2017年08月21日

【社会】<メガソーラー 共存への課題>(上)少なくなった野鳥 千葉・成田 印旛沼【東京新聞2017年8月21日】

印旛沼の脇にできたメガソーラー=千葉県成田市で、本社ヘリ「まなづる」から

 千葉県成田市の湿地に、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)が建設され、希少な野鳥が見られなくなったとの投稿が本紙に寄せられた。メガソーラーは各地で増えているが、環境保全や景観などを巡り、地元住民とのトラブルを引き起こすケースもある。共存の道はあるのか。三つの現場を歩いた。 (小野沢健太)
 七月の晴れた日、本紙に投稿した日本野鳥の会の林庭(はやしば)弘征さん(63)=相模原市=と、成田市の印旛沼に向かった。最寄り駅から約十五分で、田園風景の中に太陽光パネルが見えてきた。鳥を探しながら歩いたが、聞こえてくるのは風の音ばかり。「アシ原だったころは、渡り鳥がいない時期でも、鳥の鳴き声でうるさいくらいだった」
 一四・二ヘクタールに及ぶ発電所の敷地は、民有の空き地でアシが茂っていた。国が絶滅危惧種に指定するオオセッカやコジュリンの生息地で、夏も見られたという。今は湿地の面影はなく、整地された地面からは砂ぼこりが舞っていた。
 発電所の周囲を約二時間かけて歩き、姿を確認できたのはスズメとツバメ、アオサギ。林庭さんによると開発前は五十種近くがいたというが、今回は、鳴き声だけ聞こえたものを含めても、十種に満たなかった。今夏、三十種近く確認できた日もあったが、二〇一五年七月に発電所が完成して以降、オオセッカとコジュリンは確認できていないという。
 近くに住み、建設計画が持ち上がった一三年に自治区長を務めていた出山修さん(68)は「バードウオッチャーが集まる場所だが、生物保護について事業者から説明を受けたことはない」と、当時を振り返る。
 事業者による住民説明会は、敷地の埋め立てについて市の条例に基づいて開かれた。汚泥などを処理した土で埋めることに住民は反発し、処理土は使われなかった。事業者の親会社の広島建設(千葉県柏市)は取材に対し、生態系への影響について「建設前後の鳥の数や状況が分からず、答えられない」とした。

 建設地は県立自然公園の区域内だが、保護区域ではなく、当時は太陽光発電所の建設時に自治体への届け出などは必要なかった。現在では、環境省の省令に基づいて県が条例を改め、自然公園内に一千平方メートルを超える太陽光発電所を設置する際、届け出が必要だ。
 県自然保護課の担当者は、建設地に希少種が生息していたことを「認識していた」と話したが、当時は生物保護について業者からの問い合わせはなく、県も指導していないという。
 「太陽光発電は環境保護の観点から必要だと思う」と話す林庭さんは疑問を呈す。「アシ原にも貴重な命がある。生物の生息調査もせずに開発できてしまうのはおかしい」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082102000116.html

<メガソーラー 共存への課題>(中)山林削られ保水不安 茨城・つくば 筑波山【東京新聞2017年8月22日】
 太陽光発電所の設置が、市の条例で禁じられた山がある。茨城県つくば市の筑波山だ。そのふもとで、昨年七月の条例制定のきっかけとなった発電所が、斜面に張り付くように稼働している。
 今年七月末、発電所がある同市沼田地区を訪れた。集落から森の中の道路を十分ほど歩くと、空が開けてソーラーパネルの一群が現れた。パネルはきつい傾斜に沿って奥へと積み上がっていくように見える。
 「木が伐採されて保水力が落ち、雨の日に斜面から流れてくる水の量が増えた」。発電所に近い自治会「沼田区」(約二百八十世帯)の区長、渡辺一雄さん(68)が話す。県は発電所の周辺を、土砂災害警戒区域に指定している。
 発電所が稼働したのは昨年三月。その年の八月の台風の日、渡辺さんは発電所の様子を見に行こうとしたが、道路が水没し急流のようになって進めなかった。近くの家では、庭の池があふれて飼っていたコイが流された。以前はあまり増水しなかったが、その後も数回、大雨の際に道路付近に川ができるようになった。
 渡辺さんが筑波山での太陽光発電所計画を知ったのは、二〇一五年十月ごろ。当時は国定公園内に三件と、現在稼働している公園外に一件の計画があった。渡辺さんは説明会の開催を求め、業者の説明を聞いた住民らは土砂崩れなどを心配して反対運動を展開。公園内の計画は県が開発申請を不許可としたり、業者が辞退したりして全て立ち消えとなった。しかし、開発許可が不要な公園外の計画を止める手だてはなかった。
 森林伐採にも許可は要らなかった。一ヘクタールを超えると県の許可が必要になるが、建設地の伐採面積は〇・九八ヘクタールで、市への届け出だけで伐採が可能。業者が市に伐採届を出したのは、渡辺さんが計画を知る二カ月前だった。「どうしてそのときに指導できなかったのか」。渡辺さんは市の職員にただしたが、「届け出だから止められない」と答えるのみだった。

