2016年04月26日

チェルノブイリで「環境ルネサンス」か、事故から30年【AFPBB News2016年4月26日】(他1ソース/既報関連ソース多数/オジロワシ/コウノトリ/ツバメほか)

チェルノブイリの立ち入り禁止地域で撮影されたプシェバルスキー馬(2016年1月22日撮影)。(c)AFP/GENYA SAVILOV

【4月26日 AFP】世界で最悪の原発事故の現場が、30年近く、ほぼ見捨てられ放置されたら、何が起きるのだろうか?

 旧ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリ(Chernobyl)の事例は、人間がいなくなり放射能に汚染された巨大な自然保護区の中で、野生生物がどのように回復するかを知る格好の機会となる。

「人間が去ると、自然が戻る」。チェルノブイリのいわゆる立入禁止区域の生物学者、デニス・ビセネブスキー(Denys Vyshnevskiy)氏が、AFPの記者が同区域を訪問した際に語った。近くでは野生の馬の群れが食べ物を探していた。

 1986年4月26日に原子力発電所の原子炉の1部が爆発し、スウェーデンからギリシャにまで達する放射能の雲を放出した旧ソ連・ウクライナの北端で、何らかの生命体を受け入れることがなぜ可能なのか、不思議に思う人もいるかもしれない。

 4号炉の炉心溶融(メルトダウン)の事故対応にあたった勇敢だが防護がひどく劣悪な約30人の緊急隊員が数週間後に死亡し、幅2800平米キロの立入禁止区域が設置された。

 世界保健機関(WHO)は2005年に、放射能関連の疾病で4000人が死亡する可能性があると推定したが、環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は、この数字をひどい過小評価だと非難した。

 ビセネブスキー氏によると、立入禁止区域に現在いる動物は寿命が短く、子孫の数も少ないかもしれないが、その数と種類は1991年にソビエト連邦(Soviet Union)が崩壊するかなり前にも、見たことがないような速さで増えているという。

「ここには常に放射能があり、否定的影響を及ぼしている」とビセネブスキー氏。「だがその影響は、人間の介入がない影響ほど重大なものではない」

■環境ルネサンス?

 事故の後、住民約13万人が同地域から避難した。子どもたちに置きざりにされた砂場やブランコなどがその面影を残し、冬には雪が積もった。まるで時間の中で凍りついたかのようだ。

 地中に染み込んだ放射能によって枯れた10キロ四方の松林、地元の「赤い森(Red Forest)」の死と共に、さまざまな鳥やげっ歯類、昆虫が姿を消した。

 時が経ち、この森の木は伐採され、新しい健康な木がその場所で成長した。

 立入禁止区域は、地元住民の安全を守るため、住民が近よらないように軍の監視下に置かれた。数十年の間に数百人の年金生活者がひそかに戻ってきたが、自然界では奇妙なことがゆっくりと進行し始めていた。

 一方では、人間の作物や廃棄物に頼っていた種が消えた。コウノトリやスズメ、ハトは姿を消し、もはや、空を埋め尽くすことはなくなった。

 だがもう一方で、事故のはるか前に繁栄していた固有種が、再び姿を現した。ヘラジカ、オオカミ、クマ、オオヤマネコ、オジロワシやその他多くの種が含まれる。

 1990年には、絶滅危惧種のプシェバルスキー馬数頭を同地区に運び込み、定着できるかを調べるという、かなり大胆な実験が行われた。馬たちはやすやすと定着し、今や約100頭のプシェバルスキー馬が、荒れ放題の野原で草を食べている。

 ビセネブスキー氏は、こうした再生を「環境ルネサンス」とみているが、他の科学者たちはもっと慎重だ。

 米サウスカロライナ大学コロンビア校(University of South Carolina at Columbia)の生物学教授で、チェルノブイリや福島周辺の生物多様性について長期にわたり研究しているチームを率いるティム・ムソー(Tim Mousseau)氏が、AFPとの電話インタビューに応じた。

 同氏によると、チェルノブイリに生息している種類の多様性、動物の数および生存性は、非汚染地域の期待される値を下回り、この傾向は放射能汚染が深刻な「ホットスポット」で特に顕著だと指摘。最も影響を受けていると思われるのは蝶や鳥で、主要な染色体への影響がその原因とみられると同氏は語った。

「ある地域の周りに柵を設ければ、増殖する動物たちがいることは明らかだ。だが、目に見えるからといって、その数が本来増えるように増えているとは限らないし、通常存在するはずの生物多様性があるとも限らない」

