2017年05月13日

こちらいきもの研究会 「ぼっちペンギン」の実態やいかに? 後輩思いのマイペース【毎日新聞2017年5月13日】

 京都市動物園(京都市左京区)に風変わりなペンギンがいる。メスのフンボルトペンギン「ナンテン」(10歳)だ。群れから離れ、1羽で壁に向かってたたずんでいることが多く、その哀愁漂う姿がネット上でも話題に。「モテない」「エサを食べるのが下手」とのうわさで、人ごととは思えない。親近感を募らせ、会いに行ってきた。

 好天の休日、午前11時。家族連れでにぎわう園内を縫うように進む。案内してくれる山下直樹さん(54)は、ナンテンの名付け親だ。さみしげな写真がツイッターなどで広まったことについては「共感し、興味を持ってもらえるのはうれしい。ただ、名前をもじって『難点だらけ』とか、孤独な『ぼっちペンギン』と呼ばれているのは、ちょっと……」。複雑な心境のようだ。

 飼育プールに到着すると、確かにいた。壁をじっと見つめて立つペンギンが、2羽も。山下さんに聞くと「腕に付けたバンド『翼帯(よくたい)』の色で判別できます。ナンテンは左が緑で右が赤。何もつけていない方は、よく間違えられるのですがナズナです」。掲示されたナンテンの紹介文には「コロッとした寸詰まりな体形が特徴」とあった。寸詰まりって。小柄と言ってあげて。

 ナズナは29歳と高齢で目が悪いため1羽でいるのだが、ナンテンの理由はよく分からない。「仲間外れにされているわけではなく、単独行動が好きなだけ。個性として見守っています」。昔から「協調性がない」と怒られてきた身としては、ありがたい言葉である。

 7年前に天王寺動物園(大阪市天王寺区)からやって来たナンテン。ちょうど適齢期なのに、「オスとペアになったことは一度もない」。モテないのは本当のようだ。でも、弁護したい。ここにいるのはオス4羽、メス9羽。しかも3ペアが今、卵を温めているところ。ペンギンはそんなにペアを変えないので、圧倒的に出合いが少ない! ぜひオスを増やしてください。「すぐには難しいですが……。まだまだこれからですよ」

 正午過ぎには臨時のご飯タイムがあった。エサはアジ。水中でよく見えないが、一口で器用に丸のみできないとか、食べ方が下手なのも事実らしい。その後は満足そうに、プールサイドの石にプヨッとしたおなかをもたれさせて昼寝していた。かわいい。

 ここからは1人で腰を据えて観察することに。しばらくすると、昨年生まれたヒナたちの見分けがついてきた。メスのセリとナデシコ、オスのスギナの3羽だ。遊んでほしそうな仕草でナンテンを誘い、一緒にプールに飛び込んだ。追いかけっこのスタートだ。意外と付き合いがいいじゃないか。

 午後2時、プールを出たり入ったりしながらも、まだ泳いでいる。午後3時、興が乗ってきたのか、ますますスピードを増してきた。弾丸のようだ。時々、何羽かトビウオのように水面から飛び出ている。午後4時、見ているこちらが疲れてきた。なんでそんな元気なんだ。他の大人は巣穴にこもっているぞ。

 そして午後5時前、閉園を知らせる放送が流れるころ。ナンテンは再び壁に向かって立っていた。半日かけて検証した結論、ナンテンは思っていた以上にマイペースだし、楽しそうに生きている。後輩にも優しい。それより自分の心配をしたほうが良さそうだ。

(ライター・福家多恵子、写真も)

フンボルトペンギン
 南米の西側のフンボルト海流が流れる地域に分布。体長は50〜70センチ程度。比較的暖かい地域に生息するため、日本国内でも飼育しやすい。暑すぎると日陰で休んだり、くちばしを開けて熱を逃がしたりする。

京都市動物園
 京都市左京区岡崎法勝寺町の岡崎公園内、電話075・771・0210。地下鉄蹴上駅から徒歩約5分、東山駅から徒歩約10分。開園時間(3〜11月)は9〜17時。月曜定休。入園料は600円、中学生以下無料。

 ■人物略歴

ふくや・たえこ
 大学で生物研究同好会に在籍して以来、身近な生き物の不思議を探求するのがライフワーク。基本的に単独行動が好きな「ぼっちライター」。写真奥の看板から顔を出しているのが筆者、それを見ている左のペンギンがナンテン。
https://mainichi.jp/articles/20170513/ddf/012/070/018000c

http://archive.is/IFlVF
壁に向かい立ち尽くす… 「ぼっち」ペンギン人気【朝日新聞デジタル2017年4月4日】

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