国際フェリーやコンテナ船が行き交う大阪南港(大阪市)の一角に、シギやチドリなどの渡り鳥や地域の野鳥が羽を休める鳥たちの楽園がある。市中心部に近い臨海部に造成された「大阪南港野鳥園」。人工の干潟や緑地からなり、身近な自然を観察できる場として市民や愛好家らに長年親しまれてきた。
「どんな鳥が見えますか」。3月下旬、月に数回訪れるボランティアガイドの田阪知子さん(37)=奈良県=が、来園者に声を掛けて回っていた。ツグミやムクドリなどを見つけては、自前の望遠鏡をのぞかせてくれる。「厳しい環境を身一つで生き抜く強さやたくましさを、観察を通じて実感してほしい」と話す。
主な観察の場となる展望塔は、家族連れでにぎわっていた。無料の双眼鏡をのぞき込むと、止まり木の上で休む猛禽(もうきん)類の一種、ミサゴの大きな背中が見える。突然ぐりんと背中側まで頭を回し、双眼鏡越しに鋭い視線を向けてきた。「この鳥は狩りの際、上空から急降下します。その姿は迫力満点ですよ」。愛好家の高田幸雄さん(64)=岡山市=が教えてくれた。
施設を管理するNPO法人「南港ウェットランドグループ」の高田博理事長(68)によると、かつて大阪南港には干潟が広がり、オーストラリアを中心とした越冬地とロシア東部などの繁殖地を行き来するシギやチドリの仲間が、休憩地として盛んに訪れたという。
しかし、産業が発展するにつれて、干潟の埋め立ても進行。訪れる渡り鳥の数は減り続けたという。危機を感じた地域住民が1960年代後半から干潟の復元を訴えるようになり、住民の熱意を受けた大阪市が71年、野鳥園の開設を決めた。
今では、大阪府内で渡り鳥を観察できる数少ない場所の一つとなっている。シギやチドリは南北へ大旅行する春と秋に飛来し、春の見ごろは5月末まで。夏にはカイツブリなどがよく見られ、冬にはオオタカやハヤブサが訪れるという。
高田理事長は「渡り鳥が訪れる貴重な環境を未来に残していきたい」と願っている。
■ことば
大阪南港野鳥園
1983年に開園。人工の湿地約12・8ヘクタールと緑地約6・5ヘクタールからなる。例年150種ほどの野鳥が飛来し、これまでに計約250種が観察された。絶滅の危険性が極めて高いとされるヘラシギが訪れた記録も残る。展望塔は午前9時から午後5時まで利用可能で、入場無料。新交通システムニュートラムのトレードセンター前駅から徒歩約15分。
https://mainichi.jp/articles/20170411/ddl/k27/040/446000c
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