2017年06月03日

くらしナビ・ライフスタイル 海汚す微細プラスチック【毎日新聞2017年6月3日】(他1ソース)

回収したごみを品目別に集計するボランティアら=神奈川県藤沢市の鵠沼海岸で2016年9月、一般社団法人JEAN提供
 プラスチックごみによる海洋汚染が深刻だ。目に見えるごみに加え、近年では微細な「マイクロプラスチック(MP)」が生態系に及ぼす悪影響も懸念されている。6月5日は国連が定めた「世界環境デー」。私たちの日常的な消費が引き起こす問題について、考えたい。

 ペットボトルやレジ袋、包装容器……。私たちの生活にあふれるプラスチック。その生産量は世界で年間約3億1100万トンに上るという。そのうちおよそ1億トンがごみとなり、少なくとも800万トンが海に流出しているとされる。世界経済フォーラム(ダボス会議)が昨年、2050年までに海洋中のプラスチックが魚の総重量を上回るという試算を発表するほど、汚染は進んでいる。

 MPは、海に流出したプラスチックごみが波風や紫外線によって細かく粉砕されたもの。08年に米海洋大気局が開いたワークショップで、5ミリ以下のものと定義された。10年以降、欧米の学会で取り上げられることが増え、国際的な関心が高まっている。国連環境計画(UNEP)は5月上旬、MPを含む海洋ごみを規制する条約制定を目指す初めての会議を開いた。

 ●有毒物質の運び屋

 MPの問題は、ポリ塩化ビフェニール(PCB)やDDT(殺虫剤)といった海中の有毒物質を吸着し、プランクトンにも取り込まれることだ。東京農工大の高田秀重教授らは01年、MPが有毒物質の「運び屋」の役割を果たしているとする論文をまとめた。「MPを摂取したプランクトンを魚や貝が食べ、それを鳥や人が食べることで有毒物質が濃縮される。今のところ人体に影響がある量ではないが、見過ごせる問題ではない」と注意を促す。東京農工大の調査では、MPに含まれる有毒物質の濃度は同じ体積の海水と比べ、最大で100万倍。MPがカキの生殖能力を低下させるといった海外の研究結果もある。

 PCBやDDTは現在、国内で製造が禁止されているが、50年ほど前は乱用されていたため、海底に多量に沈殿しているとみられる。高田教授によると、東京湾の底には水中の約3万倍のMPが含まれていた。「海底で有毒物質を吸着したMPが浮上し、それを魚介類が食べれば過去の汚染が再び広がる恐れがある」と指摘する。

 ●世界平均の27倍

 世界的な問題意識の高まりを受け、国も調査を始めた。環境省は15年から、東京海洋大などに委託して日本周辺の沖合と東京湾や駿河湾などの沿岸計100地点以上を調べた。九州大の磯辺篤彦教授が分析した結果、日本周辺の沖合には世界平均の27倍にあたる172万粒(1平方キロ当たり)のMPが存在すると推計され、日本海北部や九州周辺で比較的濃度が高かった。別の調査では、人間の生活圏から遠く離れた南極海でもMPが採取された。環境省海洋環境室の森田紗世室長補佐は「潮流や季節風の影響で流れ着きやすい場所があること、汚染が世界中に広がっていることを示している」とした上で「実態把握を進めるため、今年度は海洋ごみ対策の予算を拡充し、調査海域を広げた」と説明する。

 汚染は海にとどまらない。東京理科大の二瓶泰雄教授らは15年から、国内23河川を調べたところ、北海道から沖縄までの全地点でMPが見つかり、市街地を流域とする川で多い傾向があった。「汚染は経済活動と関連しており、川から海にも流れ込んでいる」と二瓶教授は懸念する。

 ●洗顔料、衣類からも

 MPのほとんどは粉砕されたプラスチックごみだが、洗顔料や歯磨き粉に含まれるスクラブも「マイクロビーズ」と呼ばれるMPの一種だ。米国では15年、マイクロビーズの化粧品への配合を段階的に禁止する連邦法が成立。一方、日本ではメーカーの自主規制にとどまる。16年3月、日本化粧品工業連合会が会員企業約1100社に対して使用中止を呼びかけ、大手十数社は中止の方針を表明しているが、薬局やスーパーの店頭にはいまだに多数のスクラブ入り商品が並ぶ。そのほか、衣類の化学繊維やメラミン樹脂製スポンジからもMPは流出している。

