2015年12月06日

(ワールドけいざい)サハリンのサケ漁、ピンチ 「流し網」来年から禁止【朝日新聞デジタル2015年12月6日】(海鳥)

水産加工の工場ではサケの頭と内臓を取りのぞき、11キロずつに分けて冷凍する。女性を中心に約240人が働く=9月15日、ロシア極東サハリン

 ロシア極東のサハリン州で、日本にサケやマスを輸出する漁業関係者に不満が広がっている。カムチャツカ半島沖の太平洋を中心に広がるロシアの排他的経済水域(EEZ)で、2016年から流し網漁が禁止になるためだ。補償を求めて訴訟をめざす動きもある。

 ■地元500人、失業の可能性

 流し網漁で取れるサケやマスは、沿岸のものよりおいしいとされる。ロシア極東にあるサハリン州の州都、ユジノサハリンスクで漁業会社を経営するキム・ドミトリーさんは全量を、高値で売れる日本に輸出してきた。事務所のアパートの一室には、魚やカニが描かれた大きなポスターが貼ってある。日本の水産会社のものだ。

 日本から新しい船を18万ドル(約2200万円)で3月に購入したが、すぐに禁漁が決まった。「このままでは、26人の船員をクビにするしかない」と嘆く。

 キムさんは、10年から10年間、年750トンの漁獲枠を1千万ルーブル(約2千万円)で獲得した。漁獲枠はあと4年あり、流し網漁でなければ操業はできる。

 しかし、代わりの方法が見つからない。沿岸漁業の枠は17年分まで決まっており、新規参入は厳しい。「枠を持つ会社と提携、買収を考えているが、まだ見通しは立たない」と話す。

 今年、太平洋とオホーツク海で流し網漁に出たロシア船は13隻、うち10隻がサハリンの船だ。サハリン漁業者組合は禁漁で、船員と地上の作業員計500人が仕事を失う可能性があるとみる。19隻が出漁した日本でも苦しい状況は同じだ。

 サハリンの漁業会社や組合はロシア政府に対し、流し網漁を漁獲枠の期限内は認めるか、別の漁獲枠を特別に認めることを求めている。しかし、満足な回答はまだないという。

 地場の大手漁業会社のアレクサンドル・コヌイシェフ社長は「環境被害という主張は、科学的な根拠に基づいていない。このままでは来年には補償を求めて訴訟を起こす」と話す。

 ■州政府、加工業を強化

 一方、サハリン州政府が力を入れるのは、沿岸漁業と水産加工業の育成だ。流し網漁のような輸出一辺倒でなく、国内消費も増やそうと考えている。

 州南部のアニワでは、サケの漁獲シーズンの9月中旬、沖合1キロの定置網からぎっしり取った漁船が砂浜に引き上げられた。クレーン車が網をつり上げ、ダンプカーの荷台に運んでいく。2キロ離れた加工工場の作業ラインに流されたサケは、頭や内臓を取り除いて冷凍保存される。別室では、イクラもつくる。工場は3年前、州政府の補助を受けて完成した。

 水産会社タラマイのドミトリー・マトベエフ営業部長は「日本製の設備を入れ、加工後の魚の品質は最高だ」と自慢げに語る。

 州政府は、魚の消費を増やそうと、「手ごろな魚」計画も始めている。9月には、漁業者と販売業者が直接売買できる取引所を開設するなど、魚価格の引き下げに取り組む。州副代表のビストロフ氏は「流し網漁は季節労働で、取った魚は日本などに運んでいた。沿岸漁業や水産加工なら通年で働ける。地元の雇用も増える」と期待する。

 (ユジノサハリンスク=中川仁樹)

 ◆キーワード

 <流し網漁の禁止> 流し網漁は海面に数キロ〜数十キロの網を流して魚を大量に絡め取る漁法。アザラシなどの海洋生物や海鳥、他の魚も大量に巻き込まれて死ぬなどと批判されている。1991年の国連総会では公海上での大規模な流し網漁を事実上禁止する決議案を全会一致で採択。大規模なものが続いていたのはロシアだけだった。

 ロシアではカムチャツカ地方がソ連時代から、「川に戻るサケが激減し、水産加工業が打撃を受けた」などと政府に規制を求めてきた。2016年1月から、ロシアの200カイリ水域での流し網漁を禁止する法律がロシアで成立。ウクライナ危機でロシアに制裁を科した日本への「対抗措置」の意味合いもあると言われる。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12103985.html

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posted by BNJ at 11:24 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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