショウジョウトキ)

◇口蹄疫や輸入費ネック◇

高齢化

 「お母さん、これなに?」「ヤギじゃないかしら」

 宇都宮動物園のある獣舎の前でこんな会話が交わされた。そこにいたのは「ヤギの王様」と呼ばれるマーコール。無意味に高い柵に囲まれている。親子はマーコールをほとんど観察することなくキリンのいる場所に向かっていった。

かつてのラクダの獣舎は「ヤギの王様」と呼ばれるマーコールについて語る荒井園長

 この獣舎では2010年までフタコブラクダが暮らしていた。通りかかった子どもが「あ、ラクダだ」と声を上げていた獣舎だ。ラクダは、図鑑やテレビで見たことがあるだけの子どもを大喜びさせていた。

 「全国の動物園からラクダが消えてしまうかもしれませんよ」。宇都宮動物園の荒井賢治園長(50)は、多い時には7頭いたラクダを懐かしみながらこう語る。荒井さんだけでなく、全国の動物園関係者が、10〜15年後にはいなくなると考えているという。全国的に高齢化しているのだ。

ヒョウも

 宇都宮動物園ではラクダのほか、ジャガーやヒョウもいなくなった。ほかの国内の園でもめったに見られない。世界的に絶滅が心配されるほど数が少ないため、条約で売買や移動が制限されているからだ。

宇都宮動物園最後のラクダ「テン」(2005年頃撮影)=同園提供

 しかし、ラクダは中東の国々やオーストラリアで家畜として飼われており、生息数は多い。それなのに、日本の動物園からはラクダがいなくなる、という。

強い感染力 宇都宮動物園はラクダが残り1頭になった段階で、もう1頭を迎えようとしたが、国内の動物園にはラクダの子どもがいなかった。

 海外から輸入しようとしたが、アジアで広がりつつあった口蹄疫こうていえきと呼ばれる家畜伝染病が大きく立ちはだかった。ラクダのほか、ブタやウシ、ヤギなど偶てい目というひづめが偶数に割れている動物が感染する病気だ。感染力が強い病気を拡大させないため、輸出入が禁止されている。

 欧米からの輸入は可能だったが、輸送費も含めて400万〜600万円ほどになる。園内には「子どもたちに本物のラクダを見せたい」という強い声があったが、「高いお金を払っても、繁殖が成功するとは限らない」との意見もあって、最終的にラクダの輸入は見送られた。

優先順位

 「ラクダがいても、来園者を呼び込むことにはならないんです」と荒井さんは言う。来園者にとってラクダは、ゾウやキリン、ライオンほど存在感のある動物ではない、という判断だった。実はカバも一度いなくなったが、800万円でメキシコから購入し、後に復活させている。

 「子どもに喜んでほしいと思って動物園を経営しています。ラクダも見てほしいのですが、どうしても優先順位が低くなって……。ほかの動物園も同じ考えなのでしょう」と荒井さんは話している。


◇種の保存 「雑種でもいい」◇

トキの仲間のショウジョウトキ

 「子どもにとってトラはトラなんですよ」。宇都宮動物園の荒井園長の持論だ。
 今いるのは、アムールトラ。その前にはベンガル系トラがいた。ベンガルトラではなく、「系」という文字が入っているのは、純粋なベンガルトラではなく、ほかの血が入っていたからだ。
 一口にトラと言っても、「亜種」という分類があり、八つか九つの亜種がある。そのうち三つはすでに絶滅しているとされ、どの亜種のトラも絶滅が心配されている。
 動物園には「種の保存」という役割がある。日本動物園水族館協会は、亜種まで厳密に保存することを勧めている。アムールトラとスマトラトラなど異なる亜種同士の交配をできるだけなくしてほしい、という考えだ。
 ただ、かつて荒井さんはベンガル系トラを繁殖させていた。「種の保存にこだわっていると、トラそのものがいなくなってしまう。子どもにトラを生で見てもらえることが最も大切で、雑種でもいいのです」と語る。
 宇都宮動物園には真っ赤なトキがいる。大人たちは鳥の名前を見て「こんなトキもいるんだ」と驚く。南米に生息しているショウジョウトキで、絶滅が心配されている。
 荒井さんは「日本のトキは絶滅してしまいました。ショウジョウトキを通して、日本にもトキがいたんだという事実を知ってもらいたい」と話している。



◇動物図鑑 カバ◇
犬歯30センチ 凶暴な一面も

カバのハナ

 体長は3・5〜4・5メートル、体重は2・5〜4トンほど。陸上の動物としてはゾウに次ぐ大きさ。下あごに生えている犬歯は長さ30センチ以上にもなり、のんびりとした風貌に似合わず、凶暴な面もある。日中はほとんど水中で過ごしているが、陸上を全力で走ると時速40キロ以上と足も速い。

 「大きな口を開けているのは6歳のメス、ハナちゃん。メキシコからやって来ました。ハナちゃんは、なんと8分間も潜水することができるんですよ。一見、皮膚は硬そうに見えますが、耳の下やおなかはぷにぷにです。耳のつけ根と口の中を触られるのが大好き。おやつの時間に耳を触れるので、試してみてね」
http://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/feature/CO014791/20150327-OYTAT50005.html

ttps://archive.today/8pXDn

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