2016年03月06日

(関西食百景)ここだけの話―3月5日配信【朝日新聞デジタル2016年3月5日】

小屋で飼育されているキジを捕まえる藤城けい子さん=愛媛県鬼北町、青山芳久撮影

捕まえたキジを素早く出荷用のケースに入れる藤城けい子さん=愛媛県鬼北町、青山芳久撮影

■(取材余話)コクがあるのにさっぱり味

 「鬼北熟成きじ」との出会いは昨年11月。道後温泉(松山市)の老舗旅館が考案した県産ジビエのコース料理のお披露目会を取材した。フレンチと中華の2種類があり、県内で捕獲されたイノシシやシカの肉とともに食材として使われていたのが、鬼北熟成きじだった。

 シェフによると、キジ肉はフレンチでおなじみの食材という。試食したキジ肉のロティ(ロースト)は、コクがあるのにさっぱりしていて、鶏肉とは違う風味。おいしい!

 会場にはキジの顔を模した帽子をかぶった男性がいた。鬼北きじ工房の工房長、丸石則和さん(35)だった。話を伺うと、12月から2月はちょうど出荷時期になるという。めったに食べる機会がないキジなら、珍しいので読んでもらえるかも……。早速、取材に取りかかった。

 「鬼北熟成きじ」の特徴は、ブランド名にもなっている「熟成」だ。丸石さんによると、フランス語で熟成を意味する「faisandage」はキジ「faisan」に由来しているという。熟成を経て、肉の風味を引き出すというわけだ。

 丸石さんは「同僚からは最近、私のキジ愛が(周囲にとって)重い、と言われるんです」と苦笑いしつつも、「うちの町にはキジがあるって、みんなに自慢してもらえるようになりたい。年間3万羽の産地にするのが目標です」と力を込めた。

 生産現場の取材は、生産者部会長の藤城英秋さん(65)とけい子さん(65)夫妻にお世話になった。

 出荷作業の当日。部屋の中に入ると、けい子さんに「キジが飛んできたらケースの陰に隠れるんよ」と注意された。「どうして?」と思ったが、すぐに納得。夫妻が網でキジを捕まえ始めると、他のキジが一斉に逃げ回り始めたのだ。

 大きなバタバタという羽音が小屋中に響く。取材ノートに作業の様子を書き留めていたが、キジが頭上をかすめるごとに、思わず小さな悲鳴を上げてしゃがみこんでしまった。

 そんな私をよそに、夫妻は次々とキジを捕まえる。

 餌やりなど日頃の世話は主にけい子さんが担っている。春に孵化(ふか)してから1カ月ほどは部屋の温度管理に気が抜けず、その後も成長に合わせて餌の種類を変えなければならない。「キジさんたちのお母さん代わりよ。病気にならず、ようここまで大きくなった」。出荷作業が一段落したけい子さんは、ほっとした表情を見せた。

 取材後、けい子さんお手製のキジ肉を使った炊き込みごはんと汁をいただいた。どちらもキジの骨からとっただしを使っているという。汁にはうっすら脂が浮いているが、すっきりとした味わい。肉は歯ごたえがあっておいしい。

 「キジは値段が高いっていう声もあるけど、それだけの値打ちはあると思うんよ」とけい子さん。小さな肉の一切れが、生産者らの大きな努力の結晶のように思えた。

     ◇

 鬼北熟成きじを提供している大阪市北区の居酒屋「酒や肴 よしむら」。店主の吉村康昌さん(45)は「旅行先で酒蔵を見つけたらすぐに飛び込む」というほど大の日本酒好き。10年ほど前に脱サラし、カウンター9席のこの店を開いた。

 愛媛には懇意にしている酒蔵があり、年に3回は訪れている。7年ほど前に料理雑誌で鬼北熟成きじのことを知り、鬼北きじ工房を訪問。強いうまみと香りも気に入り、使い続けている。

 常連客が必ず頼むという炭火焼きのほかにも、汁ものやもつ煮、炒め物などを提供。珍しさがうけて、注文も多いという。雄は筋肉質で弾力があるのに対し、雌は脂が多くて軟らかいという。

 きじに合わせて薦めるのは、川亀酒造(愛媛県八幡浜市)の純米酒だ。吉村さんは「キジ肉は味が濃くて日本酒によう合う。フレンチやイタリアンで使われることが多いが、和食にもいける」。

 今回の取材で、すっかりキジ肉のファンになった。このおいしさをもっと広めたい。まずは実家に、この記事が載った夕刊の紙面と、鬼北きじ工房の「きじ鍋セット」を送ってみようかな。(野村杏実)

