2017年01月09日

トリとりGO 種類を競う/中 鳥戦状、返り討ち 折れた心に染みる雨 狙うは支局内下克上、衛藤達生記者 /滋賀【毎日新聞2017年1月8日】

私を威嚇するように鳴き声を上げるトビ=滋賀県草津市下物町の烏丸半島付近で、衛藤達生撮影
「参加することに意義」18種類 愛好家の思い「これか」 草津→竜王
 「カーネル・サンダースの呪い」か−−。車のフロントガラスをたたき続ける雨滴。空は暗く、灰色の雲に切れ目はない。これほど野鳥撮影に不向きの天気もないだろう。昨晩、気合を入れるため某有名フライドチキンを食べたのがまずかったのか。いやいや、こちらはお客様。恨まれる筋合いはない。だとすると、私の「鳥戦」を買って出た上司が雨雲を呼び寄せたに違いない。そんなに私が怖いのか。狭量の上司を持つと苦労する。

 などと軽口を考えていられたのも現地に着くまでだった。初舞台は草津市下物町の烏丸半島付近。鳥の名を持つ縁起の良さに加え、事前に県立琵琶湖博物館の職員から水鳥の宝庫と聞いて選んだ。だが、湖岸に立つと水鳥の数は少ない。しかも雨にぬれて全て黒っぽく見える。あれっ、1種類しかいない!?

 戸惑いながら水辺に向かって数歩進んだ瞬間。「バサバサバサ」。大きな羽音を立て、たくさんの水鳥が沖合に向け飛び立った。突然の爆音に、カメラを構えることができなかった。富士川の戦いで逃げ出した平氏を笑えない。

 気を取り直してカメラを構え、息を殺す。肉眼では黒一色に見えたが、望遠レンズを通せば、羽が白い鳥や焦げ茶色の鳥もいる。雌雄の違いかもしれないが、少なくとも1種類ではあるまい。目に付くたびに夢中でシャッターを切る。

 水鳥をあらかた撮り終えて一息つく。こわ張った首を回すと、湖中に立つ柵の上に猛禽(もうきん)類の姿があった。丸っこい水鳥のフォルムに慣れた目には、その剽悍(ひょうかん)さがまぶしい。足に魚を捕まえているようだ。ファインダーをのぞくと目が合った。何かを叫んでいる。肩を怒らせるように両羽を持ち上げた瞬間、柵から身を投げ出すように飛び立った。力強い羽ばたき。すぐに高度を上げ、飛び去っていった。

 寒気にさらされた顔が緩む。なんだか無性に笑いたい。「これか」。自然と独り言を発していた。鳥を追いかける愛好家の思いの一端が分かった気がしたのだ。他にも鳥がいないかと、目を皿のようにして見回すと、小鳥が数羽飛んでいた。梢(こずえ)に止まったところを撮影し、次の目的地に向かうことにした。

 野洲、湖南の両市と竜王町にまたがる県希望が丘文化公園。日本野鳥の会滋賀のホームページでも「滋賀の探鳥地」として紹介されている。しかし、雨は一向にやむ気配がなく、傘を手放せない。昼過ぎなのに気温も上がらず、途中のコンビニエンスストアで手袋を購入した。

 公園内の青年の城で取材目的を話すと、西口付近がいいとのこと。カラー刷りのチラシ「公園でみられる鳥」もいただいた。もうひと頑張りと気合を入れ直し、西駐車場から芝生ランドを横目に山上ダムを目指す。さまざま鳴き声が聞こえる。「森は饒舌(じょうぜつ)だ」。狩猟免許を持つ先輩記者の教えを思い出す。

 しかし、姿が見えない。水鳥は遮蔽(しゃへい)物のない水辺にいるから見つけやすかった。ダムの水辺にも水鳥はいるが、幾多の鳴き声はその周辺の雑木林からだ。葉を落とした木に止まっていた数種類は見つけることができたが、常緑樹の方から聞こえる声の主を収めることはできなかった。

 木に近づくと、視界の端で何かが飛ぶ。しかし、素人にはとても追い切れない。頭の中に「敗北」の二文字が飛び回り始めた。ダムから子ども広場、草野球場などを巡ってみる。降りしきる雨。水たまりに足を取られる。靴の中まで冷たい水が浸入し、心は折れた。撮影できた鳥は18種類だった。

 初心者のバードウオッチングは晴れている日にしよう。一時の激情に身を任せて無謀な挑戦をするのはもうやめよう。そんな教訓を得て、さらに一回り大きくなったと自分を慰めた。【衛藤達生】
http://mainichi.jp/articles/20170108/ddl/k25/040/262000c

http://archive.is/nmp97
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タグ:トビ
posted by BNJ at 11:02 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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