2017年06月09日

誤射のその後 雲南コウノトリ/下 守れなかった悔しさ 雲南市教委文化財課長・山崎修さん(52) /島根【毎日新聞2017年6月20日】(上中下)

「コウノトリを守れなかった。悔しくて、残念」と語る山崎修さん=島根県雲南市で、山田英之撮影
環境学習の拡大に意欲
 雲南市大東町で今年3月、国の特別天然記念物・コウノトリのペアの巣作りを確認してから観察の中心になったのは、雲南市教育委員会だった。市教委文化財課長、山崎修さん(52)は「サギの駆除で実弾を使っているとは知らなかった。猟友会への注意喚起まで思いが及ばなかった」と吐露する。

 「サギと間違えるはずがない」「もう雲南市には旅行に行かない」。市役所にも電話やメール、フェイスブックで多くの意見が寄せられた。今月2日までに市教委文化財課に届いたメールだけで110件以上。ほとんどが痛烈な批判だった。「意見には全て目を通している。まだ現在進行形で、振り返って考えるゆとりがない」と山崎さん。

 巣作りをしたコウノトリを気遣って、地元住民は、こいのぼりの掲揚や草刈り機の使用を一時期控えた。巣の近くを通るJR木次線の枕木交換工事の延期をJR西日本に申し入れるなど、市教委も地域と一緒に見守ってきた。

 繁殖に影響を及ぼし、地元住民のプライバシーを侵害する恐れがあるという理由で、市教委は報道各社に現地取材を控えるように要請し、巣のある場所を伏せてきた。

 そこまで神経を使った中で起きた誤射。山崎さんは「コウノトリを守れなかったことが悔しくて残念。親鳥とひなを引き離さざるを得なくなってしまった」と悔やむ。


ひなが保護され、空になった巣=島根県雲南市で、山田英之撮影
 市教委の観察によると、兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園にひな4羽が保護された翌日の5月22日も、残された雄の親鳥は日中の約2時間、巣にいた。23日は5分、24日は3分と滞在時間が短くなり、26日に雲南市を離れた。29日午後には石川県かほく市に移動したことが確認された。

 市教委や郷公園は、7月上旬以降の雲南市内でのひな放鳥に向けて協議。地元住民でつくる春殖(はるえ)地区振興協議会は、放鳥時にセレモニー開催を提案している。

 市教委も「事故の後、華々しい式典はふさわしくないかもしれないが、元気に育つ願いを込めて、子どもたちと放鳥できれば、学習のきっかけにもなる」とみている。

 巣に近い市立西小学校では、県立三瓶自然館サヒメル(大田市)の協力で、野鳥やコウノトリについて全校児童の学習会をした。「ひなの地元放鳥へ、今できることを精いっぱいやるしかない」と語る山崎さんは、コウノトリを通して自然環境を学ぶ授業を、市内の全小学校に広げることを思い描いている。【山田英之】
https://mainichi.jp/articles/20170609/ddl/k32/040/499000c

誤射のその後 雲南コウノトリ/中 「弁解できない事故」 県猟友会副会長・細田信男さん(70) /島根【毎日新聞2017年6月7日】
誤射で死んだコウノトリ=島根県雲南市で、同市教委提供
再発防止 強く誓う
 「コウノトリをなぜ死なせたのか」「鳥の種類を間違えるような人間に銃を持たせるな」−−。雲南市で国の特別天然記念物・コウノトリがハンターの誤射で死んだのを受けて、県猟友会には県内外から多くの批判や苦情が寄せられた。留守番電話のメッセージが録音しきれないほど殺到した日もあったという。


再発防止策をまとめた書類を手にする細田信男さん=松江市で、山田英之撮影
 「絶対に起こしてはいけない事故を起こしてしまった。一般の人は銃を持つことができない。どんな理由を付けても弁解することはできない」。県猟友会副会長で、松江市猟友会長の細田信男さん(70)は、県や雲南市を訪れて謝罪し、再発防止策を説明した。

 県猟友会は5月24日、出雲市内で緊急役員会議を開いた。県内各地区の猟友会長が、有害鳥獣の捕獲を単独でしない▽誤認しやすい希少鳥類の飛来情報を入手した時は捕獲を自粛する▽行政と希少動物の情報共有に努める−−ことを決めた。

 細田さんによると、誤射した男性は、コウノトリの雲南市への飛来を認識していたが「正面から見たら白く、サギと間違えて撃ってしまった」と話しているという。雲南署は男性から事情を聴いている。