 さらに、「概して、ほぼ全てのケースで、自然や野生の集団に対する放射能の否定的影響を示す明白な兆候がある。カッコウの鳴き声でさえ、その影響を受けている」とEメールで付け加えた。(c)AFP/Olga SHYLENKO
http://www.afpbb.com/articles/-/3085168
http://www.afpbb.com/articles/-/3085168?pid=0&page=2

事故から30年、チェルノブイリが動物の楽園に 生態系を調査、放射能よりも人間の存在が影響大【ナショナルジオグラフィック日本版2016年4月26日】
絶滅しかけていたプシバルスキーウマ(モウコノウマ)は、1998年にチェルノブイリおよび他の野生生物保護区に再導入された。人間のいない環境で、個体数は増加している。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故が起こってから、今年で30年。人類史上最悪と言われた原発事故の現場周辺に設けられた立入禁止区域は、今ではあらゆる種類の動物たちがすむ楽園となっている。(参考記事:「動物の楽園になった世界の立入禁止区域5カ所」)

 見つかるのは、ヘラジカやシカ、ビーバー、フクロウ、ほかにもこの地域には珍しいヒグマやオオヤマネコ、オオカミまで多岐にわたる。高い放射線量にも関わらず、人間による狩猟や生息地の破壊に脅かされることがないため、動物たちは数を増やしていると考えられる。(参考記事:「【動画】ヘラジカ、住宅地で迫力のガチンコ対決」)


チェルノブイリの立入禁止区域を分断するプリピャチ川。周辺にすむ数々の野生生物種にとって重要な生息地となっている。(PHOTOGRAPH BY CARA LOVE)

 現時点では、ウクライナとベラルーシにまたがる立入禁止区域内の動物たちの健康状態について、専門家たちの意見は分かれている。米ジョージア大学サバンナリバー生態学研究所の生物学者ジム・ビーズリー氏は、4月18日付「Frontiers in Ecology and the Environment」誌に論文を発表し、ベラルーシ側にすむ大型哺乳類の数が事故以降増加していると報告した。ビーズリー氏は、ナショナル ジオグラフィック協会の研究・探検委員会の支援を受けて、この地でオオカミを調査している。

 5週間の調査に入ったビーズリー氏は、現地で見かけた動物の数の多さにびっくりしたという。仕掛けていたカメラトラップ(自動撮影カメラ)には、バイソン1頭、イノシシ21頭、アナグマ9匹、ハイイロオオカミ26匹、タヌキ60匹、アカギツネ10匹の姿が捉えられていた。

【動画】30年後のチェルノブイリ
チェルノブイリ原発事故が起こってから、今年で30年。事故現場の周辺に設けられた立入禁止区域は、今ではあらゆる種類の動物たちがすむ楽園となっている。(解説は英語です。 Videographer John Wendle)
対立する専門家の意見

 ウクライナとベラルーシ両国の立入禁止区域を合わせた面積は4144平方キロ。今や欧州でも有数の野生生物生息地となっている。(参考記事:「原発事故の現場を訪ねる チェルノブイリ見学ツアー」)

 しかし、チェルノブイリで数を盛り返すことが動物にとって何を意味するのかについては、専門家たちの間で議論が分かれている。ビーズリー氏は14種の哺乳動物を調査し、「立入禁止区域内の高汚染地域で、動物たちの分布が抑制されていることを示す証拠は何も見つからなかった」としている。

 一方、反対の結果が出たと主張する研究者もいる。


立入禁止区域内に設置されたカメラトラップの前を通り過ぎるハイイロオオカミの群れ。原発周辺では人間の活動が制限されていることから、今オオカミの数が増えている。(PHOTOGRAPH BY JAMES BEASLEY AND SARAH WEBSTER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「チェルノブイリと福島のツバメは、汚染地域で24時間過ごしています。1時間当たりの被ばく線量はそれほど高くなかったとしても、それが積み重なれば1週間、1か月後にはかなりの量となり、大変な影響を及ぼすレベルに達してしまうでしょう」と語るのは、パリ第11大学のデンマーク人科学者アンダース・パぺ・モラー氏だ。

 モラー氏が生物学者ティモシー・ムソー氏と行った共同研究では、ハタネズミに高い確率で白内障が見られること、鳥の翼にいる有益な細菌の量が減少していること、ツバメに部分的なアルビニズム(色素欠乏)が発生していること、カッコウの数が減少していることなどが報告されている。ただし、深刻な突然変異が起こったのは事故直後のみである。(参考記事:「鳥に現れた異常、チェルノブイリと動物」)