 事業者のセンチュリー・エナジー(東京都千代田区)は取材に、「法令に従って設置した」と説明。稼働後、大雨時に増水がみられるようになったため、市から見回りなどの対応を求められたという。「敷地内に植栽を進めており、水や土が流れ出にくくする」と話した。
 筑波山は関東を代表する山の一つだ。市は住民の反対の声を受け、「筑波山の自然と生活環境を守る」として昨年七月、太陽光発電所の設置を禁止する条例を施行した。
 しかし、条例も既に稼働している発電所は止められない。山麓でただ一カ所のソーラーパネルを見ながら、渡辺さんが話す。「制度にとらわれず、伐採前に指導してほしかった。木が切られ、裸の土の斜面になればどうなるか。行政は生活への影響を想像する力をつけてほしい」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082202000112.html

<メガソーラー 共存への課題>(下) 景観配慮で歩み寄り 長野・池田町【東京新聞2017年8月23日】
事業者が自主的に環境影響を分析し、建設した太陽光発電所。敷地境界には住民の意見を取り入れた植栽がある=長野県池田町で

 見渡す限りの水田を里山が囲む。農村風景の緑の中に、黒い太陽光パネルが一・三ヘクタールにわたって連なる。長野県池田町にあるこの発電所は、景観への影響を懸念する町と、事業者が歩み寄って完成した。
 田園の景観を守るため、町には土地利用を規制する条例がある。二〇一三年、廃業した釣り堀の地権者が、跡地に太陽光発電所を建設しようと、町へ協議を申請した。
 当時、土地造成を伴う大規模な太陽光発電所は想定されず、条例の規制対象ではなかった。ただ、対象になくても個別に判断できる規定があり、町は景観に影響する恐れがあるとして「立地不可」と決めた。発電所事業者のソーラーカナモリ(同県大町市)取締役の中村皆司(みなじ)さん(68)は「納得できず、自主的に景観や環境への影響を調べた」。
 完成時の景観を三次元画像で予測し、光の反射がどのように広がるかも試算。住民説明会を開いて内容を知らせた。住民からは「反射光が心配。周囲に植栽をしてほしい」という意見があり、取り入れた。
 一四年一月、同社は修正案を町へ申請。町は方針を改め、太陽光発電所への運用基準を新設し、「立地可」と決定した。
 発電所の近くに住む無職村松勇さん(63)は「事業者は家にも説明に来た。景色は少し残念だが、反射光はなく生活に支障はない」と話した。

 中村さんは「地元企業なので、住民や行政の理解がないとやっていけない」と話した上で、「投資目的で地元とは関係ない企業が参入し、説明責任を果たさずトラブルを招いている」とも指摘した。
 国は一一年、太陽光発電施設を建築基準法の工作物から除外し、建築確認を不要にして設置手続きを簡素化。翌年には、再生可能エネルギーを電力会社が一定価格で買い取る制度を始め、税の控除や減価償却の優遇措置も行い、導入を促してきた。現在は資金面の優遇を縮小し、事業者に環境配慮や住民説明を努力規定で求める指針も設けた。それでも、中村さんは「企業にとってうまみは大きく、規制も緩い。それが乱開発につながる面はある」。
 再エネ買い取り制度が適用される電力容量の八割は、メガソーラーなど住宅以外に設ける太陽光発電所が占める。だが、現地を歩くと、住民に身近な場所を造り変えるのに、住民の声を聞くかどうかは、事業者任せになっていた。
 ソーラーカナモリの環境影響評価を担当したNPO地域づくり工房の傘木(かさぎ)宏夫さん(57)は「規模にかかわらず住民に情報を公開し、不安の声に対しては、行政が事業者を指導。環境影響を調べさせ、住民の意見を聞く。そのような制度が必要だ」。推進策による一過性の増加で終わらせないためには、住民の合意を得る取り組みが欠かせない。
 (この連載は小野沢健太が担当しました)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082302000137.html

http://archive.is/5JxbI
http://archive.is/fqK4V
http://archive.is/picu2

posted by BNJ at 10:41 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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