2017年03月19日

鹿児島)金作原「原生林」の誤解 守れば世界に誇る森に【朝日新聞デジタル2017年3月19日】

【動画】奄美大島の金作原「原生林」は誤解 守れば世界に誇る森に=外尾誠、常田守さん撮影

金作原に広がる杉林。奄美本来の森にはないが、建築資材用に植えられた

 巨大なシダ植物ヒカゲヘゴが生い茂る原生林――。奄美大島を代表する観光地の金作原は、ガイド本などで「手つかずの自然の宝庫」と紹介され、現地の案内板にも「VIRGIN FOREST」の文字が躍る。だが、そこには誤解がある。

 一つは原生林について。

 「これが現状だよ」。先月中旬、金作原の森の奥に入った奄美市の自然写真家常田守さん(63)が指をさした先に、天に向かってまっすぐに伸びる杉林が広がっていた。

 林野庁の名瀬森林事務所によると、1954年から建築資材用に植えられ、計約460ヘクタールの森のうち50ヘクタールを占める。「人の手が入っているので、原生林と呼ぶのは間違い。正式名は金作原国有林」と同事務所。環境省奄美自然保護官事務所も「奄美大島に原生林と呼べる森はほぼない」とする。島では戦後、食糧難のために山の上まで段々畑が切り開かれ、80年代を中心にチップ材用などの皆伐も行われたためだ。

 ヒカゲヘゴにも誤解がある。日陰を好むからではなく、「日陰を作る」のが名前の由来とされ、谷や沢沿いの日当たりの良い場所に生える。在来種だが、イタジイを中心とする奄美の常緑広葉樹の森では本来、見られない。金作原で観光客に紹介されているのは、50年前の林道整備で森に隙間ができ、日当たりが良くなって育ったもの。「いわば開発の象徴。森の傷口を癒やすカサブタの役割を果たしているが、原生林の象徴ではない」と常田さん。森が育って暗くなれば、いずれは枯れてしまうという。

 しかし、金作原が自然林の多い魅力あふれる森であることに誤解はない。

 ルリカケスにオーストンオオアカゲラ、アカヒゲ、オオトラツグミ、カラスバト。島に生息する国天然記念物の野鳥の鳴き声や姿が一年中、楽しめる。季節ごとに希少植物が咲き誇り、春には島の固有種アマミイシカワガエルの美しい声が沢に響く。傘になりそうな大きな葉が特徴のクワズイモ、木に着生するシダ植物シマオオタニワタリ、板を縦に突き刺したような板根(ばんこん)を持つオキナワウラジロガシの巨木もある。

 もちろん、空を覆うように扇上の葉を広げるヒカゲヘゴも迫力満点。「良い森だからこそ、過去に人の手が入った事実をきちんと認識してほしい。今後、しっかりと守るために」と常田さん。そんな指摘をするのは、懸念があるからだ。

 金作原の入り口の目の前は市道で、現在は観光バスや一般車が行き来する。だが、車がすれ違う際に両脇の植物を踏みつぶしたり、ぬかるみで車が動けなくなったりすることがある。そこは、かつては「幻の鳥」と呼ばれたオオトラツグミがエサを取る姿が楽しめる貴重な道でもある。

 金作原は奄美群島国立公園の指定地域で、世界自然遺産の推薦地。今後、人気が集中して自然が壊される恐れが高まっている。入林者数や車両通行の規制が検討されているが、バスの進入を続ける案もある。

 入り口までの市道は原則車の進入を禁じ、体が不自由な人を乗せた車などを特別に許可すればいい。常田さんはそう考える。途中の市道沿いにも魅力的な自然があり、車が減れば保護も進むためだ。守り続ければ、「将来は原生林に近い、世界に誇れる立派な森に戻る」という。

    □

 朝日新聞デジタルに奄美群島国立公園に関する特集ページ(http://t.asahi.com/n1jo別ウインドウで開きます)ができました。(外尾誠)
http://www.asahi.com/articles/ASK3J1C4WK3HTLTB00V.html

http://archive.is/GUqnM
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posted by BNJ at 11:55 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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