2016年11月18日

【伝統芸能】<能楽お道具箱>シテ方宝生流・東川光夫に聞く羽団扇【東京新聞2016年11月18日】

 能の道具をものづくりという視点で追いかけ、支援活動をしていますが、気がかりな道具がいくつかあります。そのひとつが羽団扇(はうちわ)です。本物の鳥の羽根を素材に作られた大きな団扇ですが、近年は羽根の入手が困難となり、新しく作ることができないという声をよく聞きます。今回は、道具に詳しく、ご自身でも道具を製作されるシテ方宝生流の東川光夫さんを東京・宝生能楽堂に訪ね、羽団扇について話を聞きました。
 羽団扇は私たちの日常生活では使わない道具です。能のなかでは、どんな役割をもった道具とされているのでしょうか。「羽団扇は天狗(てんぐ)の象徴とされていて、天狗の役は必ずこれを持ちます。空を飛んだり、強い風を起こしたりすることができる不思議な力を秘めた道具です。羽根は原則十二枚で作られていますが、複数の鳥の寄せ集めでは柄や大きさがバラバラになるので、一羽の鳥の羽根でそろえる方が美しいとされています」と東川さん。そばで見る羽団扇は巨大で、羽根の部分を測ると四十センチくらいありました。
 見せてもらった羽根は二種類あり、ひとつは白地に黒、もうひとつは派手な縞(しま)模様。羽根の大きさや模様から考えて、ワシやタカなどの大型の猛きん類の鳥と推測されます。東川さんは「森の王者の羽根を使うことで、超人的な力を表そうとしたのかもしれませんね」と思いをはせます。
 しかし、これらの鳥は生息地である森林環境の変化などによって絶滅が危ぶまれ、保護の対象になっています。貴重な羽根ということで、取り扱いに気を使っているようです。「羽団扇を腰に差して出る演目があるのですが、羽根が装束に当たって傷んでしまうので、腰に差さないやり方に変えるようになりました。稽古のときは、本物の羽根ではなくボール紙で作ったもので代用しています。そろそろ修理や新調もしたいところですが、羽根がね」とポツリ。
 羽根の調達については、人工素材の羽根を作る選択肢もありますよね?と問いかけると「現代の技術なら、いいものができそう」と東川さんも柔軟なお考えのようです。
 手前味噌(みそ)になりますが、手作業で作られていた歌舞伎の鼈甲(べっこう)の櫛(くし)を、眼鏡のフレームを作る企業に技術協力で関わってもらい、アセテート樹脂で復元させた経験があります。このように羽団扇も課題を社会に開いていけば、解決のヒントが得られると思います。
 羽団扇には表裏があり、羽根もよく見ると一枚一枚の形が微妙に異なっています。舞台で使えるレベルに再現するには、多くの困難がありそうですが、多様な領域の人が関わりながら、現代の新しい羽根が作られることに期待したいです。
 (田村民子=伝統芸能の道具ラボ主宰)
<羽団扇を見られる曲目> 羽団扇を持つ天狗が登場する演目は、宝生流では「鞍馬天狗」「車僧(くるまぞう)」「大会(だいえ)」「是界(ぜがい)」の4曲。「鞍馬天狗」には別習白頭(べつならいはくとう)(天狗揃(てんぐぞろい))という独特の特殊演出(小書(こがき))があり、その場合は8人の天狗が出る。他の流儀にはない珍しいもので、羽団扇も8本登場する。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2016111802000179.html

http://archive.is/h1BCs

posted by BNJ at 21:35 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: