2015年10月20日

風に吹かれて:/96 水辺の風景を歌う /島根【毎日新聞2015年10月20日】(ラムサール条約/宍道湖)

 山陰の豊かな水資源、宍道湖と中海がラムサール条約に登録されて今年で10周年。その記念テーマソング制作の依頼を受け、この夏からずっと私の頭の中では渡り鳥の群れが歌っていた……ような気がする。

 鳥取・島根両県の担当職員さん、中海宍道湖の浄化活動に関わる熱い思いを持った方々、米子水鳥公園のスタッフやそこに集う子供たち。皆さんと、いろいろなシーンで交流したりお話を伺ったりして、それぞれの心にある水辺の風景を映すことばのかけらを拾い集めては、曲の中に封じ込めたり取り出したり、捨てたり拾ったりの作業を繰り返した。

 山陰に移住して私も気付けば10周年! 何やら人ごととは思えず、自分のここまでの10年と重ねてみる。10年前、島根の人になるのだ!と覚悟を決め、東京から両親の暮らす新潟へ行き、そこで数日おとなしくした後、島根への道のりをゆっくりと味わうがごとく、気の向くままただひたすら日本海に沿って列車の旅を10日間……。そうして最終日、いよいよ島根!と中海を過ぎ、宍道湖が見えて来た時、何とも言えない安心感に包まれた事を覚えている。

 ひとりぼっちで眺めていたこの水辺の風景を、今やたくさんの仲間と呼べる大切な人たちと共に慈しむ事ができる不思議を喜びに思う。そういえば東から西へと西へと進んだあの旅の風景には、いつも右手に日本海、左手には缶ビールがあったっけ。

 この豊かな水辺に生息する渡り鳥たちの暮らしを今、山の上流に暮らす私も、身近な問題として考えてみる。自分の台所がその水とつながっている事を……。長い間この水辺の浄化活動に携わってこられたある人は、ただ淡々と、幼い頃見た魚がまた戻って来ることを待っている、と言っていた。子供の頃釣った魚のその色や匂い、手触りや風景は、大人になった今も心の奥底に鮮やかに在るそうだ。

 「土水空(どみそら)の歌」と名付けたこの曲が、どんな人の心にも在るふるさとの風景をそっと呼び起こす一滴となるよう願って台所に立つ、秋の朝。【ミュージシャン、白築純】
http://mainichi.jp/area/shimane/news/20151020ddlk32070484000c.html

ttps://archive.is/lPRaT

posted by BNJ at 23:02 | Comment(0) | 鳥類コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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