2016年05月31日

世界遺産へ やんばる守れ【読売新聞2016年5月31日】(ノグチゲラ/ヤンバルクイナ)

ヤンバルクイナ(いずれも4日、沖縄県国頭村で、栗山紘尚撮影)

 2018年の「奄美・琉球」地域の世界自然遺産登録を目指し、環境省は今夏、沖縄本島北部のやんばる地域を「やんばる国立公園(仮称)」に指定する。太古の昔に大陸や日本列島から分離し、独自の生態系へと進化した島々を一体ととらえ、「ヤンバルクイナ」に代表される貴重な自然を守る仕組みを整えるのが狙いだ。

◆生き物の宝庫

 5月初旬。那覇市から車で走ること約2時間。沖縄県国頭くにがみ村にブロッコリーのような形をした常緑の広葉樹イタジイが生い茂っていた。

 観光施設「やんばる学びの森」から登山道を歩いていくと、メジロやウグイスなど小鳥のさえずりが聞こえる。「飛べない鳥として有名なヤンバルクイナは木の上で眠るんです。少しでも安全な場所に身を潜めるためなんですよ」。ガイドの松川隆行さん(65)(沖縄県大宜味おおぎみ村)が語りかけた。

 突然、キツツキの仲間の絶滅危惧種「ノグチゲラ」が林の中から飛び立つと、ツアー客の間から歓声が上がった。家族3人で訪れた東京都小平市の会社員(44)は「珍しい生き物を見られて良かった。もっと森の奥まで入りたかったが、こんなに豊かな自然はできるだけ人の手を加えずに残すべきだ」と話した。

 やんばるは「山原」と書き、「山々が連なり森の広がるところ」を意味する。国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、日本にいる鳥類の約半分の約150種が確認されている。河口部にはマングローブの林も広がり、様々な生き物が暮らせる環境が整っている。

 ツアーを企画している地元のNPO法人「国頭ツーリズム協会」は「世界遺産登録に向けて注目度が上がり、観光客も増加傾向にある。やんばるにしかいない生き物を多くの人に見に来てほしい」と語る。

◆候補地選定が難航

 「奄美・琉球」は遅くとも約200万年前〜170万年前には、日本列島側と大陸側の双方から分離したとされる。国の検討会は2003年、独自の生態系という点で一つのまとまりをなしていることに着目。その後、「南北約850キロに点在する島々とその周辺海域」を範囲とする「奄美・琉球」を自然遺産候補に選んだ。

 しかし、13年2月、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)に書類を提出したところ、「対象範囲が広すぎる」として暫定リストへの記載を保留された。

 このため、環境省などは絶滅危惧種や固有種の多さ、森林の保全状況などを重視して再検討。アマミノクロウサギが生息する奄美大島と徳之島、ヤンバルクイナが生息する沖縄本島北部やんばる地域、イリオモテヤマネコで知られる西表島いりおもてじまの4島に絞った。他の島々に比べて顕著な独自性がみられた。石垣島などは森林の保全状況などから除外された。

◆観光客の協力不可欠

 今回、国内33番目の国立公園となるのは、国頭、大宜味、東ひがしの3村にまたがる陸域約1万3600ヘクタールと、海域約3700ヘクタール。指定されれば、建築や伐採などの際に国の事前許可が必要で、開発などが制限される。

 環境省はこれまで、ヤンバルクイナの天敵・マングースを捕獲し、希少な動植物の密猟・持ち帰りを防ぐパトロールをしてきた。国立公園化を機に対策を強化するだけでなく、「適切な利用で国内外に価値を認めてもらうことが重要」とし、エコツーリズムにも力を入れる。既存のキャンプ場などを活用して観光客を呼び込み、登山道などの整備も進める予定だ。

 同省やんばる自然保護官事務所(国頭村)の木村麻里子・上席自然保護官は「希少な動植物を守るためには、観光客の協力が不可欠。登録に向け、日本が世界に誇る自然だという理解を深めてほしい」と意気込んでいる。

「奄美・琉球」登録4島で足並み重要

 「奄美・琉球」の世界遺産登録には、将来にわたって必要な保護措置を取ることが必要だ。今後、対象の奄美大島、徳之島、沖縄本島北部やんばる地域、西表島の4島で足並みをそろえられるかがポイントとなる。

 政府は9月、ユネスコの世界遺産委員会に推薦書の暫定版を、来年2月には正式版をそれぞれ提出する予定だ。その後、ユネスコの諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)の視察を受ける必要がある。

 4島のうち西表島は今年4月、国立公園が拡張され、島全域が対象になった。奄美群島に属する奄美大島、徳之島などの主要な景勝地は県管理の国定公園で、指定域は海岸線沿いを中心に7861ヘクタールに上る。計画ではこの国定公園を解除し、内陸部の森林地帯を中心に国立公園にし、伐採などの規制をかける考えだ。だが、奄美大島で地権者との交渉が難航。林業などの支障になりかねず、どの区域にするかといった調整などが続いているという。登録の前段となる国立公園化が進まず、目標としていた14年1月の暫定リスト入りは大幅に遅れている。

 【世界自然遺産】 人類共通の遺産として普遍的な価値を有する自然を保存するため、ユネスコの世界遺産委員会が登録する。昨年3月時点で197件あり、日本では屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)の4件が認められている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20160601-OYS1T50061.html

ttp://archive.is/pTn19

posted by BNJ at 23:44 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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