2017年04月15日

(be report)やんばるの自然は世界遺産か 「来夏にも登録」に米基地の壁【朝日新聞デジタル2017年4月15日】

やんばるの自然
 日本政府は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部(やんばる)及び西表島」の2018年の世界遺産登録に向けた推薦書を2月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)に提出した。自然では小笠原諸島に続く5番目の挑戦だ。だが、やんばるには、辺野古、高江などの米軍基地問題が横たわっている。すんなりと事が運ぶようには見えないログイン前の続き。

 昨年10月、沖縄県北部にある県道2号線を車で西から東に走っていると、いつの間にかやんばる国立公園から米軍北部訓練場の区域に入っていた。

 道ばたには飛べない鳥として知られるヤンバルクイナの絵に「とび出し注意」と書かれた標識が立っている。国の天然記念物で、絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧IA類だ。生息数は推定約1500羽、年に40羽ほどが交通事故で犠牲になっているという。

 国頭村、東村、大宜味村に広がる亜熱帯照葉樹林は、固有種や希少種があふれる生物の楽園だ。ヤンバルクイナや特別天然記念物のノグチゲラのほか、ヤンバルテナガコガネ、オキナワトゲネズミ、リュウキュウヤマガメなど国の天然記念物がいる。国土の0・1%に、日本の鳥類の半分、カエルの4分の1の種がひしめいている。

 世界遺産の推薦理由も「生態系」と「生物多様性」が大きな柱だ。やんばるの豊かな自然に境界はない。固有種や希少種は、国立公園や北部訓練場の別なく、自由に行き来している。だが、人間の世界には、米軍基地という高いハードルが存在している。

 環境省は昨年9月にやんばる地域を国立公園に指定、12月には隣接する北部訓練場の約4千ヘクタールが日本側に返された。3月には奄美大島と徳之島も国立公園になり、登録への準備は整ったように見える。今夏にも世界遺産の諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)が現地調査に訪れ、「早ければ来夏にも登録が決まる」と期待する。

 ■ジュゴンの保全、国際機関が勧告

 だが、すんなり事が運ぶかどうかは不透明だ。IUCNは00、04、08、16年に、やんばるの自然に関する勧告を出している。前3回は、沖縄が北限の絶滅危惧種ジュゴンの保全などを求めた。16年には、島外からの土砂による外来種の侵入に対策を求めている。日本政府は勧告を意に介さないが、登録への障害になる可能性はある。

 「推薦区域やそこを守るための緩衝地帯に海が入っていないことに疑問がある」。IUCN世界保護地域委員会委員の吉田正人・筑波大学教授は指摘する。「推薦書では、森から海の生態系の連続性について触れていない。だが、やんばるの森は、マングローブやサンゴ礁にもつながっている」

 ■緩衝地帯不十分、「海除外」に疑義

 海が除外されていることについて、環境省は「世界遺産ほどの価値はない」との見解だ。だが、沖縄の海は自然的な価値が高く、森を守るためにも保護の必要を訴える専門家は多い。

 緩衝地帯にも入れないのは、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先である同県名護市辺野古の埋め立て工事などへの影響を、日本政府が「忖度(そんたく)」しているとの見方がもっぱらだ。ある政府関係者は「政府内では、米軍基地に影響しない範囲で自然に配慮するという優先順位がはっきりしている」と漏らす。

 推薦区域の南東側にまったく緩衝地帯がないのも、登録への障害になるかもしれない。隣接していた北部訓練場の過半は昨年末に返還され、環境省は国立公園への編入も視野に自然状況調査を始めるという。だが、未返還部分の保全についてはめどが立たない。

 日本自然保護協会や日本野鳥の会、世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどは3月、IUCNに推薦地の視察に関する要望書を提出した。環境団体は、やんばる地域には十分、世界遺産の価値があるものの大きな問題もあるとして、新たにヘリパッドが建設された東村高江や県外から大量の土砂が持ち込まれる名護市辺野古を視察場所に加えることなどを要望した。

 自然保護協会保護室の安部真理子主任は「保護の面で乗り越えるべき壁がいくつもある。時間をかけて世界遺産登録への体制を整えるべきだ」と主張している。

 環境省は「米軍基地と世界遺産は別問題。両者を絡めてやんばるの自然を守れるのか」といらだつ。だが、桜井国俊・沖縄大学元学長は「世界遺産という地域振興策をちらつかせて『辺野古新基地』に反対する地元を切り崩そうとしている。やんばるの自然を政治的に利用しているのは、政府ではないか」と批判している。

 (石井徹)

 ◆次回の「be report」は4月22日に掲載します。テーマは、人はなぜ長時間労働するのか。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12889475.html

http://archive.is/HDXbW
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posted by BNJ at 11:43 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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