2015年05月24日

今週の本棚・この3冊:動物 渡辺佑基・選【毎日新聞2015年5月24日】(「カラスの教科書」松原始著/雷鳥社 「ペンギンが教えてくれた物理の話」渡辺佑基著/河出書房新社)

 <1>カラスの教科書(松原始著/雷鳥社/1728円)

 <2>カブトムシとクワガタの最新科学(本郷儀人著/メディアファクトリー新書/799円)

 <3>波紋と螺旋とフィボナッチ(近藤滋著/学研メディカル秀潤社/1944円)

 生きた動物を相手にする生物学者には二つのタイプがある。自分の好きでたまらない動物をとことんまで研究する「偏愛型」と、種にはこだわらずに多様な動物を調べる「博愛型」だ。

 『カラスの教科書』の松原始さんは筋金入りの偏愛型だ。東京・歌舞伎町の雑踏から沖縄の離島まで、ひたすらカラスを探してまわり、双眼鏡で観察する。そして沖縄の離島にいるカラスは、島によってクチバシの形などが異なり、それぞれの島の環境に適応した小さな進化が起こっている可能性に気付く。

 それにしても松原さん、ユーモアを交えた文章のお上手なこと。ニヤニヤしながら読み進めると、ついこちらまでカラス好きになってしまう。松原さんの祖父は数々のエッセイを残した数学者、岡潔(おかきよし)だそうで、文才は遺伝するのかなあなどと、下世話なことを考えてしまう。

 ぞっこんの偏愛なら『カブトムシとクワガタの最新科学』の本郷儀人(よしひと)さんも負けてはいない。本郷さんは虫採り少年がそのまま大きくなった昆虫研究者で、夏は毎晩山に入り、朝までカブトムシとクワガタの観察をしているという。

 エサ場をめぐるクワガタのケンカを観察して、その「決まり手」や勝敗を左右する要因を探る。あるいは雑木林のカブトムシの交尾の状況を、徹底的に調べ上げる。観察のしやすい身近な昆虫の利点をうまく使って、生物がどのように子孫繁栄の可能性を最大化しているかという、大きな生物学の問いに挑戦している。

 いっぽう『波紋と螺旋(らせん)とフィボナッチ』の近藤滋さんは、まじり気なしの博愛型だ。熱帯魚、シマウマ、巻貝など、幅広い動物の模様や体の形に関心をもち、それらを形成するメカニズムを調べている。

 一番のハイライトは、タテジマキンチャクダイという熱帯魚の縞(しま)模様がチューリング波と呼ばれる、数学者アラン・チューリングの提案した数理モデルで説明できることを証明する部分だ。科学誌『ネイチャー』に掲載された、若き日の近藤さんの大発見を支えたのは、熱帯魚の模様が時間とともに動くことを知っていた「熱帯魚屋のおばちゃん」だった。

 偏愛型と博愛型という二つのタイプの生物学者は、じつは登山のルートが違うだけで、目指す山頂は同じである。それは動物がどうして現在の姿かたち、体の機能、生態を備えるに至ったのか、進化の謎を明らかにすることだ。
http://mainichi.jp/shimen/news/20150524ddm015070112000c.html

今週の本棚・今週の執筆者:渡辺佑基さんほか【毎日新聞2015年5月24日】
 「この3冊」は国立極地研究所助教の渡辺佑基さん。著書に『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(河出書房新社)。川本三郎さんは評論家▽池澤夏樹さんは作家▽内田麻理香さんはサイエンスライター▽橋爪大三郎さんは社会学者▽佐藤優さんは作家・元外務省主任分析官。「昨日読んだ文庫」の絵は舟橋全二さん。
http://mainichi.jp/shimen/news/20150524ddm015070009000c.html

ttps://archive.is/hNpzp
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posted by BNJ at 12:02 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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