2016年07月26日

フラミンゴの餌を奪うEV充電池 チリ北部のアタカマ塩原周辺で懸念【SankeiBiz2016年7月26日】

アタカマ塩原のチャクサ湖でエサを食べるフラミンゴ。周辺の生態系が脅かされている可能性が指摘されている(ブルームバーグ)【拡大】

 テスラ・モーターズやゼネラル・モーターズのシボレーは、2017年にマスマーケット向けの電気自動車(EV)を発売する準備を進めている。しかしチリ北部のアタカマ塩原周辺の住民は、このような自動車を1台買って地球環境の保護に貢献しようと考える人たちに、フラミンゴのことを頭の片隅に置いてほしいと訴えている。

 ◆リチウム採取で取水

 テスラやシボレーの自動車の充電池には、世界で最も乾燥した砂漠であるアタカマ塩原で採取されるリチウムが含まれる。しかしこの塩原は野生のフラミンゴの生息地としても知られており、一部の地元住民は、リチウム採取のための水のくみ上げが原因でフラミンゴが餌不足に陥っていると指摘する。

 オブ・サンペドロ・デ・アタカマ自然主義協会の代表で、チリ国立人権研究所のメンバーである生化学者のロランド・ウミレ・コカ氏は「彼らはとんでもない量の水をくみ上げる。もし現在の取水方法を続ければ悲惨な結果になる。あらゆる生物が死に絶えるだろう」と述べている。

 衛星画像によると、塩原にある干潟や平原の一部が縮小したり完全に干上がったりしている可能性がある。また、チリ森林委員会はフラミンゴの生息数の減少を報告している。

 今年、チリ全体の水資源の減少を調査するための議会委員会が設置されたが、今のところリチウム採取との因果関係は見つかっていない。フラミンゴの運命に関する注意喚起は地元コミュニティーの努力に頼っている状態だ。

 保護活動家らは昔ながらの生活が消えつつあることを踏まえて、議会委員会に対し、水資源に与える影響の調査を徹底することを求めている。一方、リチウムを採取する業者によると、独自の監視システムで確認した結果、影響はない、あるいは軽微なレベルだとしている。

 ただ、業者が猛烈な勢いで操業していることに疑いの余地はない。ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)は鹹水(かんすい)を毎秒1500リットルくみ上げる。アルベマール傘下のロックウッド・ホールディングスは毎秒142リットルをくみ上げており、近く同442リットルに増やそうとしている。両社は顧客を開示せず、テスラやシボレーにリチウムを納入しているかどうかは不明だ。

 ロックウッドとSQMによると、アタカマ塩原周辺の少なくとも9カ所の干潟の水位を監視しており、持続的な水位低下は観測されていない。これとは別の森林委員会のデータによると、明確な水位の変化が見られない湖が5カ所、わずかな減少が見られる湖が1カ所である。

 ロックウッドとSQMはエリア一帯に合わせて300以上の測定場所を設け、水位、塩類含有量、植物相と動物相を観測。両社ともに早期警戒システムが作動したことはないとしている。SQMは「わが社の事業は直接的にも間接的にも、フラミンゴの生息数のいかなる面にも影響を与えていない」と述べた。ロックウッドも、フラミンゴの生息数に影響を与えているとの見方を否定。同社は売上高の3%を地元コミュニティーに還元する協定を結んでおり、これが現地環境の観測に貢献する見込みである点を強調した。

 しかし、アタカマ塩原におけるロックウッドの事業拡大計画について環境影響調査を実施したSGAは、SQMのポンプの設置場所や、その一つ一つの取水量が公表されていないことを理由に、環境に与える影響を推計することは困難だとしている。

 アタカマの塩原には、アンデス山脈から流れ込む水に含まれるリチウムが何千年もかけて蓄積している。業者は鹹水をくみ上げてプールに移し、18カ月かけて蒸発させてリチウムを取り出す。ウミレ・コカ氏は「塩原は複雑なパイプ構造のようなもので、一方から水を取れば、もう一方にも影響がある。15年前にはセハル湖でフラミンゴに囲まれながら泳いだものだが、今では1羽でも見られたら幸運だ」と指摘した。

 フラミンゴは食料と温暖な気候を求めて6月になるとこの地域に飛来する。しかし最近の取材でセハル湖で見られたのは、警備員に手渡されたパンフレットに載った写真のフラミンゴだけだった。数キロメートル南にある、セハル湖より大きいテベンキチェ湖では5羽見ることができた。セハル湖とテベンキチェ湖はどちらもロックウッドやSQMの観測対象外である。

 森林委員会によると、2010〜14年の5年間のアタカマ塩原のフラミンゴの平均数は、1995〜99年と比べて28%減少した。この地域でよく見られる3種類のフラミンゴのうち、アンデスフラミンゴは「絶滅危惧II類」、チリーフラミンゴとコバシフラミンゴは「準絶滅危惧種」に指定されている。

 ウミレ・コカ氏によると、テベンキチェ湖で近年フラミンゴが激減したのは、塩分濃度が低くなった影響かもしれない。フラミンゴの餌は甲殻類であり、甲殻類が生息するには塩水が必要だが、鹹水のくみ上げによって塩分濃度が下がっているのだ。

 同地域に住むマヌエル・サルバティエラ氏によると、アタカマ塩原の干潟や平原は、採掘業者が操業を開始し山地の降雨量が減り始めた1980年末から変化し始めた。「かつては1つの干潟に40羽のフラミンゴが見られたものだ。今あるのは違う風景だ」と述べた。(ブルームバーグ Laura Millan Lombrana)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160726/mcb1607260500019-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160726/mcb1607260500019-n2.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160726/mcb1607260500019-n3.htm

http://archive.is/A1sUs
http://archive.is/2pCNK
http://archive.is/oUYa1

posted by BNJ at 22:03 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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