2016年08月30日

(eco活プラス)鳥の休息地、なつみずたんぼ 畑を「湿地」に、連作障害も防止【朝日新聞デジタル2016年8月30日】

水田の隣に広がるなつみずたんぼを泳ぐシギの群れ=13日、栃木県

 夏から秋にかけて、麦などを収穫した後の畑に水を張る「なつみずたんぼ」が注目を集めている。連作障害や雑草の防止に役立つと同時に、減り続ける沼などに代わる「代替湿地」として、シギやチドリなど渡り鳥の貴重な休息地にもなっている。

 8月中旬、自然保護団体オリザネットの斉藤光明さんと古谷愛子さんの案内で、なつみずたんぼが盛んな埼玉県、栃木県の農村地帯に出かけた。青々としたイネに覆われた水田の所々に、静かな水面が広がる。コチドリやサギがエサをついばみ、アオアシシギの群れとタカブシギが羽を休めていた。

 「麦の連作障害を防ぐために夏の水張りを始めたけれど、雑草も防げる。そうしたら、鳥がたくさん来ていると言われてね」。2000年ごろからなつみずたんぼを始めた埼玉県の農家、横井貞夫さんは話す。

 なつみずたんぼは、冬の水田に水を張ってハクチョウなど水鳥の生息地をつくる「ふゆみずたんぼ」になぞらえた呼び名。オリザネットによると、埼玉、栃木、山形などで広がっている。「数が減る内陸性のシギやチドリの姿もよく見かける」という。

 もともとは、低農薬や環境負荷の少ない農業をめざす農家が自主的に取り組んでいたが、ふゆみずたんぼと似たような効果がみられるとしてオリザネットなどが注目。農家にも関心が高まった。環境省や農林水産省も推奨。栃木県小山市では独自の助成制度を設け、昨年は主にビール麦や小麦の畑約42ヘクタールに水が張られた。

 北極圏と南半球を往復するシギやチドリが、水生生物を食べに日本周辺に降り立つのは主に春と秋。だが、全国の湿地面積は1999年時点で820平方キロで、明治・大正時代の4割。琵琶湖の約2倍が消えた。

 春は田植え前後のたんぼが代替湿地になるが、秋にはなかった。NPO法人バードリサーチの守屋年史さんによると、シギやチドリの中でも、淡水湿地を好むオグロシギやタカブシギ、ツルシギなどの種が00年までに大きく減ったという。「なつみずたんぼは内陸部の貴重な代替湿地になっている」と話す。

 なつみずたんぼが普及するにつれ、その豊かさも徐々に広く知られるようになった。生き物調査を毎年行う小学校や子ども会、なつみずたんぼでとれた麦茶や菜種油のブランド化をめざす農家もでてきた。

 一方、珍しいシギやチドリを目当てにしたバードウォッチャーが特定のなつみずたんぼに多く集まり、農家に迷惑をかけるケースもある。鳥の生態に詳しい慶応大の樋口広芳特任教授は「世界的に数を減らす鳥を守り、自然と農業が共存するためにも、なつみずたんぼは大事。マナーに気をつけて欲しい」と話す。(竹石涼子)

 <eco活の鍵>

 シギやチドリは絶滅危惧種も多く、バードウォッチャーに人気だ。なつみずたんぼの中にはあぜ道にずらりとカメラが並ぶような人気スポットもある。だが、農地の多くは私有地。1月に都内で開かれたなつみずたんぼのシンポジウムでは、ウォッチャーらが私有地に入り込んだり、あぜ道に止めた車が農作業を妨げたりする例が報告された。場所が特定されると人が殺到してトラブルになる可能性もある。写真や情報をネットなどで公開するときにも配慮が必要だ。業を煮やした農家がなつみずたんぼをやめれば、結果的に鳥は休息地を失ってしまう。

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 eco活(エコカツ)プラス
http://www.asahi.com/articles/DA3S12535609.html

http://archive.is/EuEIj

posted by BNJ at 21:05 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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