 「30年前から毎朝、自宅周辺の道路でごみ拾いをしているが、住宅街でも1時間ほどで2、3袋がいっぱいになる。そうしたごみが雨で流され、最終的に海に集まる」。そう話すのは、1990年から海岸の清掃と調査に取り組む一般社団法人JEANの小島あずさ事務局長。JEANは米国の自然保護団体が主導する海岸清掃活動に参加。毎年秋、全国各地の有志が清掃で回収したごみを品目別に集計している。プラスチック片の割合は90年代から常に上位で、近年は最も多くを占める。「プラスチックは軽くて丈夫なのが利点だが、それはごみになると遠くまで広がる、生物に絡まって取れないといった欠点に変わる」と警告する。

 微細なMPは、一度海に広がると回収できない。最も有効な対策は、プラスチックごみをなるべく出さないことだ。小島さんは「日常でプラスチックを全く使わないことは不可能なので、安易に使い捨てない、レジ袋をもらわないといったことから始めてほしい」と訴える。また「プラスチック製品を割高で売る工夫をしている国もある。マナーやモラルに頼るだけでは解決しない」とも考える。

 欧州連合(EU)は14年、加盟国にレジ袋削減案策定を義務づけ、1人年40枚に減らす目標を掲げた。フランスでは昨年、20年以降に飲食店での使い捨てプラスチック容器提供を禁止する法案が成立。しかし日本ではそうした法規制や数値目標はなく、1人平均年300枚のレジ袋を消費しているとされる。高田教授は「レジ袋の有料化は自治体任せで、業界団体の反対もあり進んでいない。国がイニシアチブを取り、流通システムの見直しを社会全体で考えるべきだ」と強調する。【野村房代】
https://mainichi.jp/articles/20170603/ddm/013/040/017000c

{知る} 微細化「マイクロプラスチック」【読売新聞2017年6月3日】
回収困難世界の海汚染

 5ミリ・メートル以下の小さなプラスチックの破片「マイクロプラスチック」が、世界中の海で検出されている。微小なため回収が難しく、誤飲によって生物や生態系への影響も懸念される。国際的な対応が必要で、実態把握に向けた調査が進められている。(冨山優介)

大阪湾での調査で海水を採取する京都大のグループ(2015年11月)(田中周平・京都大准教授提供)
大阪湾での調査で海水を採取する京都大のグループ(2015年11月)(田中周平・京都大准教授提供)
マイクロプラスチックの拡大写真。目盛りは0.18ミリ (田中周平・京都大准教授提供)
マイクロプラスチックの拡大写真。目盛りは0.18ミリ (田中周平・京都大准教授提供)
琵琶湖や大阪湾で検出されたマイクロプラスチック(田中周平・京都大准教授提供)
琵琶湖や大阪湾で検出されたマイクロプラスチック(田中周平・京都大准教授提供)
■生態系に影響

 プラスチックは、主に石油を原料とする高分子がつながってできている。ペットボトルや包装フィルム、部品の材料など幅広く使われ、生活に欠かせない。化学的に安定した物質だが、紫外線や熱、波の力を繰り返し受けると微細化が進む。これがマイクロプラスチックになる。

 国内各地で調査している高田秀重・東京農工大教授(環境化学)は「プランクトンや小魚などが餌と間違えて食べると、傷つく恐れがある」と指摘。さらに、「マイクロプラスチックは汚染物質を吸着しやすい。食べた生物の体内に汚染物質を運び、ため込んでしまう」と話す。

 小魚が食べたマイクロプラスチックは、その小魚を食べる大型の生き物たちの体内に蓄積されていく。2015年にドイツで開かれた主要国首脳会議の宣言では、「海や沿岸の生物や生態系に直接影響し、潜在的には人間の健康にも影響しうる世界的な課題」と記された。

 環境省によると、日本の沿岸や沖合の各地でも検出されている。調査の一例では、日本周辺海域では1平方キロ・メートル当たり172万個が存在し、世界の海全体に比べると27倍も多かった。同省は「継続的に調査し、実態を把握していく」と説明する。


■南極でも

 影響は極域にも広がっている。九州大や東京海洋大の研究チームは昨年9月、南極海でマイクロプラスチックを検出したと発表した。多い場所では1平方キロ・メートル当たり28万6000個。北半球の平均的な密度に匹敵する数値だ。

 チームの磯辺篤彦・九大教授(海洋物理学)は「長い年月をかけて運ばれたものがほとんどだろう」とした上で、「人間の活動から最も遠い南極にも存在していた。地球上のどこで見つかってもおかしくないことを示している」と話す。