 サギは、水田でイネの苗を踏み荒らすなどの農業被害をもたらすとして、雲南市内では昨年度130羽を駆除した。

 細田さんは「コウノトリとサギは大きさが全然違う。実際に鳥の姿を見ていたら、見誤ることはない。出くわす可能性がある鳥の実物を事前に見ておく努力が必要だった」と指摘する。

 さらに「サギは警戒心が強く人間が50メートル以内に近寄れば、すぐ逃げてしまう。おかしいなと思う心の余裕がなかったのではないか」とみる。2人1組で活動していれば、1人が判断を誤っても、もう1人が止めることができたのではないかと悔やむ。

 雲南市によると、誤射の翌日から市内のサギの駆除を見合わせている。細田さんは「有害鳥獣の駆除は、農業被害に悩む農家を助けるため。事故を起こして駆除を中止すると農家に迷惑をかけてしまう。再発防止を確実にしなくてはならない」と話す。

 空砲で鳥を追い払うことや、コウノトリとサギを撮影した写真を見て色や大きさの違いをハンターが学ぶ研修開催を提案する。

 県猟友会は兵庫県立コウノトリの郷公園(同県豊岡市)に保護されたひな4羽の餌代のために、会員から支援金を集めることも申し合わせた。【山田英之】
https://mainichi.jp/articles/20170607/ddl/k32/040/441000c

誤射のその後 雲南コウノトリ/上 「子育ての地」に誇り 巣を観察してきた石川幸男さん(71) /島根【毎日新聞2017年6月6日】
ひながいなくなった巣の方向を見る石川幸男さん=島根県雲南市で、山田英之撮影
地元放鳥、父子再会が夢
 「幸せを運ぶといわれるコウノトリが、産卵、子育てをする場所として選んでくれた。自然豊かな地域であることを誇りに思える心のよりどころで、象徴的な存在だった」。雲南市の春殖(はるえ)地区振興協議会会長の石川幸男さん(71)は同市大東町に巣を作った国の特別天然記念物・コウノトリのペアを見守り続けてきた。


巣を作ったコウノトリのペア=島根県雲南市大東町で2017年3月15日、県立三瓶自然館提供
 ペアの巣作りが目撃されるようになったのは今年3月。国内の野生のコウノトリは1971年に絶滅。野生復帰を目指して、兵庫県立コウノトリの郷公園(同県豊岡市)が人工飼育したコウノトリを野外放鳥し始めた2005年以来、島根県内にも飛来していたが、巣作りが確認されたのは初めてだった。

 地区の交流センター前には多い日には、住民やアマチュアカメラマンら約30人が訪れた。大阪や広島、岡山から来た人もいて石川さんも巣の観察が日課になった。地元猟友会ハンターの誤射で5月19日に雌の親鳥が死んだのは、コウノトリの故郷として地域の存在感が高まるのを期待していた矢先だった。

 一報を聞いた石川さんは「身近な場所でひなが巣立つ姿が見られなくなった。心に穴が空いたような気持ち」と話す。今でも鳥が上空を旋回していると、「コウノトリが来たのかもしれない」と思い、つい見てしまう。


春殖交流センター前に供えられたコウノトリの写真や花束=島根県雲南市で、山田英之撮影
 飼育・放鳥に取り組むコウノトリの郷公園に、ひな4羽が保護された後も残された雄の親鳥は数日間、巣の中を見たり、くちばしで巣の中を探ったりする様子が見られた。交流センター前には誤射の後、コウノトリの写真と花束、飲料水が供えられていた。写真に手を合わせる人もいるという。

 「人工飼育で成長した後、ひなを雲南市の巣の近くで放鳥してほしい」「地元の子どもに、ひなの命名をさせてほしい」−−。誤射から10日たった5月29日、春殖地区振興協議会は、市に要望書を出した。

 雄の親鳥は14年に生まれ、15年に福井県越前市で放鳥された。「げんきくん」の愛称がある。放鳥時は毎日新聞社会面でも報道され、話題になった。

 春殖地区の住民が今、夢見るのは、ひな4羽が雲南市で放鳥され、「げんきくん」との再会を果たすこと。「今回のことを教訓に多種多様な生き物が共存できる地域になりたい。雲南生まれのコウノトリにも愛称を付けて、地元の子どもたちに愛着を持ってほしい」と石川さんは願っている。【山田英之】

   ◇

 誤射によるコウノトリの死は、県内外の多くの人に衝撃を与えた。郷公園によると、05年の野外放鳥以来、放鳥したコウノトリが誤射で死んだのは初めてのケース。地元の関係者は今、何を思っているのか。3回にわたって紹介する。
https://mainichi.jp/articles/20170606/ddl/k32/040/459000c

http://archive.is/TNxYC
http://archive.is/BljuS
http://archive.is/KJgA7

posted by BNJ at 22:05 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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