2016年06月18日

(関西食百景)交配実り ええとこドリ【朝日新聞デジタル2016年6月18日】(大和肉鶏)

暗い鶏舎の中、ほのかに光る電球に、大和肉鶏の羽が黄金色に照らし出される=奈良市阪原町

蒸す、揚げる、焼く、炊く。大和肉鶏はいろいろな料理に姿を変える=奈良県天理市

■奈良の大和肉鶏

 剣豪の里として知られる奈良・柳生は、山間の狭い盆地にのどかな田園風景が広がる。

 山のほとりの飼育小屋に入ると、鶏が一斉にこちらを向いた。出荷間近の大和肉鶏だ。名古屋コーチンと外来種にシャモをかけあわせた種。シャモの血筋ゆえに気性が荒い。互いに目が合い興奮せぬよう、小屋の中は薄暗い。鶏を小屋から出すのは、しめる直前だけだ。

 「ストレスをかけないことで、脂がのって味が濃い鶏肉を生むんです」。養鶏場「雅 chick farm(みやびチックファーム)」を営む中家雅人さん(36)は鶏を驚かさないよう小声で話した。

 朝昼晩、羽やふんの色を丁寧に見て回る。小屋の床には殺菌効果があるとされるヒノキの粉をまく。ブランド鶏の質を保つためトウモロコシや米などの指定飼料を使うルールだが、付け足すのは工夫のしどころだ。整腸作用のある菌を発酵させた飼料を混ぜるのが中家流。食欲が増し、健康な鶏に育つという。

 裏山にはシカやイノシシが姿を見せる。「静かで空気がきれい。鶏の成長にちょうどいい」。135日ほど育てると、コーチンのうまみとシャモの歯ごたえの「ええとこどり」の味が生まれる。

 成長したオスを小屋から出してもらった。バサッ。広げた茶褐色の羽が鮮やかに輝いた。

■うまみ・歯ごたえ 地鶏ブームの先駆け

 大和肉鶏は「朝びき」が一番。料理人はそう口をそろえる。店に出す夕方、半日の熟成を経てうまみがのってくる。

 午前5時、「雅 chick farm(みやびチックファーム)」の中家雅人さん(36)が、育てた鶏をしめ始めた。ナイフで血抜き後、湯に浸してから毛を抜き氷水へ。養鶏家自らしめるのは珍しい。「愛情込めて育てた鶏やから責任もって送り出したいんです」

 電機メーカーの工場で15人を束ねる基板製造の責任者だった。8年働いた33歳の時、奈良県の農業支援事業を知り、養鶏の門をたたいた。昔からいつか農業を、と考えていた。

 ログイン前の続き養鶏場を渡り歩いて修業すること2年。最後の修業先の高齢オーナーの引退を機に4千平方メートルある養鶏場を引き継いだ。今、弟の智さん(30)と2人で約7千羽を飼育する。

     ◇

 戦前、奈良の鶏は「大和かしわ」と言われ愛知、徳島と並ぶ産地だった。だが戦後、安価なブロイラーに押され姿を消す。

 40年ほど前、県畜産試験場(現・県畜産技術センター)の研究員らが、鶏の水炊きをつつきながら「ブロイラーはコクが足りん」と話すのを、研究員だった甲斐(かい)博文さん(76)は意気に感じた。「新たな『大和かしわ』を作ったらええ」

 全国から肉鶏を取り寄せ、かけ合わせては食べた。かけ合わせて新種を作る試みは当時珍しかったが、「鶏が心底好きだったから続けられた」。1982年、自慢の鶏が誕生。うまみ成分のグルタミン酸はブロイラーの1・5倍。試験場内で名前を募集し、大和肉鶏と名付けた。

 新種の地鶏は珍しかった時代。少しずつ知名度は上がり、地鶏ブームの先駆けとなった。

     ◇

 大和肉鶏は100グラム500円ほどと高価だが、味にほれ込む料理店は多い。奈良県天理市の居酒屋「すぎ乃」は、中家さんの朝びき鶏を扱う。店長の木村浩章さん(41)は「鶏が苦手な人もうまいと言ってくれる」。

 ササミ、むね、もも。包丁を入れると、つやのある紅色の断面が現れた。「細かいすじが見えるでしょう」。歯ごたえを生む筋繊維がびっしり。

 食感を味わうには、ももの薫製がいいという。いぶすこと10分。一口かむ。スモークの香りが鼻に抜け、かむほどうまみが広がる。ほのかな甘さに、鶏に注がれた人々の愛情を感じた。(文・石倉徹也 写真・遠藤真梨)

     ◇

 「地鶏」を名乗ることができるのは特定JAS(日本農林規格)で定めた要件を満たす種に限られる。名古屋コーチン、比内鶏などの在来種(38種)の血が50%以上で、80日以上飼育し、1平方メートルあたり10羽以下にとどめ、地面を自由に動ける飼育環境が必要だ。全国に60種以上いるが、年間出荷数は約800万羽と肉用鶏の1%ほど。

 大和肉鶏は6軒の養鶏家が飼育し、年8万羽前後出荷する。名古屋コーチンのオスと外来種(ニューハンプシャー)のメスを交配させて生まれたメスに、シャモのオスをかけあわせたもの。大和肉鶏同士を交配させても「先祖返り」するため、奈良県畜産技術センターが3種を飼育し、孵化(ふか)場に供給し続ける。この外来種は国内でセンターが唯一保存する種で、石田充亮・研究開発第一課長(56)は「病気にならないよう清潔な環境を維持しています」。

■百店まんてん(焼鳥YAMATO北新地)

 その日しめた大和肉鶏を味わえる焼き鳥店。コースは1人5千円と7千円。水炊きなどのメニューも。JR東西線北新地駅から徒歩4分。午前11時半〜午後1時、午後5時半〜11時半。ランチは平日のみ。日・月祝日休み。大阪市北区堂島1の3の16。電話06・6347・1194

■訪ねる

 ◆一刀石(いっとうせき) 真っ二つに割れた7メートル四方の巨石。柳生新陰流の祖、柳生石舟斎宗厳(むねよし)が修行中、天狗(てんぐ)を切り捨てたら巨石だったと伝わる。

 ◆柳生花しょうぶ園 1万平方メートルに約450種80万本のハナショウブが植えられている。午前9時〜午後5時、7月3日まで開園。大人650円。電話0742・94・0858
http://www.asahi.com/articles/ASJ667DC7J66PLBJ00P.html

http://archive.is/DF3Jt
(関西食百景)ここだけの話―6月18日配信【朝日新聞デジタル2016年6月18日】

posted by BNJ at 23:20 | Comment(0) | 養鶏畜産ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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