2015年05月27日

ベトナムで横行 野生動物の密猟・密輸 NYタイムズ 世界の話題【朝日新聞デジタル2015年5月27日】(ヒマラヤクロハゲワシ)

ベトナムで押収された、冷凍したトラの死体。骨を粉にして痛み止めの軟膏(なんこう)に用いるという。100グラム1千ドルの価格がつくといわれる(AP Photo/VnExpress)

 ノフ・バン・ホー(45)は、まるでダンサーが優雅に舞うように、密林をすり抜ける。乾いた竹やメラルーカ(訳注=フトモモ科の常緑小高木)の落ち葉が積もった上でも、ほとんど音もたてずに進んでいく。

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 狩猟で生計をたててきたノフの家は竹造りだ。ベトナム南部のウミンハ地区にある。彼は明け方に家を出て、森林の獣道(けものみち)や水路堤などに仕掛けたワナに獲物がかかっていないか見て回る。ワナは手作りだ。一度に5カ所か6カ所に仕掛ける。

 木片と自転車のブレーキに使うワイヤを利用して作った追い込みワナ。それをチェックしたが、獲物はかかっていなかった。最近では、珍しいことではない。

 「以前の森は、こんなんじゃあなかった」とノフはいう。「いまは獲物が少なくなったから、猟師の多くが違う仕事に就くようになった」

 それでもノフがここ2週間で捕まえた獲物は、計9匹の東南アジア・ハコガメとマレーシア貝食いガメ、5匹の象鼻ヘビ、数羽の水鳥、2羽のヒマラヤ・クロハゲワシなどだった。貴重なヒマラヤ・クロハゲワシは、取引先が決まるまで、安全のために兄弟の家の寝室に足を縛って隠してもらっている。

 かつては、狩猟に行ってくると、希少種のセンザンコウなどの収穫があり、大もうけできた。センザンコウは世界で最も密猟の対象とされてきた野生生物の一つだ。ノフは、センザンコウなら1キロ当たり30米ドルで買い取るという業者と仕事をしてきた。十分にいい値段である。去年は、そのセンザンコウを2頭捕まえた。しかし、カネになる獲物には限度があることもノフにはわかっている。

 「センザンコウはもうすぐ、いなくなってしまうだろう」とノフはいう。でも、猟師を引退するつもりはない。

 ベトナムは世界で最も野生動物の多様性に富む国の一つだが、ノフはそこで暗躍する何千人もの違法ハンターの一人である。しかし、この地域のサイはすでに絶滅した。トラはほんの数える程度にまで減ってしまった。野生のスッポンやジャノウネコといった動物は伝統医薬とか食用にされたり、戦利品やペットにされたりして減少した。

 世界の密輸・密売の中でも最も金額が張るのが野生動物の違法取引だ。その額は年間190億米ドルに達する。ベトナムはこの種の違法取引ルートにおける地域の要衝である。ベトナムは中国向けの密売品の中継ルートになっており、違法な品々がカンボジア、ラオス、タイからは陸路で、マレーシアやインドネシアからは海路で、そしてアフリカ諸国からは空路で入ってくるのだ。

 「野生動物の取引がどうなっているのか。中国に次いで、ベトナムは違法取引の実態を知るためのカギになる国である」とダン・チャレンダーは指摘する。「国際自然保護連合(IUCN)」のセンザンコウ専門家グループの共同代表をしている。

 ベトナム自体も野生動物を消費してきた主要国の一つだ。例えば、サイの角。がんから二日酔いまで、さまざまな病に効くとされ、伝統医薬に使われてきた。また、希少動物の肉などは、このところ台頭してきた富裕層が「ぜいたく食品」として好んでいる。

 「センザンコウを使った料理は最も高額なメニューで、友人や同僚たちに金持ちぶりを見せびらかすようにして(レストランで)注文する」とチャレンダーはいう。「その違法性は問題ではなく、むしろ魅力的な要素なのだ。自分が法を超越した存在であることを誇示できるからだ」

 違法な野生生物製品の世界で2番目に規模が大きいマーケットは米国だが、取り締まりは十分ではない。当局が摘発するのは推定で全体の10%程度である。象牙の取引のように、法的な抜け穴もある。

 中国では最近、野生動物絡みで逮捕・起訴される事件が増えているが、ベトナムやその他の密猟・密輸の中継国では罰則を逃れるケースがほとんどである。

 ベトナムの法律では、保護下にある野生動物を捕獲したり売買したりすることは犯罪だ。しかし、ノフはこれまで摘発されたことはないというし、彼のような密猟者が処罰されるケースはめったにない。あったとしても、軽い罰金程度ですむ。

 「当局は取り締まりにあまり熱心ではない。腐敗していたり、癒着(ゆちゃく)があったり、無関心だったりするためだ」。そうシェパードはいい、「人々は気にかけていない」と続けた。

 ホーチミン市にある「神の酒」というレストランにはセンザンコウやクマ、ヤマアラシ、コウモリなどの料理がメニューに載っている。センザンコウを注文するなら、予約が必要だ。店に行くと、支配人が生きたセンザンコウをテーブルに持って来て、その場でのどをかき切ってみせる。新鮮さをアピールするためだ。

 「センザンコウはお客さんに人気がある。いろいろな病気に効くといわれているから」と支配人はいう。食べ残したら、包んでもらって持ち帰ることもできる。

 日曜日の夜のこと。レストランは子ども連れの家族や中年男性のグループなどで満席だった。あるテーブルで、フランス語を話す2人の男性客が同伴の女性を喜ばせようとコブラの料理を注文した。すると、大きな身をクネクネさせたコブラをウェーターが2人がかりで運んできた。コブラの口はビニールのひもで縛ってある。1人のウェーターがコブラをピーンと伸ばすと、もう1人がはさみで切り裂いてまだドクドクしている心臓を指で取り出す。その様子を、お客はスマートフォンで写真に撮っている。コブラから滴る血を陶器の器に入れ、アルコールと混ぜる。後で飲み干すのだ。

 「政府は、この種の肉食を禁じている。でも、われわれは肉を手に入れるルートがあるし、警察にも強力なコネがあるから問題ない」と支配人はいう。「注文する人が多いから、お店としてもそれに応えてやらなくちゃあ」

 「ベトナムでは、当局が野生動物の違法取引を摘発しても、役人がその生物を横流しするから、ブラックマーケットに出回ることになる」。非営利組織「ベトナム野生生物保護協会(SVW)」の創設者グエン・バン・タインは、そう話す。「保護という考え方そのものがベトナム人にはまだなじみが薄い。そこに問題がある」と彼は指摘している。(抄訳)

(Rachel Nuwer)

(C)2015 New York Times News Service(ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス)
http://www.asahi.com/articles/ASH5D3JX6H5DULPT002.html

ttps://archive.is/Twlfk

posted by BNJ at 22:12 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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