2015年11月23日

青森・蕪嶋神社火災 焼失した「ウミネコの聖地」 再建を待つ住民と鳥たち【THE PAGE2015年11月23日】

 「そこに神社があって、神様に守られていると感じているから、毎年ウミネコが子育てしに来てくれているんだと思っている。これは想像だけどね」――。青森県八戸市のウミネコ保護監視員を8年間務める吉田勝鴻さん(73)はこう語る。

 八戸港から突き出したような岩山が、国内有数のウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている蕪島(かぶしま)。春になると、島は満開の菜の花で黄色に染まり、飛来した3万5000羽の独特の鳴き声が響き渡る「ウミネコの聖地」だ。

 古くからの漁師町である同市鮫や白銀地区の人々にとって、ウミネコは魚の居場所を知らせてくれ、富や幸福をもたらす存在として大切にされてきた。今日、鳥居の階段脇には糞よけの傘が設置されているが、「空から運(ウミネコの糞)が降ってくる」として、糞が命中した人は会運証明書をもらえるほか、蕪島と株にちなんで「株があがる」「自分の株があがる」と人気を集めている。

焼け落ちた「聖地」と再建の道


[写真]子育てシーズンには、境内のあちこちでひなの姿が見られる=八戸市の蕪嶋神社
 今月5日の早朝、サイレンの音が港町の静寂を切り裂き、蕪島の上で720年の歴史を持つ「蕪嶋神社」は、真っ赤な炎をあげて焼け落ちた。春に約800組のウミネコが愛をはぐくんだ境内は、現在、黒く焦げた本殿の柱が無残な姿をさらしたままだ。ウミネコにとっては幸いというべきか、一部の越冬組を除いて南方へ旅立った後で、大きな影響は出ていないようではある。

 少し歩けば蕪島を望めるところに暮らしてきた鮫観光協会長の杉本健一さん(67)は、火災の報で駆け付けた1人だ。「前の日にジョギングで訪れ、登ったばかりの階段が……。こんなことがあるものかと」とショックに肩を落とす。焼け落ちた建物の片づけは年内いっぱいに終える予定で、八戸市の小林眞市長は2年後の再建を目指す考えを表明している。鳥居前や高台からの蕪島の眺望で知られる市水産科学館マリエントなどには募金箱が置かれ、お金を入れて手を合わせる参拝者の姿が絶えない。

 ただ、本殿再建に向けて懸念がないわけでもない。繁殖シーズンに足の踏み場がないくらいに営巣するウミネコと工事の兼ね合いだ。

 ウミネコの子育てには人間側の繊細さが欠かせないからだ。例年、参拝者の通路確保と注意喚起のため、境内に作られた巣を木で囲って少しずつ移動しているが、その作業は細心の注意を払って行なわれる。吉田さんら保護監視員は言う。「一気に動かすと巣に戻らなくなるので、10センチずつ、少しずつ移動するんです」。ウミネコが産む卵は平均2.1個。「春になってみないと分からないが、環境の変化で減ってしまわないかはやはり心配」と吉田さん。ましてや再建工事が子育てシーズンに重なった場合、ウミネコの産卵に影響がでないかと懸念するのだ。


[写真]ウミネコに温かい愛情をそそぐ吉田勝鴻さん=同
 そもそも、ウミネコにとって、蕪嶋神社や絶えずそこを訪れる人々はどのような存在なのか。かつて蕪島は陸と離れた小島で外敵の危険性が少なかったが、戦時中に海軍による埋め立てで陸続きとなり、特攻艇を隠す濠が作られたという。「工事の音はすごかっただろうと思うが、ウミネコは今までずっと帰ってきた。イワシやイカなどの餌が豊富に手に入る海もあるが、参拝に訪れる地元の人が危害を加えないという安心感があるのではないか」。

 保護監視員の仕事は、4月から8月8日までの期間、常時2人体制で泊まり込んでウミネコを24時間見守ることだ。卵やひなを狙う野良猫やカラスを追い払い、時にはキツネにも目を光らせる。本殿そばにあるものの、火を逃れた監視小屋の前には、毎年決まって巣作りするペアがいる。吉田さんはそのペアを「梅太郎、梅子」と呼び、「生まれて4年経った梅太郎たちの子が、昔育った巣のそばに帰ってきたこともあった」と目を細める。

春には新しい営巣場所が完成へ


[写真]三陸復興国立公園の起点としての整備が進む。ウミネコの営巣に期待が高まる=同
 再建のスケジュールは、今後、神社再建実行委で検討されていく予定だが、来月6日の「納め弁天」や年越し恒例の花火イベントは行われる見通しだ。また、シンボルの神社は焼けてしまったが、蕪島周辺では今、三陸復興国立公園の起点としての整備事業が進んでいる。来年3月には、鳥居前にある休憩所と観光案内所を小高い芝生の丘で包み込むような格好で、ウミネコが子育てできる丘が新しく完成する予定だ。

 「地元の人もショックを受けているが、帰ってきて一番ショックを受けるのはウミネコかもしれない。神社があって、ウミネコがいての蕪島だ。新しい丘に巣を作ってくれるかもしれないし、本殿の形がまた見えてくればきっと安心してくれるだろう」と吉田さんや杉本観光協会長は語る。2011年3月の東日本大震災でも、参道の階段の中ほどまで津波が襲ったが、それでも強さを見せ続けてきた蕪島のウミネコ。保護監視員や地域の愛情の下で、再び心のよりどころとなる神社の再建を祈っているに違いない。

【蕪島の関連行事メモ】
再建実行委によると、12月31日の蕪島カウントダウンフェスティバル、1月1日の元旦祭は実施される予定。また、同委員会のサイトがこのほど立ち上がり、振り込みによる募金を開始した。

◎今後の主な日程
12月6日 納め弁天年越祭
12月中 焼けた本殿の片付け終了
12月31日 蕪島カウントダウンフェスティバル
1月1日 元日祭
3月いっぱい 新しい営巣地などの整備事業が完了
4月 保護監視員の常駐スタート
5月 うみねこマラソン
http://thepage.jp/detail/20151123-00000003-wordleaf
http://thepage.jp/detail/20151123-00000003-wordleaf?page=2

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posted by BNJ at 23:34 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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