2015年04月18日

伝書バト 高い帰巣性、戦地に駆り出された歴史も【日本経済新聞2015年4月18日】

 どこの公園に出かけてもドバトの群れを見かける。寺や神社にすみ着くので、堂鳩(どうばと)が転じてドバトになったという。

上野公園にはたくさんの鳩が生息している(東京都台東区)

 岩場に巣を作るカワラバトが原種で、古代エジプトやギリシャの時代に食用として、また帰巣性を利用した通信のために家畜化された。もともとは日本に生息しない外来種で、平安時代から現代に至るまで、様々な用途で持ち込まれ、再野生化したものである。帰巣性は渡り鳥と同様に優れており、視覚、嗅覚、聴覚、体内時計などの認知能力が研究対象となっている。

 伝書鳩による情報の貴重性がよく分かるエピソードがある。ロスチャイルド家は「ワーテルローの戦い」(1815年)でナポレオンが負けたことを伝書鳩の通信でいち早くつかみ、ロンドンでの国債取引で巨万の富を得たという。

レースが始まり一斉に飛び立つ伝書鳩(静岡市)=日本伝書鳩協会提供

 現在は伝書鳩としての利用は皆無に近く、専らレース鳩として用いられている。訓練は生後3カ月の若鳥を生まれ育った鳩舎(きゅうしゃ)の周囲から飛ばし、自分の家を覚えさせてから、10キロ、20キロと放鳩地を次第に遠くしていく。この訓練を根気よく繰り返して初めて優秀な伝書鳩となる。

 ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団 勇気りんりん るりの色(壇上文雄作詞、白木治信作曲)

 小学生の時、ラジオドラマ「少年探偵団」に夢中になった。流れるテーマ曲を歌い、怪人二十面相と闘う小林少年をはじめとするメンバーの活躍に心震わせ、窮地に陥ると、宿題など手につかなくなった。

 彼ら少年探偵は武蔵坊弁慶のように「絹ひもの縄ばしご」や「万能ナイフ」などの七つ道具を持ち、探偵活動に使用する。極め付きが「ピッポちゃん」という伝書鳩。小林少年が怪人二十面相のアジトの地下室に捕らわれの身になったときに、手紙をつけて放すと、高窓の鉄格子のすき間を通り抜け、明智探偵の家に一目散に舞い戻ったのだ。

戦場で活躍した伝書鳩の霊をなぐさめる靖国神社の鳩魂塔(東京都千代田区)

 伝書鳩が欲しいと思った少年は当時、今ほど多くなかったドバトを捕虫網で追いかけて、本気で伝書鳩にしようとした。子供に捕まるようなのろまな鳩もいなかったし、ドバトが伝書鳩になるはずもないと分かったのは、ずっと後年のことだった。

 東京オリンピックが開催された1964年くらいまで、東京・大手町の新聞社街では、屋上で伝書鳩の飼育が行われており、優秀な鳩の帰還次第でスクープ写真が取れた時代があった。戦時中は軍用鳩として、軍用犬や軍用馬とならんで戦地に駆り出された。靖国神社の境内に軍用鳩の碑があることを、今では知る人も少ない。

(帝京科学大学教授・獣医師 桜井富士朗)

 桜井富士朗(さくらい・ふじろう) 1951年生まれ。専門は臨床獣医学、動物看護学。77年、桜井動物病院(東京・江戸川)開設。臨床獣医師としてペットの診療、看護にあたるとともに、大学で人材育成を手掛ける。2008年より現職。共著に「ペットと暮らす行動学と関係学」、監著に「動物看護学・総論」など。日本動物看護学会理事長。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84043230W5A300C1000000/

ttps://archive.today/u5gz4

posted by BNJ at 23:11 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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