■(撮影余話)桃太郎のお供、だけじゃない

 桃太郎のお供として知ってはいても、食材としての認識はなかったキジ。最近、このシリーズで苦手な海産物の担当が多かったため、鳥料理に飛びついた。しかし、元々はニワトリのとさかの質感が苦手で、近くに来ると、それこそ鳥肌が立ってしまうことをすっかり忘れていた。それでも、受けてしまったものは仕方ない。「キジは別」と、都合よく思いながら現地に向かった。

 舞台は、東部が高知県に接する愛媛県鬼北町。広島を自家用車で出発し、フェリー、高速とたどること約6時間。目指す飼育農家、藤城英秋さんの自宅に到着した。

 翌日が出荷作業のため、その前にキジそのものの写真を撮ろうと小屋に向かった。小屋はいくつかの部屋に仕切られ、それぞれに扉がついている。通路と各部屋は金網で仕切られ、キジを間近で撮るには中に入るしかない。ここに至って思い出した。「鳥が苦手」だと。「キジよおとなしく、かといって写真になるぐらいには動け」と矛盾はなはだしい思いを抱き、ゆっくりと足を踏み入れた。

 最初、近づくと逃げていったキジに少しだけ胸をなでおろした。しかし、一羽が動くとつられるように数羽が飛び立つ。頭の近くを飛ばれると「びくっ」と体が反応してしまう。「バタバタバタ」という音にも驚き、羽や脚が頭や体をたたく。慣れてきたのか、私が乗っている脚立までつつき始めた。びくびくしながら約2時間。やはり、鳥は苦手だ。

 出荷作業は前日にも増してキジたちの動きが活発だった。藤城夫妻が網でキジを捕らえていく。キジが逃げ惑い、羽根が舞う。もう何を、どう撮っているのか分からなくなってきた。数百羽に囲まれ、おどおど撮影。キジが捕獲され、少しずつその数が減ってくると、こっちの気分も次第に落ち着いてくる。何とも情けない。

 写真映えする雄の2部屋を撮影して無事終了。その後、藤城さんの自宅に移り、キジの炊き込みご飯と汁をいただいた。ご飯も汁もだしが利いていて、おいしくいただいた。

 そのキジを大阪で提供する店に向かった。大阪天満宮にほど近い「よしむら」。目的は「炭火焼き」。鬼北町から送られたキジをさっそく焼いてもらった。撮影自体は順調に進んだが、話がキジからそれること多々。そもそも店主の吉村康昌さんが大の日本酒好き。サラリーマン時代も各地の酒蔵を見学して回っていたという。その趣味が高じて開いたお店。キジ以外にも愛媛産がお気に入りだそうで、日本酒から果物、野菜へと話は飛んでいった。

 なぜか我々の同僚がよく通う店だということも分かった。自然と「○○さんは日本酒の連載してたね」「○○さんは最近見えない」という話になっていった。炭火焼きをつまみ、吉村さんの話を伺っていると、あっという間に3時間がたっていた。(青山芳久)

■挑戦してみては?

◆鬼北熟成きじの汁もの(レシピは「酒や肴よしむら」提供)

【材料】2人分

鬼北熟成きじ 150グラム

白ねぎ(斜め切り) 2分の1本

にんじん(半月切り) 4分の1本

しいたけ(そぎ切り) 2枚

しょうがの搾り汁 適量

粉山椒 適量

【だしの準備】

昆布だし 500cc

薄口しょうゆ 25cc

みりん 25cc

酒 25cc

【作り方】

@だしを火にかけ、沸騰したら火を弱めて一口大に切ったキジ肉を入れる。

Aキジ肉にある程度火が通ったら、切った野菜をにんじん、白ねぎ、しいたけの順に入れる。

B野菜に火が通ったらしょうがの搾り汁を数滴入れ、器に移して最後に粉山椒をふる。

◆鬼北熟成きじと野菜の炒め物(レシピは「酒や肴よしむら」提供)

【材料】2人分

鬼北熟成きじ 150グラム

小松菜(ざく切り) 2束

白ねぎ(斜め切り) 1本

じゃがいも(輪切り) 1個

しめじ(小房分け) 2分の1パック

しょうゆ 適量

太白ごま油(なければサラダ油) 適量

塩 適量

【作り方】

@フライパンに油を少量入れて強火にかける。

Aフライパンが十分熱くなったら、一口大に切って塩をふったキジ肉を両面焼く。皮目は強めに火を入れる。

Bキジ肉にある程度火が通ったら、切った野菜をじゃがいも、白ねぎ、小松菜、しめじの順に入れて強火で一気に炒める。

C野菜に火が通ったらしょうゆを少量、鍋肌から回し入れてすぐに火を止め、器に盛り付ける。
http://www.asahi.com/articles/ASJ2C61R9J2CPFIB00J.html

ttp://archive.is/ivAT7
(関西食百景)ゆっくり育って下さいな■愛媛・鬼北のキジ【朝日新聞デジタル2016年3月5日】

posted by BNJ at 21:09 | Comment(0) | 養鶏畜産ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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