2017年06月30日

ライチョウの糞は地球温暖化を覚えていた【サイエンスポータル2017年6月30日】(既報3ソース)

動物の糞(ふん)を調べると、いろいろなことが分かる。ペットなら健康状態、野生の動物なら何を食べているのか。そして富山県の寒い山岳地帯にいるライチョウの糞からは、ここのライチョウが、かつて地球温暖化で生息数が減ってしまう大ピンチを切り抜けていたことが分かったのだという。富山大学の山崎裕治(やまざき ゆうじ)准教授らの研究グループが、このほど発表した。

山崎さんらが調査したライチョウは日本にだけいる固有の種類で、北アルプスや南アルプスなどの、おもに標高2200メートル以上の高山で繁殖している。絶滅が心配されており、国の特別天然記念物にも指定されている。

ライチョウ1羽ごとの遺伝子の細かな違いを調べるため、山崎さんらはライチョウの糞を狙った。糞は腸を通ってくるので、その表面には腸の細胞が付いている。2013年と2014年の5〜7月、富山県の立山でライチョウが糞をして立ち去ったのを確認し、すぐに糞の表面を綿棒でこすって腸の細胞を採取した。これを研究室に持ち帰り、遺伝子を分析した。

ひとつの集団を作っている同じ種類の生き物でも、個体ごとに遺伝子がすこし違っていて、遺伝子には一定の「多様性」がある。ところが、集団内の個体数がなんらかの原因で減ると、特定の遺伝子が失われてしまう確率が高まり、この「多様性」は小さくなる。また、以前に比べて個体数が増えているのか減っているのかを、遺伝子の違いから推定する方法などもある。これらをもとに糞から採ったライチョウの腸細胞を調べたところ、立山のライチョウは、今から約4000年前に数が増えたことが分かった。

地球は約2万年前、最終氷期の寒さのピークを迎えていた。ライチョウは、そのころ大陸から渡ってきて日本に住み着いたと考えられている。その後、地球は温暖化し、6000年ほど前に暖かさのピークになった。世界中の氷河が解けて水が海に流れ込み、海面の水位が上がった。そのころの日本は縄文時代。関東地方などで海面が数メートルも上昇し、海は低地にはい上がった。「縄文海進」という現象だ。

高山にいたライチョウは、暑さを逃れようにも、ふもとの高温地帯を越えて別の地域に移ることは難しい。ライチョウが暮らすハイマツの茂みも狭くなり、このころからライチョウは、現在に向けて、しだいに数を減らしてきたと考えられていた。

しかし実際には、ライチョウの数は約4000年前に増えていた。ちょうど地球温暖化のピークが過ぎて気温が下がってきたころだ。そこで山崎さんらは、立山のライチョウは「縄文海進」をもたらした温暖化の危機を乗り越え、自然環境が回復するとともに数が増えたのだと結論した。

立山でライチョウの数がかつて増加したという事実は、今回の研究で初めて分かった。現在は絶滅が心配されているライチョウ。環境さえ整えば、また数が増えるのだろうか……。ライチョウの糞が伝えてくれた教訓だ。

写真 富山県・立山のライチョウのつがい。手前がメス(山崎さん提供)

図 立山のライチョウ個体数変化のイメージ。最終氷期に個体が増え、その後の地球温暖化で減少。気温が下がって個体数は回復した(山崎さんら研究グループ作成・提供)

http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/06/20170630_01.html

氷河期後ライチョウ激減 富山大の山崎准教授がDNA分析【北日本新聞ウェブ2017年6月9日】
 立山・室堂平周辺のニホンライチョウが氷河期が終わった1万年前から約6千年前にかけ温暖化の影響で激減し、その後、生息数が回復したとする研究成果を、富山大理学部生物学科の山崎裕治准教授(46)らがまとめた。ライチョウのふんからDNAを分析し、遺伝子型の歴史的な変化を読み解いた。1万年前から個体数は減り続けてきたという定説を覆すもので、日本生態学会(東京)が発行する冊子「保全生態学研究」に掲載された。

 ニホンライチョウは国の特別天然記念物で絶滅危惧種。立山一帯には現在、約300羽が生息しているとされる。富山市ファミリーパークなどが人工繁殖に取り組んでいる。

 山崎准教授は研究室の学生や県雷鳥研究会と協力し、2013年から室堂平周辺でライチョウ50羽分のふんを集め、DNAを分析。その結果、立山のライチョウは、大きく三つの遺伝子型に分類されることを突き止めた。

