2016年02月05日

【銀幕裏の声】忍者を超えた? 鳥と飛び、馬と併走するカメラマン−“シナリオ”のある驚愕のドキュメンタリー「シーズンズ」【産経ニュース2016年2月5日】

「シーズンズ 2万年の地球旅行」の鳥の飛翔シーンは、「WATARIDORI」のときより、さらに進化したマイクロライトプレーンで撮影された
 ウマの群れに襲いかかるオオカミを併走しながらカメラが追う−。想像を超えた撮影手法で野生動物の姿をとらえたドキュメンタリー映画「シーズンズ 2万年の地球旅行」が公開中だ。「オオカミが獲物を追う場面は珍しくないが、ウマが協力しフォーメーションを組んで逃げるシーンを撮ったのはおそらく世界初。動物研究者でも驚くカットの連続です」。こう解説するのは動物行動学のスペシャリスト、生態科学研究機構理事長の新宅広二さんだ。「人口比で世界一の動物園数を持つといわれる日本ですが、果たして日本人は動物への理解が深いといえるのか? 動物好き必見のこの映画を見て考えてもらえれば」と期待を込める新宅さんに「シーズンズ」の見方、見どころを聞いた。(戸津井康之)

驚愕!ウマのフォーメーション

 ウマの群れをオオカミが追うシーンは、できる限り音が出ないよう改造された“無音”の特別製電動バギーを使って行われている。この映画のために開発された超計量バギーで、ステディカムを搭載し、カメラマンが同乗。動物と同じ速度で森の中を駆け抜けながら撮ったカットは圧巻だ。

 「オオカミの群れが連携しながら、ウマを孤立させて襲うシーンはこれまでの記録映像などで珍しくないが、逃げるウマがフォーメーションを組みながらオオカミの追撃をかわしていく映像には驚きました。ハイテク機器による成果も大きいが、実は撮影スタッフ全員が、動物の生態を知り尽くした“本物の動物研究者”というところが、この映画を完成に導いた大きな理由といえます」

 新宅さんがこう説明するように、今作を製作した2人のフランス人監督、ジャック・ペランとジャック・クルーゾは、大陸や海を移動する渡り鳥の姿を追った「WATARIDORI」(2001年)、海を潜るペンギンや高速で泳ぐイルカの姿をとらえた「オーシャンズ」(09年)などを手掛け、数々の世界のドキュメンタリー賞を獲得してきた動物映画のスペシャリストだ。

ハイテク機器使用でとらえた「動物生態の謎」驚異の映像

 「WATARIDORI」では、カメラマンができる限り鳥の群れに接近しながら空を飛ぶため、エンジン音を抑えた特別製のマイクロライトプレーンを製作。「オーシャンズ」ではイルカと同じ速度で海中を進むための最新兵器“魚雷カメラ”を製作し、それまで謎とされた動物たちの生態をとらえて紹介してきた。

 これらハイテク機器を駆使してとらえた驚異の映像は世界中の動物、映画ファンだけでなく、動物学者や研究者たちをも驚かせてきた。

 最新作の「シーズンズ」では、「WATARIDORI」で使用したマイクロライトプレーンをさらに改良し、カメラマンが鳥の群れと一体となって空を飛ぶ撮影に成功。臨場感あふれる飛翔シーンは感動的だ。

 「もちろん映像はすべてノンフィクションですが、単に動物まかせのハプニング映像ではありません。実はストーリーがあるのです」と新宅さんが製作秘話を明かす。

 つまり、これらの映像はドラマやアクション映画のように、「監督が絵コンテを描き、それを再現した映像」だと言うのだ。

 「当然、簡単には撮れませんよ。高度な専門知識を要するため、カメラマン自身が大学で講義できるほどの動物の専門家であったり、スタッフには動物行動学者や生態学者らもおり、綿密な計画を立てて撮影に臨んでいるのです」

動物との真の共存目指して

 なぜ近年、フランスなど欧州から、これら優れた動物ドキュメンタリーが何作も繰り出されているのか?

 「『シーズンズ』は現代の世界の動物を撮影しながらも、実は2万年前の氷河期からの動物の歴史、そして動物と人との歴史を描いた映画なのです」と新宅さんは説明する。

 オオカミが、やがて人に飼われる犬に、オオヤマネコが現在のペットとなるネコに、オーロックスが家畜のウシに、イノシシが家畜のブタに…。その変遷が淡々と映像で綴られていく。

 「実はフランスでは小学校の授業に『ナチュラルヒストリー』という科目があるんです。自然や生物の歴史を学び、そこから生命とは何か、人間とは何かを考えるという科目で、とても人気があるのです。こんな教育環境が根付く土壌からジャック・ペラン監督のような人材が輩出されるのでしょうね」と新宅さんは言う。

ナレーションは必要か? 日仏教育環境の違い

 「シーズンズ」の日本公開版ではナレーションが付けられているが、実はフランスでのオリジナル版にはナレーションが一切ない。

 「ナレーション無しで、この作品をすべて理解することは、かなり難しいとは思いますが、フランスでは子供たちもナレーション無しで見ているという事実も日本人に知ってほしいですね」と、日本版のナレーションを監修した新宅さんは訴える。

 新宅さんは大阪生まれ。幼い頃から動物好きで、大学、大学院で動物行動学を学んだ後、上野動物園などに勤務。その後、国内外で野生動物のフィールドワークを続け、生態、飼育方法などを修得してきた動物行動学の第一人者だ。

 「日本人は動物好きですが、フランスの『ナチュラルヒストリー』のように、学校で動物を学ぶための科目はありますか?」と新宅さん。「動物好きの子供に将来何になりたいか、と聞くと、多くは獣医か飼育員しか浮かばない。動物に関わりたいと思っていても、日本ではそれだけ職業が限られてしまうのです」と寂しそうに語る。

 「シーズンズ」は動物好きの日本人に贈る最高峰の教科書とも言えそうだ。

 「ジャコウウシの目に映り込んだ壮大な自然の風景は圧巻です。なかなか見ることのできない貴重な4K映像を巨大スクリーンで堪能してほしい」。動物を知り尽くした新宅さんも感動したお勧めのシーンだという。

http://www.sankei.com/west/news/160204/wst1602040003-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/160204/wst1602040003-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/160204/wst1602040003-n3.html
http://www.sankei.com/west/news/160204/wst1602040003-n4.html

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タグ:映画
posted by BNJ at 12:06 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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