2015年09月15日

ライチョウ:「10年たたず消滅」新潟・火打山で生息危機【毎日新聞2015年9月15日】

イネ科の植物が入り込み、ライチョウの餌場や営巣地が失われている状況を説明する中村さん(左端)=新潟県妙高市の火打山のライチョウ平で

 3月に国立公園に指定された「妙高戸隠連山国立公園」を象徴する新潟県妙高市の火打山(2462メートル)で、繁殖するライチョウの生息が危ぶまれている。ライチョウを長年研究している中村浩志・信州大学名誉教授(68)=鳥類生態学=によると、地球温暖化の影響で生息域が狭められ、今年はヒナが誕生していないといい、「このままでは10年たたずして火打山からいなくなる」と警鐘を鳴らす。12、13両日に現地で開かれた観察会に参加し、生息地を訪ねた。

 観察会は、新国立公園誕生を機に、住民らの連携を深めようと設立された「妙高戸隠会議」が主催した。

 12日昼過ぎ、起点となる標高2100メートルの市営高谷池ヒュッテを出発。色づき始めた高層湿原「高谷池」などを抜け、1時間弱で火打山頂手前の「ライチョウ平」(2276メートル)に到着した。かつてはこの辺りでもライチョウが見られたというが、その姿はない。その後、山頂直下の営巣地と餌場を観察。天気が良く、「猛禽(もうきん)類に狙われる可能性がある」(中村さん)ため、この日はライチョウは姿を現さなかった。

 ヒュッテに戻り、夜に行われた講演会では、中村さんがスライドなどを使いながらライチョウの生態について説明してくれた。

 中村さんによると、火打山で最も懸念されているのが地球温暖化の影響で、現状は「危篤状態だ」という。ライチョウは春から秋を高山帯で過ごし、天敵のワシやタカなどの猛禽類から身を隠して営巣する。だが、温暖化の影響で、高山帯のハイマツが人の膝丈の高さから背丈を越える高さとなったり、なくなったりするなど、高山帯が消滅しつつあり、営巣に適さなくなっているという。また、餌場には、イワイチョウやイネ科のタカネノガリヤスなどが入り込み、餌となるコケモモなどを駆逐。草原化して砂浴びをする場所も失われるなど、生息環境は悪化している。

 火打山にはつがいが10組、約3キロ西にある活火山・新潟焼山(2400メートル)には4組が生息し、ほぼ50年間変化はない。火打山や焼山などがある頸城(くびき)山塊のライチョウは、国内で繁殖する5グループのうち最北に位置している。集団としては最少で、最も標高の低い場所で繁殖している極めて珍しいケースだという。

 個体数減少の要因としては、捕食者のキツネなどが生息域を拡大させたり、南アルプスではニホンジカの侵入で餌の高山植物が食い荒らされて土壌が流出したりし、生息域が狭められていることなどが挙げられるという。実際、登山道ではそれらの動物のフンも目に付いた。また、北アルプスではニホンザルにヒナが捕食されたこともあるという。

 中村さんは生息環境の整備が最優先課題だとし、「まず営巣地や餌場を確保するため、イワイチョウやイネ科の植物などを駆除する必要がある」と指摘。さらに「ニホンジカやイノシシなども狩猟して食べるなどして、適正な数を維持すべきだ」と訴えた。

 ヒュッテに宿泊し、翌13日早朝、再び山頂に向かった。曇り空の下、山はガスに包まれ、「今日は『ライチョウ日和』」と中村さん。その言葉通り、頂上直下の登山道から約3メートル離れた場所で、1羽が餌をついばむ姿が見られた。1歳の雄で、足輪がないことから、隣の焼山で育ったとみられる。

 中村さんは「ライチョウは妙高の素晴らしい財産だからこそ、トキやコウノトリの二の舞いだけは避けなければならない。余裕のある今から、保護の手を打つ必要がある」と強調する。妙高市は来年度中に、中村さんら専門家の意見を取り入れ、保護策を策定する予定だ。【浅見茂晴】
http://mainichi.jp/select/news/20150915k0000e040157000c.html

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posted by BNJ at 11:43 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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