 両者とも、放射能が人間にも動物にも良くないという点では意見が一致している。しかし問題は、どれほど深刻なのか、そしてそれが動物の個体数減少につながっているのかという点だ。


カフェテリアで昼食の列に並ぶ警備員たち。彼らの仕事のひとつは、立入禁止区域内での密猟を取り締まることだ。(PHOTOGRAPH BY JOHN WENDLE)
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 低レベルの電離放射線が野生生物や人間にどのような影響を与えるのか、専門家の間で議論は白熱し、特に5年前の福島原発事故以来、政治的問題にもなっている。30年という年月が過ぎたチェルノブイリは、今やその実験場ともいうべき存在となっている。(参考記事:「東北の5年間 6つの物語」)

放射能より人間の存在が悪影響

 チェルノブイリの事故で最も広範囲に拡大し、最も危険性の高かった放射性核種のひとつであるセシウム137は、今年ようやく半減期を迎える。つまり、セシウムの量は事故から30年でほぼ半減し、より短命のバリウム137mへ変化したということだ。
動物たちは、食物を介して放射性物質を体内へ取り込む。

「ハタネズミの好物であるキノコは、放射性物質を濃縮させてしまいます。汚染されたキノコを食べると、ハタネズミの体内に高濃度の放射性物質がたまり、そのネズミを食べたオオカミが今度は汚染を体内に取り込んでしまいます」と、現地で働くハタネズミの研究者オレナ・ブード氏は説明する。

【動画】サンドイッチを作るチェルノブイリのキツネ 2015年4月30日
ウクライナのチェルノブイリ原発周辺の立入禁止区域で、ジャーナリストが投げ与えたパンと肉を上手に重ねてサンドイッチを作るキツネ。(Video courtesy Radio Free Europe/Radio Liberty)
 しかし、動物の汚染レベルは生息地の汚染濃度、食べ物、そして動物の行動によって変わってくる。チェルノブイリからの放射性降下物は遠く離れたノルウェーのトナカイからも検出されたが、原発近くの立入禁止区域内でも、その量にはばらつきがあるのだ。

 動物の中でもとりわけオオカミは、汚染をある程度免れている可能性がある。オオカミは行動範囲が広く、常に移動し、立入禁止区域の外まで出て行くこともあるからだ。

 ビーズリー氏は、「こうした多くの動物たちにとって、たとえ放射能の影響があったとしても、それは種の存続を妨げるほど個体数を抑制するものではないのだと思います。人間がいなくなったことが、放射能による潜在的影響を相殺してはるかにあまりある効果をもたらしているのでしょう」と指摘する。

 要するに、人間の存在の方が、放射能よりも動物たちには悪影響だということだ。


ソビエト時代の排水路に横たわるカバノキは、ビーバーが倒したもの。(PHOTOGRAPH BY JOHN WENDLE)
[画像のクリックで拡大表示]
 事故直後、チェルノブイリに関係する物理学者、作業員、科学者のために建てられた街スラブティチで研究を続けるセルゲイ・ガスチャク氏も強く同意している。立入禁止区域で30年間働いてきたガスチャク氏は、野生生物が「劇的」に増加したと証言する。

 ビーズリー氏は、この場所が放射能汚染によって「荒廃した」とまではいかなくとも、プルトニウムがこの先数百年から数千年間残存するということも分かっている。しかし、人間不在の環境で、動物たちがのびのびと暮らしていることを、彼の論文は示している。

「暫定的な推定分布の数字を見る限り、チェルノブイリでのオオカミの分布密度は、イエローストーン国立公園と比べてもはるかに高いことが分かります」


チェルノブイリ立入禁止区域内プリピャチ川近くの線路で食べ物を探す若いキツネ。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

チェルノブイリ原発事故直後、住民たちは取るものもとりあえず避難していった。それ以来誰も住むことのない家には、草木が鬱蒼と生い茂っている。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=John Wendle/訳=ルーバー荒井ハンナ

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/042100148/

ttp://archive.is/BHWdL
ttp://archive.is/TJUtU
ttp://archive.is/EREY7
ブログ:原発事故から30年、野生動物が戻るチェルノブイリ【ロイター2016年4月8日】(オジロワシ)
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動物の楽園になった世界の立入禁止区域5カ所 世界に点在する立ち入りが禁止された地域を野生動物が謳歌する【ナショナルジオグラフィック日本版2015年10月15日】(38度線/タンチョウ/マナヅル)
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posted by BNJ at 11:43 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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