2017年07月27日

(夏休み 科学体験:中)観察で「調査」に加わろう【朝日新聞デジタル2017年7月27日】(バードリサーチ/ベランダバードウォッチ)

帷子川の魚道がある堰=横浜市旭区

 夏休みの宿題の定番といえば自然観察。市民によるこうした記録を広く集めることで、学術研究につなげる「市民参加型調査」が広がっています。夏休みを利用して、調査に参加してみませんか。

 ■ウナギ、すみよい川は

 日本の川はウナギが生息しやすい環境なのか。公益財団法人日本自然保護協会は今夏、市民参加の調ログイン前の続き査「うなぎ目線で川・海しらべ!」を進めている。

 ニホンウナギは太平洋のマリアナ諸島沖で生まれる。幼生は海流に乗って日本などの沿岸に向かい、シラスウナギと呼ばれる稚魚に姿を変えた後、川を上って成長する。水の流量調節などのためコンクリート構造物で流れに段差をつけた「堰(せき)」は、遡上(そじょう)の妨げになる可能性がある。

 調査は、堰の高さや魚道の有無、周辺の自然の状況などについての全国的な傾向を、市民の力を借りて知るのが狙いだ。

 7月半ば、実際に川に行ってみた。

 横浜市旭区の相鉄線鶴ケ峰駅近くから、帷子(かたびら)川を下流方向へ歩くと堰があった。近くの橋の名前を記録して場所を特定する。堰は10〜20センチの落差が8段くらいある階段状で、全体が魚道のような形だ。「堰の高さ」は下から上まで合わせて身長より低いので、調査票の「100センチから200センチ」を選んだ。さらに、ウナギが生息しやすい環境にかかわる項目として、川底が人工物やコンクリートなのか、自然のままなのかなども観察。集めたデータは写真と一緒に携帯電話やパソコンを通じて送ったり、郵送したりする。

 調査には、ウナギの生態に詳しい中央大学の海部健三准教授が協力する。「アユはジャンプで堰を超えるが、壁をはって越えるウナギにとっては、すべての魚道が必ずしも遡上しやすいとは限らない」と海部准教授。「外観を市民に調べてもらえば、どんな川がどこにあるかが見えてくる」と話す。

 ツイッターで情報を募っている調査もある。

 国立科学博物館植物研究部の大村嘉人さんは、国内では小笠原諸島や伊豆半島以南など南国に分布する地衣類「アミモジゴケ」が、地球温暖化やヒートアイランドの影響によって、分布域を北に広げているとみている。だが、その広がりを研究者だけで調べるのは限界がある。ツイッター(アカウント「@lichemon5」)で、発見場所の緯度や経度の情報や写真を募っている。

 (神田明美、小堀龍之)

 ■虫や鳥、自宅の庭でも

 自宅周辺で協力できる調査もある。

 「お庭の生きもの調査」は、庭やベランダで見つけた鳥や昆虫を記録する調査だ。庭の緑が生物多様性にどう貢献するかを調べる目的で2010年度に始まった。今年10月まで8回目の調査が行われている。

 主催するのはNPO法人生態教育センター。今月、小河原孝生(たかお)理事長の都内の自宅での調査を取材した。調査は妻の孝子さんが趣味のガーデニング中にしている。「レモンの木にチョウが来ました」。「芋虫を食べてくれるアシナガバチですね」。1時間ほどで鳥3種、虫9種を見つけた。

 孝子さんは、昆虫好きだった長女の子育て中から生き物に親しんできた。調査に取り組み始めてからは図鑑で調べ、特徴をノートに記している。「調査に参加することで意識が変わった。年々、見られる虫が減ってきて心配です」

 昨年度は全国の1264人から、465種の生き物の報告があった。過去7回で計1千種を超えた。小河原理事長は「都市化が進むほど個人宅の庭は定点調査の貴重な場になる。家族で観察を楽しみながら、報告してもらえれば貴重なデータになる」と話す。

