2017年04月18日

ぐるっと首都圏・母校をたずねる 静岡県立静岡高/3 アホウドリ復活の夢実現 長谷川博さん /東京【毎日新聞2017年4月18日】

 ◆東邦大名誉教授・長谷川博さん

1966年度卒
 羽毛採取のための乱獲や噴火などで1949年に絶滅したと言われたアホウドリ。その2年後に伊豆諸島の無人島、鳥島で十数羽が発見され、現在は4000羽を数えるまでに回復した。40年にわたって調査・保護に取り組み、その復活に大きな役割を果たした東邦大名誉教授の長谷川博さん(68)=66年度卒=は、「静岡高校の自由な校風と充実した図書館が、夢の実現につながった」と話す。【長谷川隆】

 実家は、静岡市の山間部にある小さな集落で農林業を営んでいました。頑張って勉強し進んだ静高ですが、同級生は優秀な人ばかりで、私は劣等感を覚えました。「こいつは授業についていけるのか」と先生が心配していた、と後から聞きました。

 目立たない私でしたが、同級生に勝っていると自負できる分野がありました。鳥に関する知識です。近所でメジロなどを観察していました。田舎育ちだからこそできたことです。生物部に所属し、30人ほどの部員がそれぞれ好きな分野を研究していました。私はもちろん鳥。週末は河原や山にでかけ、双眼鏡で鳥を観察し、巣を見つけては写真に収めました。夏休みには1週間程度の合宿があり、昆虫を捕り、植物を観察し、テントで生活しました。自然を満喫しました。

 学校の図書館をよく利用しました。鳥類大図鑑とか、お小遣いで手の届かない高価な本がそろっていました。蔵書が充実していたことは、静高生の知識を支える上で重要な役割を果たしたと思います。先生と生徒の距離も近く、同級生と先生の下宿先を訪ねました。大学生活とはどんなものかを先生から聞き、将来への夢を膨らませました。自由な校風でした。

 人生を決めたのも静高時代です。1年のとき、国立遺伝学研究所(静岡県三島市)の所長だった木原均先生(故人)が講演でやってきました。内容は、先生が京都大教授時代に、小麦の祖先についてアフガニスタンで実施した学術探検です。記録映画が上映され、楽しそうに調査する研究者を目にし、「自分の進む道は野外での生物学研究」と確信したのです。進学先も京大を選びました。

 しかし、当時は学生運動が盛んで講義はなし。代わりに、渡り鳥が飛来する大阪湾の干潟に通い、埋め立て反対運動に参加しました。高度成長期で、よどんだ海の光景は目に焼き付いています。学生運動が落ち着くと、鳥類の研究に没頭しました。73年に英国の鳥類学者、ランス・ティッケル博士が研究室を訪れアホウドリの話をしてくれました。鳥島での調査後で「ヒナは24羽しかおらず芳しい繁殖状況ではない」と訴えたのです。アホウドリは気になる鳥になり、博士とやりとりしていると「君が取り組む研究だ」と手紙をいただきました。しびれました。

 76年から毎年、鳥島を訪れて生態を観測し、営巣地の保護を始めました。食料や水、観測機材、発電機を持って自力で陸揚げする重労働です。でもアホウドリに会えると思うと気になりません。繁殖に適した島内の場所に移住させようと本物そっくりの模型(デコイ)でアホウドリをおびき寄せる作戦も成功しました。来春には、約5000羽に増やすという目標を達成できるでしょう。

 海面すれすれを白いグライダーのように飛ぶ姿は自然の芸術品です。私は敬意を込めて、名前をアホウドリからオキノタユウ(沖の大夫)への改称を提案しています。

やりたいことに挑戦 戦後まもなく発足の生物部
 静岡高校には運動部が19、文化部が18、同好会が三つあり、全生徒がどこかに参加している。「文武両道を掲げており、勉学だけでは得られない人間関係や視野の広さを育成したい」(井口辰夫前教頭)という学校の方針も反映されている。

 長谷川博さんが半世紀前に所属した生物部は、戦後まもなく発足した伝統ある文化部だ。現部員(10人)が全員で取り組んでいるのが、絶滅が懸念されるミゾコウジュやタコノアシ、ミクリなどの植物の分布調査。静岡市を代表する湿地「麻機沼(あさはたぬま)」やその周辺の河川を歩き、こまめに記録を取る。調査は20年に及び、金原悠太部長(3年)は「ミクリのような雑草に見える植物が、水の浄化などの役割を担うことが分かってきた」。顧問の稲垣聖二教諭(53)は「環境変化は継続してこそ把握できる。積み重ねてきた記録を絶やさないようにしたい」と話す。

 「やりたいことに挑む」という部の伝統も引き継がれている。植物色素を使った織物の制作▽ゴマから多くの油を抽出する方法の開発▽エビやドクターフィッシュなど小動物の飼育と観察−−と、さまざまな分野に各部員が情熱を傾ける。理系女子の渡辺優奈さん(3年)は「農作物などの鳥獣被害が深刻化している。その背景を探り、野生生物と人間が共存できるようにしたい」と意気込む。=次回は25日に掲載します

卒業生「私の思い出」募集
 静岡高校卒業生のみなさんの「私の思い出」を募集します。300字程度で、学校生活や恩師、友人との思い出、またその後の人生に与えた影響などをお書きください。卒業年度、氏名、年齢、職業、住所、電話番号、あればメールアドレスを明記のうえ、〒100−8051、毎日新聞地方部首都圏版「母校」係(住所不要)へ。メールの場合はshuto@mainichi.co.jpへ。いただいた「思い出」は、紙面や毎日新聞ニュースサイトで紹介することがあります。新聞掲載の場合は記念品を差し上げます。

 ツイッター @mainichi_shuto

 フェイスブック 毎日新聞 首都圏版

 ■人物略歴

はせがわ・ひろし
 1948年静岡市生まれ。京都大大学院理学研究科博士課程単位取得退学(動物生態学)。日本学術振興会奨励研究員、東邦大教授などを歴任し、2014年から現職。76年、鳥島でアホウドリで初の生態調査を実施した。第32回吉川英治文化賞、第7回日本学士院エディンバラ公賞、第14回山階芳麿賞など受賞。著書に、第18回読書感想画中央コンクール(06年)の指定図書「アホウドリに夢中」(新日本出版社)など。ヒゲは大学院の博士課程から41年の付き合い。
https://mainichi.jp/articles/20170418/ddl/k13/100/006000c

http://archive.is/EEVwt

タグ:アホウドリ
posted by BNJ at 11:41 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: