2016年07月20日

育てて、食べて…魅力的な豪州農場 「持続可能」を実践【朝日新聞デジタル2016年7月20日】

小さなタコとピーカンナッツ、ウイキョウ、スイカなどを使った一皿。おいしかった

 最近、オーストラリア総選挙の話ばかり書いていることに気がついた。そう、7月2日に投票されて今も集計作業が続いている、あの「上下両院総選挙」だ。知らないうちに「結果が出るまでなんとか話をつなげなければ」と使命感に燃えていたのかもしれない。

 でも、もう、やめた。いつまでたっても、結果が出ないのだ。8日後に実施された日本の参院選にも追い抜かれた。19日には新内閣も発足した。当然だが、上院選でまだ勝敗が決まっていない前職の大臣は外された。それでもまだ、オーストラリア選挙委員会は票を数え続けている。

特集:南十字星の下で
 史上まれにみる接戦だったから、選挙制度が違うから、という言い訳はわかる。でも、そもそも2カ月半も政権が「暫定」扱いでも大丈夫だったなんて、びっくりだ。実は、国際会合に首相や大臣が出席できなかったといった「実害」もあるのだが、だれも指摘しない。

 そういうわけで、今回は選挙から離れた話を書く。といっても、下院選の激戦区だったニューサウスウェールズ(NSW)州北東部の選挙区へ行った機会に合わせて取材したのだが。

 NSW州北部の海岸に、サーファーやバックパッカーたちにとって楽園のようなバイロン・ベイというところがある。ここに1年ほど前、32ヘクタールの広々とした「ザ・ファーム」という新名所ができた。40代の夫婦が2人で始め、今では年間60万人の客が押し寄せる人気だという。訪ねたのは平日の昼間だったが、大変なにぎわいだった。

 「ザ・ファーム」を簡単に説明すると、畑や家畜などが見学でき、レストランで食事もできる農場ということになる。コンセプトは、「育てて、食べて、教育する」。環境保護などの倫理的価値と商売は両立するという、「サステナビリティー(持続可能)」の考え方を掲げている。

 いわゆる「こだわりの農家によるオーガニックな野菜や肉が食べられるところか」と思うが、実際に行ってみると、混み具合は予想を超えていた。ジェットコースターもお化け屋敷も、アウトレットショップもない。何がそれほど魅力なのか、オペレーション・マネジャーのジョンソン・ハンターさんに案内してもらった。

 ログイン前の続きまず足を向けたのは、スコティッシュ・ハイランド種という牛がいる牧場だった。これまでオーストラリアでは見たことがない、長毛で闘牛のような角がある牛が30頭ほど、数百メートル離れた場所で草を食べていた。

 遠くから眺めていたら、ハンターさんが突然、「ホーイ」とも「ヒュー」とも表現できない不思議な声を発した。すると、驚いたことに、牛が地響きを立てながら一斉にこちらへ向かって走ってくるではないか。大きな2本の角があるので怖くなったが、牛たちはハンターさんの前でぴたりと止まった。「僕は牛語が話せるのさ」と涼しい顔だ。

 次に、豚の飼育場へ行った。ちょうど子豚が生まれたばかりで、ちょこちょこ歩く様子が子供たちにも大人気だった。近くの草地には鶏がいて、ハンターさんは「正真正銘のフリーレンジ(放し飼い)です」と胸を張った。確かに、ここの鶏はのびのびと走り回っているから間違いない。

 オーストラリアでは、「1ヘクタールあたり1500羽以下」という大まかな基準で放し飼いにした鶏の卵を「フリーレンジエッグ」と呼び、狭い養鶏場の「ケージエッグ」と区別している。フリーレンジの方が当然値段は高いが、オーストラリアでは人気が高い。ところが、法的な定義がないために、最近は怪しげなフリーレンジもあると問題になっている。

 ほかにもブロッコリーの畑や花、野菜やチーズなどの即売所を見学し、最後にレストラン「スリー・ブルー・ダックス」へ向かった。メニューに派手さはないが、野菜や肉、タコなどを注文すると、どれもびっくりするほど味が濃く、おいしい。前菜が1500円前後、メインディッシュで3千円程度だった。

 農場をあとにし、下院選候補者のインタビューに向かう途中で考えた。ザ・ファームには、「作り込まれた感」がない良さがあるのではないか。子豚はかわいいけれど臭いし、野菜畑には虫がいっぱいいる。でもその分、リアルだ。

 シドニーで外食するよりは手頃なものの、おいしい食事はそれなりの値段だった。だが、ハンターさんや若手生産者たちの「金持ちが道楽でやっているのではない。僕たちは、続けたいのだ」という、強い思いが伝わってきた。採算が上がらなければ、「持続可能」を掲げても意味がない。

 そして何よりも、農場でじかに見た彼らの「ひたむきさ」は、とても新鮮に感じた。この数カ月間、ずっと総選挙の取材に追い立てられていたせいかもしれない。激戦区の候補者たちも確かにそれぞれの政党の公約を主張し、アピールするのに必死だった。でも、それとは明らかに違う。

 なぜだろう。その説明には、やはり、「持続可能」が重要な意味を持つような気がする。(郷富佐子@ザ・ファーム)
http://www.asahi.com/articles/ASJ773D37J77UHBI00N.html

http://archive.is/iUZwj

posted by BNJ at 23:59 | Comment(0) | 養鶏畜産ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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