 田中周平・京都大准教授(環境工学)らのグループは琵琶湖や大阪湾で調査を続けている。16年、琵琶湖の南湖の6か所で行った調査では、1立方メートルの水の中に0・21〜6・51個のマイクロプラスチックが見つかった。ほとんどが、レジ袋や包装フィルムなどに使われるポリエチレンやポリプロピレンだった。また、琵琶湖のワカサギを調べたところ、31匹のうち9匹の消化器官からマイクロプラスチックを検出した。

 田中准教授は「外洋と違って琵琶湖は閉鎖された水域なので、周囲で捨てられたごみなどの影響を受けやすい」と語る。今後、滋賀県と共同でさらに詳しく調査を進める予定だ。

■海岸でごみ回収を

 愛媛大の日向博文教授(沿岸海洋学)らのグループは、東京都・伊豆諸島の新島村の海岸で、マイクロプラスチックがどれくらい海岸にとどまるかの検証を続けている。プラスチックに見立てた小さな木片に目印を付けて散布し、追跡する。マイクロプラスチック程度の大きさなら10日ほどで海へ流れ出る一方、10センチ程度なら7、8か月滞留するという試算が得られた。

 日向教授は「海岸に長期間残るうちに、紫外線などでマイクロプラスチックになり、微細化すればすぐに海へ流れてしまう」と指摘。「海岸に捨てられたプラスチックごみを片づけることは、マイクロプラスチックの発生を抑える有効な方法だ」と話している。

手離れた後考えて

 神戸市を拠点に、海岸のごみの調査を続けている団体「クリーンアップ関西事務局」の古川公彦・共同代表=写真=に、海岸のごみの現状を聞いた。

 我々の団体は1990年から、主に兵庫県の須磨海岸のごみの実態調査を続けている。社会人15人程度のメンバーが中心で、企業など協力してくれる団体とともに年2回、ごみの種類と量を記録している。

 プラスチック片の量は、ごみの中で常に1、2位の多さで、この十数年変わっていない。99年に鳥取砂丘で調べた際も、傾向は同じだった。数ミリ程度のものが多いが、より微細化すると回収は難しく、人の手では拾いきれないマイクロプラスチックは多くあるだろう。

 プラスチックは便利だが、化学的に安定であるために、環境の中に残り続け、生物への影響も出ている。自分の手を離れたプラスチックの行く末がどうなるのか。そこに思いを巡らせてほしい。
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO022791/20170502-OYTAT50018.html?from=tw

http://archive.is/kIhBW
http://archive.is/Owf34
「世界で最もプラスティックゴミの密度が高い場所」は、世界遺産の無人島だった:調査結果【産経ニュース2017年5月29日】
米科学誌サイエンス、論文の撤回を発表【朝日新聞デジタル2017年5月5日】
<社説>微細プラスチック 海を守る多角的な対策を【琉球新報2017年3月23日】
健康被害の可能性も?マイクロプラスチック問題とは【ダイヤモンド・オンライン2017年1月21日】
プラスチック海洋汚染 最果て南極も 九大など初検出【毎日新聞2016年9月26日】
社説 海洋ごみ汚染 国際連携で拡散を防止したい【読売新聞2016年8月26日】
微細プラスチック、魚から 吸着の汚染、体内蓄積 海洋生態系に脅威【朝日新聞デジタル2016年6月23日】
琵琶湖で直径5ミリ以下微細プラスチック見つかる 京大調査【産経ニュース2016年3月18日】
(教えて)海を漂流するごみが問題になっているの?【朝日新聞デジタル2015年10月5日】
海鳥の90%がプラスチックを誤飲、最新研究で判明 増える一方の海洋ごみが、鳥たちの命を脅かす【ナショナルジオグラフィック日本版2015年9月7日】
海洋漂流ごみ、大半がプラ 横浜寄港のスイス環境団体【共同通信2015年7月28日】
プラスチック破片:南極海で調査 九州大など、世界初の実施へ【毎日新聞2015年7月17日】
過去60年間で世界の海鳥が7割も減少していた?海洋生態系へ影響に懸念の声が広がる【IRORIO2015年7月14日】
微小プラ汚染、外洋まで 環境省、日本周辺で調査 生態系への影響を懸念【朝日新聞デジタル2015年4月24日】
プラスチックごみ27万トン浮遊 世界の海、粒子5兆個【共同通信2014年12月11日】

posted by BNJ at 12:49 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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