2016年12月04日

信州・取材前線 ライチョウ 絶滅防ぐには 生息地で障害排除 人工飼育技術確立も課題 /長野【毎日新聞2016年12月4日】

 北アルプスなどの高山帯にすみ、個体数が減少している国の特別天然記念物・ライチョウ。関係機関は絶滅を防ぐため、環境省の保護増殖事業に基づき、生息地での保護と動物園などでの増殖の両面で取り組んでいる。生息地では低地から侵入した天敵の増加などで存続が危ぶまれる山岳がある。動物園などは野生復帰も視野に、昨年から北ア乗鞍岳産の卵を使った人工繁殖を始めた。関係者でつくるライチョウ会議(議長・中村浩志信州大名誉教授)が10月に大町市で開いた会合の内容を基に、取り組みの現状を報告する。【武田博仁】

 環境省の事業は生息域での「域内保全」と動物園などでの「域外保全」に分かれる。域内では現状把握と減少要因解明を進め、緊急性の高い対策を行う。域外では2008年に始めたノルウェー産亜種・スバールバルライチョウの飼育で得た知見を日本産に生かし、飼育・増殖技術の確立を目指している。

 両者はいわば「車の両輪」で、域内の絶滅を食い止める一方、減少が著しい山には、域外で増やした個体群を野生復帰させることを視野に入れている。

 ライチョウの生息地は現在、北アと乗鞍岳、御嶽山、南アルプス、火打山に限られ、生息数は計約1700羽と推定されている。

 このうち、減少が著しいのが南ア北岳周辺(山梨県)だ。現地では昨年からヒナが死ぬ率が高いふ化後の約1カ月、ヒナと雌親をケージ(かご)に入れて一時保護しているが、保護後の今年7月に放したヒナ15羽で、10月まで生存したのは2羽だけだった。作業に携わった小林篤・東邦大理学部研究員は「テンなどの天敵が多く、ヒナが育つ環境ではない」とみる。このため、環境省は来年、天敵の捕獲を試みる方針だ。

 北ア東天井岳では昨年、中村議長らがニホンザルによるヒナの捕食を確認し、関係者に衝撃を与えた。今年はサルの追い払いを実施し、サルの群れの行動を追跡している。

 生息数が20〜30羽と最も少ない火打山(新潟県)には温暖化の影響が及んでいる。標高が2462メートルと低めなこともあってイネ科植物が入り込み、ライチョウの餌となるコケモモなどの生育を妨げていると判明。環境省は今年、イネ科植物の抜き取りを試みた。

 動物園などの域外保全では昨年、乗鞍岳で採取した卵を上野動物園(東京都)、富山市ファミリーパークが5個ずつふ化させた。上野ではふ化後約2カ月でヒナが全滅。富山では雄のヒナ3羽が育ったが雌がいないため、繁殖できなかった。

 今年は、04年まで約40年のライチョウ飼育経験がある大町山岳博物館が加わり、3施設が乗鞍岳産の卵各4個を受け入れた。現在のところ、3施設でふ化したヒナ12羽は順調に育っているという。

 大町山岳博物館で長い飼育経験を持つ宮野典夫指導員は「ヒナは雌雄各2羽いて、来年以降の繁殖につなげたい」と語る。ライチョウは低地の細菌やウイルスに抵抗力がなく、博物館ではかつて感染症や消化器系障害などに悩まされた。飼育技術の確立について宮野指導員は「何年かかるか分からないが、1年でも早く態勢を整えたい」と話す。

 ライチョウ保護は、高山に育つ植物や昆虫を含む生態系を守ることでもある。中村議長は「高山に、手つかずの豊かなお花畑があるのは先進国では日本だけ。その価値に多くの人が気づいてほしい」と訴えている。

 ■ことば

ライチョウ
 キジ目ライチョウ科。全長約37センチ。国の特別天然記念物。種の保存法に基づく国内希少野生動植物種。環境省レッドリストで絶滅危惧1B類。1980年代の生息数は信州大の調査で推定約3000羽だった。世界では北極圏を中心に分布する。日本産は最終氷期後に高山に取り残された「遺留種」とされ、世界分布南限の亜種。
http://mainichi.jp/articles/20161204/ddl/k20/040/036000c

http://archive.is/QlJrS
鳥インフルからライチョウ守れ 大町山岳博物館が付属園休園【産経ニュース2016年12月4日】
ライチョウ 保護推進へ 妙高でシンポ 官民協働を確認 /新潟【毎日新聞2016年11月25日】

posted by BNJ at 22:13 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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