2017年03月19日

きょうのなぜ?アホウドリの移住【毎日新聞2017年3月19日】(聟島)

うまれた島覚しまおぼえる習性しゅうせいを利用りよう 360キロメートル南みなみに新天地しんてんちづくり
 絶滅ぜつめつの危機ききにあるアホウドリのヒナを、火山かざんの島しまから安全あんぜんな小笠原諸島おがさわらしょとうへと引ひっ越こしさせる試こころみが進すすんでいます。新天地しんてんちでは先月せんげつ、2羽目わめのヒナが生うまれました。プロジェクトの内容ないようを紹介しょうかいします。【斎藤広子さいとうひろこ】

乱獲らんかくで減少げんしょう
 アホウドリは翼つばさを広ひろげると2メートル以上いじょうにもなる日本にっぽんで最大級さいだいきゅうの海鳥うみどりで、美うつくしい白しろい羽はねをしています。150年ねんほど前まえまで各地かくちに少すくなくとも数十万羽すうじゅうまんばいました。現在げんざいは世界せかいで数千羽すうせんばだけ、東京都とうきょうとの伊豆諸島いずしょとう・鳥島とりしまと、沖縄県おきなわけんの尖閣諸島せんかくしょとうにしかいません。絶滅ぜつめつが心配しんぱいされ、国くにの特別天然記念物とくべつてんねんきねんぶつに指定していされています。

 アホウドリを絶滅寸前ぜつめつすんぜんに追おいやったのは、19世紀後半せいきこうはんから20世紀前半せいきぜんはんにかけての乱獲らんかくです。アホウドリは大型おおがたで上質じょうしつの羽毛うもうがたくさんとれるうえ、簡単かんたんに飛とび立たてないのでつかまえやすいのです。鳥島とりしまでは、日本人にっぽんじんが組織的そしきてきに捕つかまえ、1人ひとりが1日いちにちに100〜200羽殺わころしたという記録きろくが残のこっています。羽毛うもうは、布団ふとんや枕まくらの材料ざいりょうとして輸出ゆしゅつされ、高値たかねで取引とりひきされたということです。

 乱獲らんかくで一度いちどは「絶滅ぜつめつ」が宣言せんげんされましたが、その後ごの保護活動ほごかつどうで少すこしずつ数かずが回復かいふくしています。しかし、最もっとも多おおくのアホウドリがいる鳥島とりしまは活発かっぱつな火山島かざんとうで、ひとたび噴火ふんかすればアホウドリが全滅ぜんめつしてしまう恐おそれがあります。そこで2008年ねん、鳥島とりしまから南みなみに360キロメートル離はなれた同おなじ東京都とうきょうとの小笠原諸島おがさわらしょとう・聟島むこじまにヒナを「引ひっ越こし」させて人ひとの手てで育そだて、すみつかせようという計画けいかくが始はじまりました。

 なぜヒナの段階だんかいで移住いじゅうさせるのでしょうか。計画けいかくの中心ちゅうしんメンバーで山階鳥類研究所やましなちょうるいけんきゅうじょ(千葉県我孫子市ちばけんあびこし)の出口智広でぐちともひろさんは、「アホウドリの習性しゅうせいを利用りようしています」と話はなします。アホウドリは陸地りくちから遠とおく離はなれた島しまで集団しゅうだんで子育こそだてをし、ヒナは自分じぶんが生うまれ育そだった島しまを覚おぼえています。巣立すだちから3〜4年ねんでその島しまに戻もどり、5歳前後さいぜんごから子育こそだてをします。聟島むこじまは安全あんぜんで人ひとが上陸じょうりくしやすく、かつて近ちかくの島しまにアホウドリがいたという記録きろくがあるので、引ひっ越こし場所ばしょに選えらばれました。

70羽移ぱうつし昨年初さくねんはつの2世せい
 08年ねんから5年間ねんかん、毎年鳥島まいとしとりしまからヒナ10〜15羽わをヘリコプターで聟島むこじまに運はこび、えさを与あたえて人ひとの手てで育そだてました。計けい70羽ぱのヒナのうち、69羽わが無事ぶじに巣立すだちました。11年ねんからアホウドリが聟島むこじまに戻もどってくるようになり、16年ねん1月がつ、「イチロー」と名付なづけられたオスのアホウドリに初はじめてヒナが生うまれました。イチローは、08年ねんに聟島むこじまに運はこばれた最初さいしょの10羽わのうちの1羽わで、野生やせいのメスの「ユキ」と夫婦ふうふになっていました。今年ことしも、イチローとユキの間あいだにヒナが生うまれています。

 出口でぐちさんは「人ひとの手てで育そだてられていない聟島生むこじまうまれのヒナたちが、巣立すだった後あとに聟島むこじまに戻もどり繁殖はんしょくするようになって、初はじめてこの計画けいかくが成功せいこうしたといえると思おもいます」と話はなします。今回こんかいの計画けいかくが、絶滅ぜつめつが心配しんぱいされている他ほかの生いき物ものたちを守まもるための参考さんこうになれば、と願ねがっています。

