2016年10月15日

(サザエさんをさがして)鳴きまね 父子4代、受け継がれる芸【朝日新聞デジタル2016年10月15日】(既報関連ソースあり)

1970年1月17日朝日新聞朝刊 (C)長谷川町子美術館

 東京・上野の鈴本演芸場。江戸家小猫さん(39)が高座で右手の小指を口の中に入れ、野鳥のキビタキとウグイスの鳴きまねをした。トノサマガエル、犬、猫と続けた後、動物名を事前に明かさず、鳴いた。「クワーッ、クワッ、クワッ、クワッ、クワッ、コッケコッコー」

 その瞬間、「ニワトリ」だと思った約180人の観ログイン前の続き客を、こんな落ちで笑わせた。

 「これはチャボの声ですよ」

 「サザエさん」の作者、長谷川町子さんは自伝「サザエさんうちあけ話」で、終戦後に菜園でニワトリとシャモの「ハーフ」を飼ったと書いている。その経験を参考に、サザエとカツオが卵を産むニワトリのまねをする掲載作を描いたのかもしれない。

 高座から下りた小猫さんにこの漫画を見せると、食い入るように見つめながら、つぶやいた。「長谷川さんが、ぼくのおじいちゃんの一世(いっせい)を風靡(ふうび)した芸を見たのは間違いありません」

     *

 「ぼくのおじいちゃん」は三代目江戸家猫八(1921〜2001)。小猫さんによると、漫画が描かれた1970(昭和45)年当時、ニワトリの産卵をまねる三代目の姿が盛んにテレビで流れていたという。開いた扇子で羽をばたつかせる様子を表現。口の中に人さし指を突っ込み、ほおを内側からはじいて『ポン』と鳴らして「産卵」となる。「おじいちゃんのお決まりの落ち。実際の産卵で、そんな音はしませんが」

 三代目は56年から10年間テレビ放送されたNHK「お笑い三人組」に出演した。ビデオリサーチの調べでは、63年6月4日放送回の関東地区の番組平均視聴率が44・2%。すでに全国区の人気者になっていた。

 実は「猫八」の起源は芸名ではない。〈江戸時代の物乞いの一種。門に立って猫・犬・鶏などの鳴声をまねて銭を乞い歩いたもの〉と広辞苑にある。幕末に生まれた初代は小猫さんの曽祖父にあたる元歌舞伎役者。鳴きまね芸で江戸家と号し、周辺の寄席から客を奪うほどの盛況ぶりだった。初代の恩人の息子が継ぎ、初代の六男が戦後三代目を襲名した。

 この芸風、一子相伝ばかりではなさそうだ。芸能史に造詣(ぞうけい)が深い社会学者加藤秀俊さん(86)の論考「ものまねことば」(93年)にこんな一節がある。〈歌舞伎役者の物まねを趣旨とする「声色」芸は昭和にはいってから古川緑波(ロッパ)が「声帯模写」と称し、あらゆるジャンルの有名人の物まねを完成させた。江戸家猫八などがその伝統をひいていたことはいうまでもない〉

 確かに、三代目は戦前、緑波一座に属していた。

     *

 鳥の鳴きまねだけで100種類に達した四代目は小猫さんの父。今年3月に進行胃がんのため66歳で亡くなり、長男の小猫さんが約120年間続く「江戸家のウグイス」を継承する。観客がどのネタでどれぐらい笑うのか。その微妙な差を感じ取り、次のネタの放ち方を即興で変える芸も身につけた。

 そんな小猫さんは北海道・旭山動物園でカバ、大阪・天王寺動物園でシマウマと、各地で動物の鳴き声を研究するたびに、こんな思いを強くしている。

 「笑いながら、動物は愛すべき存在だと感じていただきたい。それが生態系を守る心につながると思うんです」

 鳴きまねを高座の芸に昇華させた初代。大衆芸能として広く浸透させた三代目。野鳥をきっかけに自然環境の大切さを発信し続けた四代目。将来の五代目が、新たな境地に入るかもしれない。(辻岡大助)

 ■縮刷版から テレビ電話、導入へ

 この「サザエさん」が掲載された1970年1月17日の朝日新聞朝刊社会面トップは「テレビ電話 いよいよ登場」。記事で「相手の顔を見ながら電話で話をすることができるばかりか、ブラウン管に文書や図面を写し出し、事務処理の能率化をはかることもできる」と説明。導入先の一番手には福井銀行と外務省を挙げている。

 テレビ電話は、この年にあった大阪万博でも公開された。NTT東日本によると、テレビ電話の研究が始まったのは65年。当時はアナログ回線による静止画像の伝送で、動画の伝送の商用化は88年まで待たなければならなかった。「大容量の動画をアナログ回線でスムーズに送るのは難しかったようです」と担当者は言う。

 記事で「これからの情報化社会の有力な武器」と位置づけられたテレビ電話。「ファクシミリも普及へ」という別稿も付いているが、今やスマートフォンの無料対話アプリ「LINE」が幅を利かせ、文書も電子メールでやり取りするのが主流になっている。

     ◇

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12605480.html

http://archive.is/qAdqJ
「江戸家猫八」は明治30年代から続く名跡 3代目が名前全国区に【スポーツ報知2016年5月30日】
江戸家小猫さん 動物のまね、コツ披露 ライブや鳴き声コンテスト のいち動物公園 /高知【毎日新聞2016年5月5日】
(惜別)江戸家猫八さん 物まね芸人【朝日新聞デジタル2016年4月24日】
四代目江戸家猫八さんが死去、66歳 十八番は「ウグイス」の鳴きまね 3月9日に入院、2週間足らずで急逝【産経ニュース2016年3月31日】(他5ソース)

posted by BNJ at 21:49 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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