2017年08月04日

美を継ぐ 上村三代 <33>親子で「ぼん」を待った日【読売新聞2017年8月4日】

 京都には、鳥と親しめる場所が多くある。

 淳之は子どものころ、岡崎の動物園(左京区)で鳥を飽きずに眺めた。六角堂(中京区)にもよく遊びに行った。ハトがたくさんいて、手元に置きたいと、抱えて持ち帰ろうとしたことがある。

 松篁も少年時代、近所の神社に棲すみついたハトを眺め、どれがつがいか、どれだけ仲がいいかを見分けた。「鳥好きが遺伝したんや。目とクチバシの間隔とか、バランスのええ顔つきをした鳥が好きなところも一緒ですわ」と淳之。父子が考える均整を欠いた顔の典型がトキで、2人とも描いたことがない。

 やはり動物園でよく写生した松篁は「怖いから」と、トラに近づかなかった。花鳥画の画題になるウサギやキツネといった優しい雰囲気の小動物が好きで、猛獣は苦手だった。淳之が動物園で好きになれないのは、集団になって遊ぶサルだ。ぽつねんと1匹で座っている姿には心情を託せるが、猿山で群れをなす情景には好感が持てない。「厳しい自然のなか、長い距離を飛んでいく渡り鳥が群れるさまはええんやけど」

 ある年の冬、間之町あいのまちの家の庭に1羽のルリビタキが飛んできた。頭も瞳も丸く、子どものような愛嬌あいきょうがある。松篁は「ぼんぼん」と名付けた。寒いのが嫌いだった父が「今年は来るかいな」と冬を楽しみにした。淳之の記憶では「3年は続けて来たかなあ」。

 親子で「ぼん」を待った日々が、淳之の胸によみがえる。(敬称略)
http://www.yomiuri.co.jp/local/kyoto/feature/CO029414/20170803-OYTAT50020.html

http://archive.is/snAtB
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posted by BNJ at 11:34 | Comment(0) | 鳥類コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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