2016年02月29日

<旭山動物園の挑戦 行動展示の先へ>4 探究「できることもっと」【どうしんウェブ2016年2月29日】(連載/既報関連ソースあり)

人に慣れてきた天売島の猫「チロル」。来月には譲渡会が開かれる(野沢俊介撮影)
 「チロル、また大きくなったな」。子どもが犬や鳥などと触れ合える旭川市旭山動物園の「こども牧場」では、2匹の猫を飼育している。「チロル」は焦げ茶色系の雄で、こども牧場担当の獣医中村亮平さん(34)が持つクジャクの羽根にじゃれた。寝ていたもう1匹の黒い雄「ひじき」は大きく伸びをした。

 2匹は羽幌町の天売島で捕獲された野良猫だった。旭山は昨年6月から、環境省と羽幌町などが島に生息する絶滅危惧種のウミガラスなどの海鳥を保護するために捕獲した野良猫の一部を引き取っており、2匹はその第1弾。人に慣れさせて譲渡する狙いで、3月に園内で開かれる譲渡会で引き取り先が決まる。

 「自然界では、猫が悪者で海鳥が被害者ということではない。猫にも良い環境を探してあげたい」。自身も5匹の猫を飼う中村さんは願う。

 動物園の役割は展示だけではない。その一つが野生動物の保護。旭山では、1967年の開園から2005年まで、交通事故に遭った鳥などの野生動物を保護していたが、負担が重く、対応は難しい。それでも、天売島の猫の保護のほか、海外でも、マレーシア・ボルネオ島のゾウの保護施設「野生生物レスキューセンター」建設の支援などを行っている。

■誕生に喜び

 もう一つが繁殖だ。昨年10月、旭山は15年度に予定していた「さる山」の改修工事を断念、16年度に先延ばしする決断をした。さる山の近くで飼育、妊娠の兆しがあったホッキョクグマの雌2頭に、工事の騒音などでストレスを与える可能性があったためだ。

 旭山は、74年に国内で初めてホッキョクグマの繁殖に成功。81年までに計5頭を誕生させたが、その後は長く成功例がない。

 結局、今回も雌2頭は妊娠していなかったが、昨年12月から、20歳を超す2頭より若い雌「ピリカ」(10歳)を、雄の「イワン」と同居させ、再挑戦中だ。ホッキョクグマ担当の飼育員大内章広さん(31)は「飼育員にとって、繁殖に携わることは大きな喜び」という。

■向き合う命

 ただ、繁殖は死と隣り合わせでもある。昨年8月、おびひろ動物園から借り受けた雌のシロフクロウ(当時2歳)がアスペルギルス症という病気で死んだ。繁殖を目指し、雄との同居を始めたばかりだった。

 フクロウ類担当の獣医池谷優子さん(42)は「1カ月前の来園直後は元気だったのに」と振り返る。雌が死ぬ前日には、地面で休んだり、頻繁に水を飲んだりする様子を確認していたが、死を防ぐことはできなかった。「若い動物が衰弱して死んでしまうのは悔しい。動物の死に慣れることはない」

 旭山で動物と向き合う飼育員らの姿はテレビドラマや映画でも描かれたが、最近はマスコミへの露出度が減った。坂東元園長(55)は「動物園は入園者数で判断されがちだが、それは観光施設としかみられてない証拠」と指摘する。旭山は来年で開園50周年を迎える。「動物園にできることはもっとある。『ないと困る』と言われる存在になりたい」。あらためて決意を口にした。=おわり=
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/dohoku/1-0239592.html

ttp://archive.is/hV8rd
文中に鳥類に関する記載はありませんが、連載の3回目も以下に引用します。
1回目、2回目の記事へのリンクは本記事最下部へ。

<旭山動物園の挑戦 行動展示の先へ>3 地道なPR、子どもから【どうしんウェブ2016年2月29日】
神居東小での「遠隔授業」。子どもたちは真剣な表情で飼育員や教諭の話に耳を傾けた(小室泰規撮影)
 旭川市旭山動物園から約15キロ離れた市立神居東小。2月中旬、視聴覚室の大型スクリーンに、人気施設「あざらし館」の円柱型水槽を通り抜けるゴマフアザラシが映った。「あっ、通った」。歓声が上がった。

■ネット授業

 旭山と小中学校をインターネットで結び、園内の様子を紹介する「遠隔授業」。教育担当で飼育員の奥山英登さん(40)が4年生65人にアザラシやホッキョクグマなどを説明、子どもたちも動物を取り巻く環境問題を発表した。

 授業中、4年生の学級を受け持つ大和孝恵教諭(44)は「旭山動物園に来たことがある人は」と問いかけた。ほぼ全員が挙手。遠足で訪れているためだ。

 しかし、「家族と来た人は?」という質問には、10人ほどしか手を挙げなかった。「どうして来ないの」と尋ねると、1人から「お母さんが『旭山は人がたくさんいて面倒』って言ってた」との答えが返ってきた。

 「来園できない遠方の子どもに動物を見せたい」。遠隔学習はこんな狙いで2006年度に始まり、自然・環境教育の役割も担う。沖縄、札幌など地元外が対象だったが、15年度から旭川市内の小中学校でも本格的に行う。神居東小はその第1弾。「旭川の子どもにこそ旭山にもっと来てほしい」との危機感からだ。

 背景には、地元客の伸び悩みがある。旭山は08年度の入園料改定で、高校生以上の市民は580円(現在590円)に据え置く一方、市外からの入園者は800円(同820円)に引き上げた。納税者である市民の来場を増やす狙い。しかし、市民料金での入園者は08年度の4万人に対し、14年度は13%少ない3万5千人だった。年間パスポートを利用する市民は含まれないが、これを合わせても市外や海外からの客を大きく下回っているとみられる。

 「入園者が年間300万人を超えた06〜07年度の『いつも混んでいる』というイメージが根強いのでは。今は落ち着いて見られるのに」。遠隔授業担当の奥山さんは残念そうに話す。

■バス代負担

 園内3売店の運営やグッズ販売などを手がけるNPO法人「旭山動物園くらぶ」の杉本憲彦さん(46)も同じようなイメージを抱いていた。昨春から法人に勤めだしたことをきっかけに約15年ぶりに来園したところ、「動物の能力や動きを見て初めて感動した」。

 法人は10年度から、市内の小学校の授業で旭山を訪れる際に使う送迎バスのレンタル費用を負担、総額はこれまで1400万円に上る。15年度は1、2学期だけで2600人以上が送迎バスを利用した。中には「また行きたい」と保護者にせがみ、後日、「今度は家族で来たよ」と話す子どもも。杉本さんは「子どもが旭山を好きになれば、親になった後も子どもを連れて来る。それが地元客の流れにつながる」と強調する。

 旭山も、毎週土曜日に獣舎の裏側を案内、飼育員の仕事が経験できる「とことん旭山」などの体験型イベントに力を入れる。子どもだけでなく、リピーターになる市民もいるという。

 道のりは長いが、旭山の魅力を信じる人々は地道な取り組みを続けている。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/dohoku/1-0239591.html

ttp://archive.is/akMh0
<旭山動物園の挑戦 行動展示の先へ>2 言葉の壁、ITで克服へ【どうしんウェブ2016年2月27日】(ペンギン/シマフクロウ/連載既報あり)
<旭山動物園の挑戦 行動展示の先へ>1 脱「ハード」へ知恵絞る【どうしんウェブ2016年2月26日】(ペンギン/ホロホロチョウ/モモイロペリカン)

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: