2016年02月15日

NYタイムズ 世界の話題 ガラパゴス諸島「絶滅ゾウガメ」の再生に挑む【朝日新聞デジタル2016年2月15日】(ドードー/リョコウバト)

ガラパゴス島のゾウガメの象徴的存在だったロンサム・ジョージ= Galapagos National Park/dapd。2012年に死んだ

 ドードー鳥(訳注1)は死に絶えた。リョコウバト(訳注2)も絶滅した。しかし、ガラパゴス諸島のゾウガメの象徴的存在だったロンサム・ジョージ(孤独なジョージ)の種は、再生できる可能性がでてきた。

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 学術研究チームの調査で、ジョージの血統に近いゾウガメが生き残っていることがわかったのだ。生物学者たちは、慎重に飼育してジョージの種を再生させ、進化を遂げてきた島の陸地にもう一度そのゾウガメたちをよみがえらせたいと考えている。

 ガラパゴスゾウガメは島ごとに進化を遂げ、少なくとも八つの亜種が存在したと科学者はみている。そのうちの一つは2015年に見つかったものだ。だが、ジョージの種であるピンタ島のゾウガメなど三つの亜種はすでに死に絶えた。ピンタゾウガメの最後の生き残りだったジョージは1972年に発見され、大事に保護されてきたが、2012年に死んでしまった。年齢は100歳を超えていた。孤独なジョージの死は、過去200年以上にわたって人間が世界各地の生態系をいかに破壊してきたかを改めて思い起こさせた。

 ゾウガメは16世紀には25万頭以上生息していたとみられるが、1970年代には約3千頭にまで激減してしまった。19世紀に、捕鯨船の漁師や海賊その他の船乗りたちが島々のゾウガメを次々と捕まえた。船を安定させるバラスト(底荷)に使ったり、長い航海用の食料にしたりするためだった。ゾウガメは船上で、水やエサがなくても1年以上も生き延びられるから、長期航海の理想的な「お持ち帰り食品」であった。

 ガラパゴスゾウガメの甲羅には二つの型がある。くらの形をしたサドルバック型と半球形のドーム形だ。船乗りたちは、比較的小さいサドルバック型を好んだ。持ち運びやすく、味も良かった。しかも、簡単に見つけることができた。ドーム形の生息地は高地で、重量もゆうに140キロになるが、サドルバック型は低地で進化し、乾燥した植物をエサにしてきた。正面の甲羅がサドルのような形に盛り上がっているが、それは背の高いサボテンを食べるための長い首をおさめるのに都合がいい。

 ガラパゴス諸島のサンタフェ島やフロレアーナ島のサドルバック型は死に絶えてしまった。孤独なジョージもサドルバックだった。その死は、ピンタ島のサドルバック型ゾウガメの絶滅を意味した。

 ところが今、ガラパゴスゾウガメの絶滅物語は不思議なことに希望に満ちた展開を見せ始めたのである。

 100年以上も前のことだが、ガラパゴス諸島イサベラ島のウォルフ火山に近いバンクス湾で、船乗りたちが不要になったサドルバック型ゾウガメを投げ捨てた。その多くが海岸に泳ぎ着き、ウォルフ火山周辺の溶岩地帯に棲(す)むようになってイサベラ島の固有種のドーム形ゾウガメと交配を重ねた。

 2008年、科学者のチームが同火山の斜面に生息していたゾウガメ1600頭あまりに追跡調査用のタグをつけ、血液を採取した。研究室で遺伝子を調べたところ、89頭の遺伝子は、博物館に完璧な形で残されていたフロレアーナ島のゾウガメの遺伝子の一部を受け継いでいることがわかった。しかも、その中には、親がオス・メスともフロレアーナゾウガメの純血種を示す遺伝子を持ったイサベラゾウガメが混じっていることもわかった。フロレアーナゾウガメの種が絶滅していなかったことを示唆している。

 そして17頭の個体が、ピンタゾウガメのDNAを高レベルで受け継いでいることも判明した。ゾウガメは長ければ150年以上生きられる。とすれば、17頭のうちの何頭かは、「孤独なジョージ」の近縁かもしれないのだ。

 科学者たちは最近また現地に戻り、再調査を進めている。ピンタ種とフロレアーナ種のDNAを高レベルで受け継ぐゾウガメを見つけて、遺伝子がそれぞれの原型に最も近いゾウガメを繁殖させるのが目的である。

 「ほんの何世代かのことだから、『失われた』とされてきた祖先の遺伝子の95%を持つゾウガメなら、見つけることができるだろう」。そう科学者たちはみている。

 ウォルフ火山周辺のゾウガメについて、米エール大学の上席研究員で現地調査チームの遺伝子学者アダルジサ・カコーネ氏は「その個体の多さに驚いている」と言い、「それは生態系においても重要な役割がある」と指摘する。

 種の維持と環境保全という点で、「今回の研究は遺伝子情報を本格的に活用する初めてのケースになる」とリンダ・カヨット博士は言っている。保護財団「ガラパゴス・コンサーバンシー」の科学アドバイザーだ。

 飼育下での繁殖がうまくいけば、今後5年から10年で、新たに生まれてくるゾウガメをピンタ島とフロレアーナ島に放すことができる。カヨット博士によると、それは破壊された生態系の復活に役立つ。ゾウガメが陸地をはいまわることで、植物のタネや土壌を健全にする栄養物などを拡散させるからだ。

 現地調査チームは、これまでのところ、すでに100頭を超す大きなゾウガメを見つけた。ジョージと同じサドルバック型だ。それらをネットに入れ、ヘリコプターでつりあげて運ぶ。ガラパゴス諸島のサンタクルス島に設けた繁殖センターには、最も見事なサドルバック型が32頭運び込まれている。メスが21頭で、オスは11頭。米ニューヨーク州立大学のジェームズ・P・ギブス教授(脊椎<せきつい>動物保護学)によると、多くは30歳から40歳とみられるが、何頭かはもっと高齢かもしれない。

 その中のオスの1頭が、孤独なジョージに生き写しだ。米ジョージア大学の博士号を持つ研究員のエリザベス・ハンター氏の観察だが、彼女の話だと、捕獲される時、あの有名な「ジョージ・ポーズ」で立ち上がったと言う。

 そのオスは今、かつてのジョージのように、観光客に雄姿を見せつけている。(抄訳)

(Sandra Blakeslee)

(C)2015 The New York Times

訳注1=アフリカ東海岸沖のインド洋に浮かぶモーリシャス島に生息していたドードー科の鳥。中型の鳥だったが、300年以上前、乱獲と人間が持ち込んだ動物が天敵となり、絶滅した。

訳注2=北米大陸東海岸を生息地にしていたハト科の渡り鳥で、20世紀初頭、乱獲などに遭い絶滅した。(ニューヨーク・タイムズ)
http://www.asahi.com/articles/ASJ1W54ZJJ1WULPT001.html

ttp://archive.is/9JFdz

posted by BNJ at 23:15 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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