2016年03月19日

タンチョウ保護、わが身に思う 平田剛士【朝日新聞デジタル2016年3月18日】

2月に開かれたタンチョウ研修会。新参の希少種を保護するためのアイデアが集まった=むかわ町
●フリーランス記者 平田剛士

 むかわ町内で先ごろ開かれた「タンチョウ研修会」(ネイチャー研究会inむかわ主催)は、「野鳥撮影好きの記者」であるわが身には、いささか居心地が悪かった。

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 約40人の参加者たちが小グループに分かれて取り組んだ討論のテーマのひとつは「カメラマン対策」。この地で野生タンチョウの保護に関わる人たちにとって、カメラマン(たぶん報道関係者も)は要注意人物扱いなのだ。

 経緯を知ればそれも無理はない。

 かいわいでタンチョウが見られるようになったのは5年前である。同研究会によると、初め2羽が飛来し、以降は毎年つがいが子育てをしている。

 タンチョウの国内営巣地は根釧地方にほぼ限られており、道央での自然繁殖の確認はこの半世紀あまりで初めてだという。同研究会は日本野鳥の会と連携し、関係自治体や地権者らに生息地保全を呼びかけるなど、慎重に保護策を探ってきた。

 そんな矢先、事故が起きる。昨年春、2羽のヒナが相前後して農業用水路に落ちて戻れなくなり、そのまま姿を消した。死んだとみられる。

 遠距離から観察中だった研究会メンバーによれば、その直前、1人の「心ないカメラマン」がツル親子に接近を図っていた。親子は逃れようとして普段の行動圏を離れ、ヒナの遭難を招いた可能性があるという。

 特別天然記念物とはいえ、法律は撮影行為まで禁じてはいない。悲劇を繰り返さないための「カメラマン対策」が急務になった。

 「見物客が殺到しないよう、最初は生息情報を広げない方針でした。でもヒナの事故を経験して、地元の私たちだけでは守り切れないと分かった。現状を正確に伝えて、大勢のみなさんに見守り役に回ってもらうしかない」と、同研究会の小山内恵子会長は話す。

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 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(鶴居村)から招かれて研修会の講師を務めた原田修・日本野鳥の会チーフレンジャーは、「タンチョウが動作を止めて見つめ返してきたら、観察者を警戒している証拠」と解説した。深追い厳禁なのはもちろん、すぐに距離を取るべきサインだ。このようなバードウォッチングの知識やエチケットを、珍鳥を見にくる不特定多数にどうすれば伝えられるか。

 自治体広報誌で啓蒙(けいもう)する。パンフレットを作って配る。有志を募ってパトロールする……。

 討論のテーブルごとにアイデアが飛び交うのを聞きながら、この人たちにもう悲しい顔をさせてはいけない、と強く思った。

 本コラムの私の担当は今回が最後です。ご愛読ありがとうございました。
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20160318011320001.html

ttp://archive.is/VR2U2

タグ:タンチョウ
posted by BNJ at 23:06 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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