 さらに詳しく分析すると、約4千年前から遺伝子型が多様化していることが分かった。遺伝子型の多様性と個体数には相関関係があり、当時の立山ではライチョウの数が増えていたことが推測されるという。

 准教授らは、氷河期が終わった1万年前から最も地球が温暖だった6千年前にかけて立山のライチョウが餌不足などによって激減、その後の環境の改善で増加に転じたと結論付けた。

 准教授は「ライチョウが厳しい環境を乗り越え、現代まで生き残ってきたことが分かった。遺伝子情報を分析した結果を、今後の繁殖事業にも生かしていきたい」としている。個体数の具体的な推移を今後特定していくという。
http://webun.jp/item/7374489

6000年前 富大、遺伝子分析で新説 温暖化の緩和後に ライチョウ再増加【中日新聞2017年6月9日】
 富山県の立山連峰に生息する国の特別天然記念物「ニホンライチョウ」が、約九千年前に始まった地球温暖化で激減した後、温暖化が緩和し始めた約六千年前から再び増加し始めたとの推定結果を、富山大の研究グループがふんによる遺伝子分析で明らかにした。温暖化以降、個体数は減少し続けたという従来の見解を覆す内容。成果は五月三十日発行の研究誌「保全生態学研究」で発表した。

 富山大理学部の山崎裕治准教授(46)=保全遺伝学=らは二〇一三〜一四年、立山連峰に生息するニホンライチョウ百二羽のふんを採取し、うち五十羽の遺伝子分析に成功。三つの遺伝子型を見つけ、立山連峰以外の生息地と同程度の多様性を保持していることを突き止めた。

 さらに、遺伝子の配列の比較や過去の気候変化などを参考にして分析を進めた結果、約九千〜六千年前の温暖化で個体数が減ったが、生息環境が改善し始めた約六千年前から回復したと結論づけた。山崎准教授は「遺伝子データを詳しく分析することで血縁関係も分かり、(人工繁殖で)個体の多様性を保ちながら増やすことが可能になる。他の生息地と比較すれば、生き方の違いも調べられる」と話している。

 ニホンライチョウは特別天然記念物のため体を傷つけることができず、遺伝子調査はこれまでほとんど行われていなかった。山崎准教授は「傷つけずに調査する方法を確立できたのも一つの成果」と強調した。

 ニホンライチョウは、富山や長野県などの山岳地帯に千七百〜千八百羽が生息。立山連峰には氷河期だった約一万年前までにすみ始めたとされ、現在は約三百羽が生息している。 (山中正義)
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2017060902100011.html

過去の温暖化で激減=ライチョウ、遺伝子分析−富山大【時事ドットコム2017年6月8日】
立山山麓に生息するニホンライチョウ=富山県立山町、2016年4月
 国の特別天然記念物「ニホンライチョウ」が約9000年前に始まった地球温暖化で激減した後、温暖化が収束し始めた6000年前以降に個体数が回復したとの推定結果を、富山大の研究チームが8日発表した。ふんから採取した遺伝子を分析した。
 富山大の山崎裕治准教授は「現在は再び地球温暖化が進んでいるとされるが、当時ライチョウが激減した理由を調べることで、保護の在り方のヒントになるかもしれない」と話している。
 ニホンライチョウは富山、長野両県の山岳地帯などに1700〜1800羽が生息。絶滅危惧種に指定されており、保護の機運が高まっている。
 研究チームは2013〜14年、富山県の立山山麓に生息するライチョウ50羽のふんを採取し、遺伝子を分析した。
 遺伝子の変化の過程と過去の気候変動を比較した結果、約9000年前〜6000年前の温暖化でいったん個体数が激減し、温暖化が収まり始めた約6000年前〜4000年前に回復したと推定した。
 ライチョウは氷河期だった約1万年前までに、立山地域にすみ始めたとされる。これまでは温暖化以降、一貫して減ってきたと考えられていた。(2017/06/08-17:58)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017060801089&g=soc

http://archive.is/D7yiN
http://archive.is/Xzup9
https://megalodon.jp/2017-0609-1117-20/www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2017060902100011.html
南アルプス北岳 ケージでライチョウ保護へ【伊那谷ねっと2017年6月2日】

posted by BNJ at 22:53 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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