2017年05月21日

美を継ぐ 上村三代 <7>花鳥画への扉【読売新聞2017年5月21日】

 松篁と淳之が花鳥画に惹ひかれるきっかけになった出来事がある。別々の出来事が驚くほど似ているところが、父と子らしくて微笑ほほえましい。

 松篁は6歳の頃、文鳥を飼い始めた。ある時、餌をやろうとしたら、かごから逃げた。

 「あっと思った瞬間、庭のカエデにとまった文鳥の胸から腹にかけてのえんじ色が、輝くような若葉の色に映えてなんとも奇麗やった」。父は息子に、印象深い彩りの記憶をうれしそうに語った。

 淳之も幼い頃、コマドリを逃がした。網で捕まえようとしたが、松篁に「ええからほっとけ、ほっとけ」と言われて、追うのをやめた。

 コマドリは、池に浮いていたツバキにとまって水浴びを始めた。「逃げてもかまへんからじっとするんやで」。松篁が声を潜めた。

 羽がふるえ、細かなしぶきがあがった。日差しを受けて水滴がきらめき、周りの木々の緑に溶け込んでいく。2人でじっと見入った情景が、脳裏に焼きついている。

 「結局、コマドリは戻ってきました。よう慣れていたからかなあ」

 偶然が生み出す光景が、格別な美を見せることがある。

 花鳥画への扉が開いた。淳之をいざなったのは、心揺さぶる一瞬を知る松篁だったのか。(敬称略)
http://www.yomiuri.co.jp/local/kyoto/feature/CO029414/20170519-OYTAT50026.html

http://archive.is/GGnIQ

posted by BNJ at 11:54 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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