2017年01月16日

京は水もの えにし訪ね、ぶらり探訪/32 ヨシ原サミット 原風景、連係プレーで保全 /京都【毎日新聞2017年1月16日】(ツバメ/オオヨシキリ)

 水辺に広がるヨシ原はかつてどこにでも見られる日本の原風景だった。かやぶき屋根やヨシズの材料として私たちの暮らしにも身近な存在で、野鳥にとっては天敵から身を隠す天然のバリアーになり、多くの生物を育んできた。だが埋め立てや河川改修などで急速に姿を消しつつある。

 琵琶湖・西の湖(滋賀県近江八幡市)、宇治川の向島地区(京都市伏見区)、淀川の鵜殿(うどの)地区(大阪府高槻市)。琵琶湖から宇治川、淀川へとつながる水系に広がる西日本でも有数のヨシ群生地を守ろうと、昨年12月、3地区で活動を続ける市民団体や研究者、行政関係者ら約40人が京都市に集まって「ヨシ原サミット」を開催、保全のノウハウや情報を共有していくことで意見が一致した。サミットで交わされた各地の活動と課題をリポートする。

 ■河川事務所による鵜殿のヨシ原再生の試み

 淀川には鵜殿、豊里、西中島、十三、中津のヨシ原があり、鵜殿が約73ヘクタールと最も広い。オオヨシキリなど野鳥の繁殖地になっているほか、良質なヨシは雅楽で用いる篳篥(ひちりき)のリードにも利用。ヨシ焼きは春の風物詩として地元住民に愛されてきた。

 だが河床掘削などで水位が低下し、河川内で一段高くなった高水敷の乾燥化が進み、2000年にはヨシ群落が10ヘクタール余りと、戦後間もないころの約6分の1にまで減少した。

 国土交通省淀川河川事務所の岡崎慎一・河川環境課長は「普段の流れから高さ1メートル程度まで高水敷を切り下げたところ、ときどき冠水するようになり、陸域の外来種が抑制され、ヨシが優勢になった」と報告。「治水工事で失われた環境を回復させる下地は土木工事である程度できる。しかし、どのような植生を回復し、どう利用していくかは行政と地域住民、大学などが横断的に考えなければならない。琵琶湖から水はつながっているが、人間同士もつなげていく必要がある」と話した。

 ■ツバメのねぐらは湿地性植物の宝庫

 伏見のヨシ原は干拓で姿を消した旧巨椋池の北縁にあたり、約35ヘクタールのヨシ原が広がる。毎年夏には約3万羽が夜を過ごす「西日本一のツバメのねぐら」といわれ、市民グループによる観察会も続く。刈り取ったヨシは三栖(みす)神社(伏見区)の「炬火祭(たいまつまつり)」(京都市登録無形民俗文化財)のたいまつ造りに使われるなど、伝統文化も支えている。

 ヨシ原で1970年代から植物研究を続けている土屋和三・龍谷大教授(生物学)は「湿地性の植物群落が非常に豊富で、こういう場所が京都にあることは素晴らしい。だが運動公園の造成などにより自然植生が減少し、さらにあちこちにあった小さな池が姿を消している。ヨシは水がつかったり、干上がったり、変動するところに育つ。多様な湿地環境を復活させることが大切」と指摘。また「ツバメの観察も素晴らしいが、冬鳥の調査も興味深いのではないか」などと話した。

 ■ヨシ灯り展でヨシの魅力をアピール

 06年、重要文化的景観の第1号に選定された近江八幡市の水郷。その重要な要素となっているのが約50ヘクタールのヨシ群落だ。かつては江州ヨシと呼ばれすだれや建材、茶畑の覆いなどにも利用された。

 ヨシを使ったアート展「ヨシ灯(あか)り展」実行委員会の竹田勝博さんは「ボランティア活動としてヨシ刈りを15年間続けた。しかし刈り取るだけで、活用しなければ意味がない。そう思って07年にヨシ灯り展を始め、第10回の16年は約420点が出品された。最近はヨシを材料にした壁をホテルに置いてもらうなと新しい使い方も模索している」と活動を紹介。「ヨシを刈り、利用するという循環ができて初めて保全への意欲が高まる。琵琶湖だけでなく、淀川水系でも作品展を開き、関心を持ってもらいたい」と話した。

     ◇

 万葉集にも「蘆刈(あしかり)」がうたわれるなどヨシ原は日本人の原風景。水を介した連係プレーがその原風景を復活させるか?【榊原雅晴】
http://mainichi.jp/articles/20170116/ddl/k26/040/317000c

http://archive.is/S3zAy
京は水もの えにし訪ね、ぶらり探訪/28 宇治川のヨシ原 伝統の火生態系守る /京都【毎日新聞2016年10月24日】(ツバメ)
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posted by BNJ at 22:49 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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