2016年06月21日

聟島でアホウドリ繁殖支え 巣立ち見届けず4年前他界の獣医師・渡辺さん【東京新聞2016年6月21日】(既報関連ソースあり)

ヘリで運んできたアホウドリのひなを放す渡辺さん=2008年2月、聟島で(山階鳥類研究所提供)

 国の特別天然記念物で絶滅危惧種のアホウドリ。先月、小笠原諸島(東京都)の聟島(むこじま)で生まれたひなが初めて巣立ったが、島の繁殖地づくりに尽力し、志半ばで病死した獣医師の女性がいる。山階(やましな)鳥類研究所(千葉県我孫子市)の協力調査員だった故渡辺ユキさん=二〇一二年に五十三歳で死去=だ。ともに保全に取り組んだ研究員らは「きっと巣立ちを喜んでいてくれるだろう」と思いをはせている。 (三輪喜人)
 渡辺さんは、阿寒(あかん)国際ツルセンター(北海道釧路市)に約六年間勤務し、タンチョウやシマフクロウの保護に携わった。その経験を生かし、アホウドリの繁殖に取り組んだ。「野鳥に対応できる獣医師は少ない。アドバイスは的確で、貴重な存在だった」。山階鳥類研究所の佐藤文男さん(63)は振り返る。
 乱獲により激減したアホウドリの繁殖地は現在、伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島に限られる。渡辺さんが鳥島でアホウドリの保護に関わり始めたのは一九九九年三月。「一羽のひなも死なせたくない」という強い思いを、佐藤さんは目の当たりにした。
 ひなは、崖下約百メートルにある巣から落ちることがたびたびあった。そのままでは死んでしまう。渡辺さんはキャンプから片道二時間かけて現場に通い、ひなを巣に戻す作業を繰り返した。
5月、聟島を巣立ったアホウドリのひな(中央)(山階鳥類研究所提供)
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 鳥島は火山噴火の恐れがあるため、東京都や環境省などは約三百五十キロ南東の聟島に別の繁殖地づくりを計画する。五年間でひな七十羽を移住させる繁殖地づくりが、〇八年二月に始まった。
 渡辺さんは、ひなを運ぶための木箱を佐藤さんらと共同で開発。ひながくちばしをけがしないよう、箱の内側にスポンジを張り、箱の温度調整をするため、開閉できる通気孔も作った。「常にひなの視点で、快適に過ごせるかを考えていた」(佐藤さん)
 最初の十羽の移送には直接関わった。聟島での研究責任者、出口智広さん(42)によると、ひなは神経質で餌をすぐ吐いてしまい、骨格が柔らかいため、下手に触ると骨折してしまう。
 渡辺さんは、スルメイカやトビウオを消化しやすいようミンチにして、生クリーム絞り器で注入する方法を研究員らと考案。研究所の広報誌で「皆で検討した方法で、十羽とも健康な状態で運ぶことができ、責任を果たせてたいへんほっとしています」と控えめに振り返っている。
 ひなたちは無事に成長し、三年後に聟島に帰ってきた。最初に戻った雄は、尖閣諸島から来たとみられる雌とペアになり、今年一月、島で初めてのひなが誕生。五月に巣立った。
 しかし、渡辺さんは一二年四月に病気で亡くなり、最後まで見届けることはかなわなかった。
 「自分よりもアホウドリが大事という人で、わが子のように接していた」と出口さん。「今回の繁殖成功を一番喜んだと思う。渡辺さんに見せてあげたかった」とその死を惜しんだ。
<アホウドリ> ミズナギドリ目アホウドリ科。北太平洋に生息する日本最大級の海鳥で、翼を広げると2.2メートルにもなる。明治時代に羽毛を取るため乱獲された。小笠原諸島は戦前まで数万羽が生息する大繁殖地だったが、一時は絶滅したと考えられたほど激減した。1962年に特別天然記念物に指定。保全活動で少しずつ増え、山階鳥類研究所によると、現在は伊豆諸島の鳥島で約4000羽まで回復したと推定される。人間に対する警戒心が薄く、育った土地に帰ってくる傾向が強い。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201606/CK2016062102000267.html

http://archive.is/wUKmK
アホウドリ 新繁殖地 ひな初の巣立ち【毎日新聞2016年5月24日】
アホウドリひな聟島で初の巣立ち 新繁殖地計画の小笠原【共同通信2016年5月23日】

posted by BNJ at 23:29 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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