2017年05月14日

(科学の扉)外来種、根絶への戦略 ヘリで殺鼠剤、無人島から一掃【朝日新聞デジタル2017年5月14日】(エトピリカ/ケイマフリ/ユルリ島/モユルリ島/既報関連ソースあり)

グラフィック・佐藤慧祐
 本来の生息地と異なる地域に、国内外から人の手で持ち込まれ生態系を脅かす外来種。戦略無しに駆除をしようとしても、なかなか太刀打ちできない。だが、駆除の成功例から、根絶や被害を防ぐための戦略的な戦い方が見えてきた。

 蔓延(まんえん)した外来種でも、根絶できる――。3月、北海道からそんなニュースが飛ログイン前の続きび込んできた。根室市沖の無人島、ユルリ島、モユルリ島で、ドブネズミの根絶に成功したという。

 両島は、エトピリカやケイマフリなど、貴重な海鳥の繁殖地として知られる。だが、本来なら島にいなかったドブネズミが人によって持ち込まれて繁殖。ドブネズミに襲われ、多くの種類の海鳥が数を減らした。

 環境省釧路自然環境事務所などは、ドブネズミを駆除する方法を検討。殺鼠(さっそ)剤を大量に散布することで一気にやっつけることにした。付近で操業する漁業者らとも協議して、散布する時期などを慎重に見極め、2013年10月下旬〜11月上旬に、約200ヘクタールのユルリ島に4回計約12トン、約40ヘクタールのモユルリ島に5回計3・4トンの殺鼠剤をヘリコプターから散布した。

 14〜16年度にモニタリングしたところ、両島ともドブネズミは確認されず、今年3月に根絶が宣言された。うまく条件が整えば、広がった外来種を一掃できることが証明された。同事務所の担当者は「本土から離れた無人島という環境と、地元の理解があった上で、効果的な対策が取れた。引き続き再侵入を許さないようにしたい」と話す。

 ドブネズミが根絶されたことで、海鳥の数も回復傾向にある。ケイマフリは13年度には114羽だったが、投下後3年間は141〜241羽と増えた。13年度に両島で11羽だったクイナも27〜47羽へと増加した。

 広がった外来種を一掃する取り組みは他の地域でも進んでいる。鹿児島県・奄美大島でのマングース対策では、「バスターズ」と呼ばれる特殊チームが一気に対策に乗り出したことで、島内での密度を低下させることに成功。根絶も見えてきている。

 ■「蔓延させない」

 だが、蔓延した外来種を一掃できるケースはごく一部に限られるのが現実だ。肝心なのは、外来種が広がり始めた段階での初期対応だ。

 1993年に広島で確認されて以来、10以上の都府県に広がったアルゼンチンアリ。地域のアリ類を壊滅させ、生態系を変える。また、かまれると非常に痛いため、人の被害も見過ごせない生物だ。

 アルゼンチンアリを駆除する方法を、国立環境研究所が開発した。殺虫成分「フィプロニル」を使った毒エサを用いる方法だ。毒エサは半日ほどしてから効果が出てくるため、働きアリに持ち帰らせることで巣ごと根絶するのだ。東京都大田区で2011年度にこの手法を試したところ、99・8%という高い防除効果が出た地区もあった。

 非常に有効な方法だが、問題もある。毒エサは在来アリも持ち帰るため、一部の在来アリが巻き添えになってしまうのだ。

 だが、アルゼンチンアリが地域に定着し始めた初期段階に毒エサを投入すれば、犠牲を上回る効果が得られるという。具体的には、在来のアリに多少の犠牲が出ても、アルゼンチンアリごと空白地帯になった場所には、他の場所の在来アリなどが自然に移住してくる。大田区では、在来アリだけでなく、アルゼンチンアリに食べられたり、追い払われたりしていたと見られるほかの昆虫やダンゴムシの仲間、クモなども戻り、生態系が回復してきた。

 国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長は「外来種が増えきった後では、希少種などを巻き添えにする手法は使えなくなる恐れがある。地域と協力し『いち早くつぶす』というコンセンサスのもと対応することが重要だ」と話す。

 ■「侵入させない」

 外来種対策で最も大切なのは、侵入を許さないことだ。それには「水際対策」が有効だ。

 環境省が指定する特定外来生物は、輸入や野外へ放すことなどが禁じられる。これまでに約150種類が指定対象となった。オオクチバス(ブラックバス)、アライグマ、カミツキガメなど、指定されている生物の中には、すでに生態系や農業に大きな被害を与えているものも少なくない。

 一方、定着・拡大前の指定も進む。16年には24種類、17年にも14種類が新たな指定対象に決まったが、そのうち国内未定着は16年は7割、17年も8割を占めた。アフリカの湖で在来の魚を壊滅状態に追いやった大型魚ナイルパーチや、ペットとして一部で根強い人気がある一方で、在来クワガタムシとの競合や交雑が懸念される外来クワガタの一部も対象になった。

 北海道大学の池田透教授(保全生態学)は「『元栓』を締めるのが外来種対策のスタートとして肝心だ。国内に入れない、飼わせないという効果は大きい」と指摘する。ただ、特定外来生物だけが生態系に悪影響を与えるわけではなく、影響が十分に分かっていない外来種も少なくない。池田教授は「特定外来生物に指定されていないものは『セーフ』と考えるのではなく、外来種は注意して扱う必要があるという啓発も重要だ」と話す。(小坪遊)

 <敵を知れば効果大> 外来種対策では、定着後、定着初期、水際などの段階に応じた戦略だけでなく、対象となる生物の生態や行動などを知ることも重要だ。

 北海道大は、農業被害を出すアライグマの生態を詳しく調べることで、アライグマが入りたくなるような巣箱型のわなを開発。大分県では大きな効果を上げている。

 東京・小笠原では外来種同士の「食う」「食われる」の関係を分析。先にウシガエル、後にブタを駆除し、ブタを先に駆除した場合にウシガエルが爆発的に増えるリスクを回避した。

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「アメリカ杯間近 進化する高速ヨット」の予定です。ご意見、ご要望はkagaku@asahi.comメールするへ。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12936420.html

http://archive.is/uQEH2
ケイマフリ・エトピリカ 外来種ドブネズミ根絶か 根室・ユルリ島とモユルリ島 /北海道【毎日新聞2017年3月21日】
ドブネズミ根絶可能性 根室ユルリ、モユルリ島【読売新聞2016年12月8日】(エトピリカ/ケイマフリ)

海鳥の島 ネズミから守れ がれきで漂着? 宮城・女川【毎日新聞2017年1月10日】(既報1ソース/ウミネコ/ウトウ)
ネズミ上陸、オオミズナギドリ繁殖に影響? 京都・舞鶴沖の冠島【京都新聞2016年8月30日】(既報1ソース)
海鳥繁殖地にドブネズミ 北海道・天売島、環境省が確認【どうしんウェブ2016年2月11日】
北海道・天売島でネズミ被害増 海鳥保護の猫搬出事業が影響か【どうしんウェブ2016年1月7日】

posted by BNJ at 11:59 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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