2017年04月28日

高田守先生の生き物語り (番外編)困ったら生き物に教えてもらおう【毎日新聞2017年4月28日】

出町柳駅周辺の桜とトビ=高田守さん撮影
 4月から京都大学に勤めることになり、京都にやってきた。着任の日、美しい桜に心を奪われているうちに、私は見知らぬ土地で道に迷ってしまった。

 私のような方向音痴に限らず、誰にでもこういった経験はあるだろう。今の時代、スマートフォンさえあればすぐに自分の現在地を把握でき、目的地までの道が分かる。しかし、たまたま充電が切れていたり、携帯していなかったりしたらどうか。お手上げである。そんなとき、偶然居合わせた生き物に道を教えてもらえたら、どんなに心強いだろう? メルヘンチックに聞こえるかもしれないが、ある程度現実的な話なのである。

 私を含め、ほとんどの人は野生の生き物と会話することができない。そもそも彼らには彼らのすべきことがあり、ほとんどは我々に構ってくれない。だが、そこがいい! 「何を訳のわからないことを…」とあきれるなかれ。それぞれの生物は、それぞれにとって都合のいいルールに従い、規則的に生活している。つまり、警戒心を抱かせないよう十分な距離をとって観察すれば、たとえ会話はできなくとも、彼らの行動からたくさんの情報を得ることができるのだ。


出町柳駅周辺の桜とトビ=高田守さん撮影
 冒頭の京都の話に戻ろう。私は出町柳駅から京都大学に向かう途中、周辺を散策していて迷子になった。この時どうしたかというと、なぜかずっと出町柳駅の上空で輪を描いて飛んでいたトビの群れを利用させてもらったのである。トビを目印に、駅の方向と駅までのおおよその距離をつかみ、その時の太陽の方向と合わせて考えることで、自分がいる大まかな位置を把握することができた。大きな鳥が連なって輪を描く光景は遠くからでもよく目立ち、迷子の私が道を教えてもらうには、もってこいの存在だった。皆さんがもし京都で道に迷ったら、情報源として使ってみてるのも一興だろう。

 似たような例としては、カラスがねぐらにしている寺社の場所を知っていれば、早朝と夕方に限って、カラスの飛んで行く方角から自分の位置を割り出すことができるだろう。

 人間よりもずっと敏感な感覚を持つ生き物からは、得られる情報も多い。例えばキジが生息している地域なら、地震が来る少し前に、それを教えてもらうことができる。キジは地震の揺れがくる直前、普段とは違う鳴き声を発する。初期微動を感じて驚くためとみられ、私はかなり確度が高いと考えている。東日本大震災の後、千葉にいた私も何十回と余震に見舞われたが、震度3以上の揺れが来る時は必ずと言っていいほど、キジのその鳴き声が聴こえた。キジが鳴いてから大きな揺れがくるまでには、数秒間の猶予しかないが、それでも火は消せたし、机の下に潜ることはできた。

 昨今、地震速報の正確性向上が課題となっている。地震計の値だけでなく、生き物の行動などさまざまな情報を組み合わせることで、より正確な予測が可能になるかもしれない。我々人間が生き物から教わることは、まだまだたくさんあるはずだ。(動物行動学者・高田守)=次回は5月31日掲載予定

 たかた・まもる 1984年千葉県生まれ。東京農工大農学部卒。英ケンブリッジ大行動生態学研究室留学を経て、東京農工大大学院連合農学研究科博士課程修了。京都大大学院農学研究科特定助教。専門は動物行動学、進化生物学。現在は生き物の家族や社会の研究に携わっている。趣味の「金魚すくい」は毎年全国大会上位の腕前。
https://mainichi.jp/articles/20170425/mog/00m/100/001000d

http://archive.is/iuoAp

posted by BNJ at 22:11 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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