2016年05月18日

社説 ライチョウ 大町の経験に期待する【信濃毎日新聞2016年5月18日】

 大町市立大町山岳博物館でニホンライチョウの飼育が始まる。

 大町山博は国内で唯一、低地で飼育した実績を持つ。経験を生かし他の施設と協力して、絶滅から救う道を見つけ出してもらいたい。

 環境省が2014年度から始めた保護事業の一環だ。昨年度は北アルプス乗鞍岳で卵10個を採取、上野動物園(東京)と富山市ファミリーパークに5個ずつ運んで人工飼育を試みた。

 上野では全てがふ化したものの、成鳥になる前に死んでいる。富山では5個のうち4個がふ化、その後1羽が死んだ。3羽は順調に育っているがいずれも雄で、繁殖は不可能な状況にある。

 大町山博は1963年に低地飼育を開始、自然繁殖にも成功して5世代目まで誕生させた。2004年に最後の雄1羽が死んで以降は飼育が途絶えて今に至っている。感染症を克服する方法が見つからなかった。

 上野と富山で死んだ原因もはっきりしていない。分からないことだらけの中での取り組みだ。

 生息域は北ア、火打山など長野県とその周辺に限られる。数は2000羽を下回ったとみられている。1980年代の推定3000羽から急減した。

 減った原因には、▽キツネなどの天敵が増えた▽えさの高山植物がニホンジカなどの食害を受けている―ことなどが挙げられている。昨年はニホンザルがひなを捕食していることが専門家によって確認された。いずれも簡単には解決できない問題だ。

 人工飼育の方法が確立できれば、ライチョウを種として維持することは最低限できる。大町山博と上野、富山の施設には頑張ってもらいたい。

 鳥の世界を見渡すと、絶滅の危機をどうにか抜け出しつつあるケースもある。アホウドリは伊豆諸島の鳥島で保護対策を進めた結果、3000羽以上にまで回復してきた。砂防工事で生息地の環境を守る、デコイ(鳥の模型)を使って新しい繁殖地に誘導する―といったやり方だ。

 佐渡のトキは最後の1羽が死んだ後、中国から成鳥を譲り受け、人工飼育で増やして放鳥を続けてきた。島の生息数は約150羽にまで増えた。4月には野生のペアからひなが誕生したことが初めて確認されている。ライチョウでも希望を持ちたい。

 地球上で命をつないできた仲間である。やれることを一つずつ、着実に重ねていこう。

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160518/KT160517ETI090003000.php

ttp://archive.is/r9DaG
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