 ■ミニ知識ちしき

乱獲らんかくされ、絶滅ぜつめつした鳥とりたち
 アホウドリのように人間にんげんに乱獲らんかくされ、実際じっさいに絶滅ぜつめつしてしまった鳥とりたちがいます。

 有名ゆうめいなのは、アフリカ・マダガスカル沖おきのモーリシャス島とうに生息せいそくしていた「ドードー」です。空そらを飛とべずに地上ちじょうをゆっくりと歩あるき、警戒心けいかいしんも薄うすかったために、食用しょくようとして人間にんげんに捕獲ほかくされたり、人間にんげんが持もち込こんだイヌやネズミにヒナや卵たまごを食たべられたりして、17世紀せいきに絶滅ぜつめつしてしまいました。

 北きたアメリカ原産げんさんのリョコウバトは、19世紀せいきには何十億羽なんじゅうおくわもいたとされています。しかし、「肉にくがおいしい」と高たかい値段ねだんで取引とりひきされたため、多おおくの人々ひとびとが捕つかまえるようになり、わずか数十年すうじゅうねんで数かずが一気いっきに減へって、20世紀せいきの初はじめに絶滅ぜつめつしてしまいました。

 オオウミガラスは、アホウドリと同おなじ大型おおがたの海鳥うみどりで、北大西洋きたたいせいようや北極海ほっきょくかいにすんでいました。水中すいちゅうを高速こうそくで泳およぐことができましたが、地上ちじょうではよちよちと歩あるき、用心深ようじんぶかくもなかったので、肉にくや卵たまごを食たべたり羽毛うもうを取とったりするために、大規模だいきぼな乱獲らんかくの対象たいしょうになりました。19世紀せいきの半なかばに絶滅ぜつめつしています。

特別天然記念物とくべつてんねんきねんぶつの鳥とりたち
 文化庁ぶんかちょうによると、動植物どうしょくぶつや鉱物こうぶつで学問的がくもんてきに価値かちの高たかいもののうち、国くにが特とくに重要じゅうようなものとして保護ほごしている「特別天然記念物とくべつてんねんきねんぶつ」は現在げんざい75件けんが指定していされています。鳥類ちょうるいでは、アホウドリの他ほかに、トキやライチョウ、カンムリワシ、コウノトリ、タンチョウ、ノグチゲラ、メグロなどが指定していされています。特定とくていの場所ばしょでだけ指定していされているものもいます。

 絶滅ぜつめつが心配しんぱいされているものも多おおく、コウノトリやトキのように、野生やせいではいったん絶滅ぜつめつしたとされた種類しゅるいを人ひとの手てで増ふやし、自然界しぜんかいに放はなって野生やせいに復帰ふっきさせることを目指めざす取とり組くみもあります。

お話はなしを聞きいた人ひと
 山階鳥類研究所研究員やましなちょうるいけんきゅうじょけんきゅういん 出口智広でぐちともひろさん

参考さんこうにした資料しりょう
 山階鳥類研究所やましなちょうるいけんきゅうじょのホームページ(http://www.yamashina.or.jp

 マンガで理科りか きょうのなぜ? 全ぜん6巻かんが偕成社かいせいしゃから好評発売中こうひょうはつばいちゅうです

 *「きょうのなぜ?」は今回こんかいで終おわります

 感想かんそう、意見いけんをお聞きかせください。このページを小学校しょうがっこうで授業じゅぎょうにお使つかいになるためにPDFファイルもあります。新聞しんぶんは在庫ざいこがあれば提供致ていきょういたします。なるべく前まえもってご連絡れんらくください。

〒100−8051 毎日小学生新聞編集部まいにちしょうがくせいしんぶんへんしゅうぶ「きょうのなぜ?」係がかり(電話でんわ03・3212・3274、ファクス03・3212・2591)へ。毎小購読まいしょうこうどくのお申もうしこみはフリーダイヤル0120・468・012へ。
http://mainichi.jp/articles/20170319/kei/00s/00s/007000c

http://archive.is/Lwhix
アホウドリ アホウドリのひな誕生…小笠原・聟島で2例目【共同通信2017年2月13日】(既報関連ソースあり)
アホウドリ移住繁殖成功=伊豆鳥島から小笠原諸島に−山階研【時事ドットコム2016年11月29日】
聟島でアホウドリ繁殖支え 巣立ち見届けず4年前他界の獣医師・渡辺さん【東京新聞2016年6月21日】
アホウドリ 新繁殖地 ひな初の巣立ち【毎日新聞2016年5月24日】
アホウドリひな聟島で初の巣立ち 新繁殖地計画の小笠原【共同通信2016年5月23日】

posted by BNJ at 12:02 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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