 鳥類調査が専門のNPO法人バードリサーチなどは「ベランダバードウォッチ」を進める。ヒバリやスズメなど身近な鳥が減少している可能性が指摘される一方、十分なデータがないことから05年に始まった。

 調査は2種類。自宅のベランダや縁側から見えた鳥類の種類と個体数などを記録する「家での調査」は、繁殖期(5月10日〜7月10日)と越冬期(12月20日〜2月28日)が対象。自宅から約200メートルの範囲を対象とした「家のまわりの調査」は通年が調査期間だ。

 鳥を見分ける力が多少必要だが、バードリサーチの植田睦之代表は「全国で広くデータを集める必要がある鳥類は、市民の参加が欠かせない」と話す。

 (竹野内崇宏)

 ■市民参加でデータに広がり

 こうした調査に市民が参加する意義について、東京都市大学の小堀洋美特別教授(保全生物学)は「研究者や行政が集めるデータは制約があるが、多くの市民が加わることで補完ができる。ビッグデータとしての活用の幅も広げられる」と話す。

 文部科学省科学技術・学術政策研究所の林和弘上席研究官は、これまで研究者側に限られていた知識やデータを社会で共有しながら研究を進める「オープンサイエンス化」の流れも大きいと指摘する。「市民と研究者の距離が近づき、新しい研究の形が生まれる可能性もある。学生にとって夏休みは好きな分野に没頭できる貴重な機会。同じ関心を持つ仲間や研究者にも出会って欲しい」

 だが、観察した動植物を正確に同定したり、集めたデータを学術研究としてまとめる体制を整えたりするなど、課題もある。小堀さんは「学術界や行政、市民を交えた体制をつくり、市民が『調査』だけでなく、解析や成果の公表にも参加し、目的とゴールを明確に定めた『市民科学』に取り組めることが必要だ」と話している。

 (竹野内崇宏)

 ■市民が参加できる調査・研究の例

◆自然しらべ2017 うなぎ目線で川・海しらべ!

 日本自然保護協会(03・3553・4102)

 http://www.nacsj.or.jp/project/ss2017/別ウインドウで開きます

◆お庭の生きもの調査

 生態教育センター(042・390・0032)

 http://www.wildlife.ne.jp/ikimono/別ウインドウで開きます

◆ベランダバードウォッチ〜身近な野鳥調査

 バードリサーチ(br@bird−research.jp)

 http://www.bird-research.jp/1_katsudo/veranda/別ウインドウで開きます

 ほかに「外来鳥ウォッチ」「身近なガンカモ調査」「季節前線ウォッチ」など

◆モニタリングサイト1000

 環境省生物多様性センター(0555・72・6033)

 http://www.biodic.go.jp/moni1000/moni1000/別ウインドウで開きます

 環境省による定点環境調査。市民調査員が担う調査がある

◆ナメクジ捜査網

 宇高寛子・京都大助教(namekujida@gmail.com)

 https://sites.google.com/site/udakawebsite/madarakouranamekuji-limax-maximus別ウインドウで開きます

 外来種マダラコウラナメクジの目撃情報をウェブ上で募集

◆アカハネオンブバッタ分布調査

 大阪市立自然史博物館(06・6697・6221)

 https://atractomorpha.jimdo.com/別ウインドウで開きます

 2008年ごろから大阪周辺で見られるようになった外来種の分布情報を募集

◆瀬戸内海東部のイルカやクジラの目撃や座礁情報

 神戸市立須磨海浜水族園(078・731・7301)

 http://sumasui.jp/tyousa/cat60/post-22.html別ウインドウで開きます

 生態研究のため、泳いでいたり、浜に打ち上げられたりした情報を募集

◆庭のチョウ類調査

 日本チョウ類保全協会(03・3775・7006)

 https://butterfly-garden.jp/別ウインドウで開きます

 庭で見られるチョウの情報を全国から募集。環境変化などを知ることが目的
http://www.asahi.com/articles/DA3S13057546.html

http://archive.is/vwK8u

posted by BNJ at 12:08 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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