2015年04月04日

足まで白い「空飛ぶペンギン」 イワツバメ【日本経済新聞2015年4月4日】

アマツバメはツバメよりさらに細長い翼で、ツバメの仲間と違い、腹が白くない=写真 石田光史

 いつだって巡る季節は確かで、懐かしい。それでもやはり、春は格別だ。私たちの体内には、生き延びることが決して当たり前ではなかった時代に、冬を耐え忍んで春にたどり着いた喜びが今も残されているような気がする。

■飛びながら寝る「究極の飛行家」

 虫が飛ぶようになると、ツバメも姿を見せるが、ツバメに似た種がよく混同されている。スープで有名なアマツバメ目アマツバメ科に分類される鳥たちはスズメ目ツバメ科に属するツバメとはまったく別の系統。暮らし方が共通しているために姿かたちはよく似ており、収斂(しゅうれん)進化の良い例とされる。

 飛びながら水を飲む、飛びながら水を浴びるまではツバメ科も同じ。だが「究極の飛行家」であるアマツバメの仲間はさらに、飛びながら寝るし、飛びながら交尾もする。地上に降りることがなく、巣に泥を使わないからこそ、スープにして食べられるとも言える。

アマツバメは腰が白い点はイワツバメに似ている。小さなヒメアマツバメはイワツバメと誤認されやすいが、イワツバメは腹が白い=写真 石田光史

 日本では4種以上が観察されており、この中で、冬もいるヒメアマツバメはよく越冬ツバメや早い飛来と間違われる。アマツバメは少し大きいが、4月に東南アジアから北上してくるころ、渡り途中に上空を飛んでいるとツバメと思われることもあるだろう。

 日本で8種に及ぶスズメ目ツバメ科から4種を紹介しよう。

 ツバメが繁殖しない南西諸島ではリュウキュウツバメが普通だ。ツバメが少ない北海道にはショウドウツバメが多く、腰が赤褐色をしたコシアカツバメは比較的西日本に多い。そして、ツバメより少し早く飛来するのが、腰が白いイワツバメだ。ヒメアマツバメも腰が白いので間違いやすいが、日本のアマツバメ科はどれも腹が黒いことが、腹が白いツバメ科との識別点になる。

 イワツバメは英語で家ツバメを意味する名で呼ばれ、石の建造が普通のヨーロッパで身近な鳥。日本では山地に多く、よく観光地のホテルや橋げたに集団で巣を作るが、近年は都会の倉庫などでも繁殖するようになった。

 もし、とまっている状態を観察できたら、ぜひ足を見てほしい。足指まで白い羽毛に覆われている。「空飛ぶペンギン」というニックネームが納得できるだろう。

■森の生活に適応し進化

 スズメ目に分類される鳥類を小鳥とか、鳴禽(めいきん)類と呼ぶのは、森で進化したからだ。

イワツバメはツバメより尾が短く、腰が白い=写真 石田光史

 枝先の虫を食べやすいよう小型化し、両足をそろえて跳ねる歩き方になり、茂みの中でも雌雄が出会えるように、雄がさえずるようになった。例外としてカラス科は大型種もいるし、さえずりを持たない。ムクドリ科やセキレイ科のように地上採食に適応して、足を交互に出す恐竜時代の歩き方にもどった仲間もいる。

 ツバメ科も空中生活に適応する過程でスズメ目の中では足が弱くなった例外と言えるかもしれないが、足指の構造は他の小鳥と同じ。つまり後ろ向きに1本、前向き3本の足指を持つ。究極の飛行家、アマツバメ科は繁殖期以外はほとんど飛んでいるため、足指はツバメ科より小さく弱く、しかも4本指とも前を向いている。また、ツバメ科の雄は春にさえずるが、スズメ目でないアマツバメ科はさえずらないので、雄も地味な声しか出さない。

イワツバメの巣作り。泥を運ぶのはツバメと同じだが、巣の形はどんぶり型で集団営巣=写真 石田光史

 一昨年、この連載でツバメの巣が人によって落とされることが増えているらしいという調査結果を紹介したが、日本野鳥の会では巣落とし対策の一環として、スワローボックスを開発した。このツバメ用巣箱は困る場所にツバメが巣を作ってしまう場合、営巣してもよい場所に巣を移してもらうためのものだ。インターネットで「日本野鳥の会 スワローボックス」で検索していただければ幸いである。

(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)

 安西英明(あんざい・ひであき) 1956年生まれ。日本野鳥の会が81年、日本初のバードサンクチュアリに指定したウトナイ湖(北海道苫小牧市)にチーフレンジャーとして赴任。野鳥や環境教育をテーマとした講演で全国各地を巡る。著書に「スズメの少子化 カラスのいじめ」など
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84936650X20C15A3000000/

ttps://archive.today/1UtIK

posted by BNJ at 21:34 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: