2017年07月20日

科学の森 「ペンギン目線」の生態調査 バイオロギングが見せる意外な姿【毎日新聞2017年7月20日】

 愛くるしい姿で、動物園での人気が高いペンギン。自然界での生態はよく分かっていなかったが、動物の体にカメラなどを取り付ける「バイオロギング」という調査手法で、南極での生態が明らかになってきた。暑い夏。ペンギンの姿でいやされてみては?【柳楽未来】

 ●高速で餌をゲット

 素早く泳いでオキアミの群れの中に乱入し、最大で1秒間に2回の速さで餌のオキアミをゲット。さらに、氷の下に張り付くように潜んでいた魚に近づき、素早く食らいついていく−−。日本から1万4000キロ離れた南極・昭和基地周辺にすむアデリーペンギンの日常生活。陸ではよちよち歩くペンギンだが、水中では想像以上のスピードだ。

 2010年末に、南極地域観測隊に参加した国立極地研究所の渡辺佑基准教授(海洋生物学)らは、基地の近くにある営巣地で約20羽のペンギンの頭や背中に、小型ビデオカメラと加速度計を取り付けた。以降、11〜12年と16〜17年の計3シーズンにわたり調査した。「ペンギンに限らず、海の動物が餌を食べる姿をここまで詳細に調べた例はない」と渡辺さん。

 渡辺さんは南極に観測隊を派遣する極地研への就職を機にペンギンの研究を始めた。もともとバードウオッチングが趣味だったため、当初は「よりによって飛ばない鳥か……」と思っていたが、すぐに魅力に引き込まれたという。

 ●氷で生活が左右

 最初の調査となった10〜11年のシーズンは、カメラなどとともに「ジオロケーター」と呼ばれるセンサーも17羽のペンギンに取り付けた。機器が定期的に光の強弱を測って緯度と経度を推定し、おおまかな位置情報を得る仕組みだ。基地周辺のペンギンは11月ごろに集まって卵を産み、ヒナが育った翌年2月ごろにどこかに消えるが、どこで何をしているのか謎だった。

 次の11〜12年のシーズン。渡辺さんは営巣地に戻ってきたペンギンから、ジオロケーターの付いたペンギン9羽の発見に成功。装置を回収し、1年間の移動軌跡を解析すると、約1500キロ離れた低緯度方向に移動して戻ってきたことが分かった。ペンギンは、南極では夏の時期に子育てをし、夏が終わるとより暖かいところを目指して“回遊”していた。「移動の方向は海流と一致しており、楽して動けるようになっていた」という。

 16〜17年のシーズンでは、風向きの影響で基地周辺の氷が流出、ペンギンは偶然、ほとんど氷のない中で生活することになった。ペンギンに取り付けた全地球測位システム(GPS)の記録によると、例年に比べて広範囲に泳いで餌を得ていたことが分かった。ペンギンは通常、氷の割れ目を探してゆっくりと歩き、餌を求めて飛び込む。氷がないとどこでも潜れるようになり、遠くまで泳いで餌を大量に獲得できていた。

 さらに、氷がなくなって太陽光が海に当たり、プランクトンが増殖して餌が増えたため例年よりペンギンは太っていた。「ペンギンにとって極めてハッピーな状況となった」(渡辺さん)という。3シーズンの調査で、自然環境の変化がペンギンの生活を大きく左右していることも分かった。

 「ペンギンは飛ぶことをあきらめて水中に特化した動物。その上、厳しい南極の環境に適応している点も興味深い。ペンギンの研究を基に、生態学の最先端を担いたい」と渡辺さんは意気込んでいる。

 ●人が行けない所で

 動物にカメラや深度計、加速度計などのセンサーを取り付ける調査手法は「バイオロギング」と呼ばれる。bio(生物)とlogging(記録)を合わせた用語で、人が見ることのできない水中や遠く離れた場所で、動物がどのように生活しているのかを記録することができる。こうした「動物目線」による調査は1960年代から始まり、アホウドリの移動距離やマグロが泳ぐ速度など、動物の生態が次々と明らかになってきた。

 バイオロギングでは動物に取り付けた機器をどう回収するかが課題だが、子育て中のペンギンは餌を取ると巣に戻ってくるため、機器を回収しやすい利点がある。

 機器は年々、高性能化しており、サメなどこれまで調査が難しかった動物の研究にもこの手法が広がっている。

https://mainichi.jp/articles/20170720/ddm/016/040/004000c

http://archive.is/WUuyA

posted by BNJ at 11:05 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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